マグロは食卓から消えたか

日本のマグロが値上がりしない理由。寿司屋からマグロが消えない理由。

畜養マグロ2万トン

2007-06-25 21:45:10 | マグロ
オーストラリアのポートリンカーンの沖合では、10kg程度の小さなミナミマグロを巻き網で一網打尽し、それを近くに設置した直径50mの「生け簀(いけす)」に運んでエサを十分に与え、30~40kgの体重になるまで肥らせる。この畜養マグロは、マグロ冷凍運搬船で、日本の清水港などに運ばれる。オーストラリア全体から日本へは、毎年、畜養クロマグロ7~8千トンが輸出される。
オーストラリアでは1993年に日本の技術指導と資本援助で畜養マグロの生産が始まった。しかし、ミナミマグロはもともと生産過剰であり、畜養マグロの供給量が増えるとさらに価格が下がり、オーストラリアのミナミマグロの畜養は、危機をむかえている。

スペイン、マルタ、トルコ、クロアチア、イタリア、キプロスなどでは、地中海クロマグロの畜養が、オーストラリアの畜養技術を基礎に、2、3年遅れて始まった。クロマグロはトロが多くて日本の人気が高く、日本に高値で輸出される。
日本・台湾の冷凍運搬船が、年間2万トンの畜養クロマグロを清水港などに運ぶ。低温冷凍船は、他海域のIUU漁業のマグロと地中海畜養マグロとを、まとめて運搬するため、地中海畜養マグロの正確な生産数量は分からない。日本への輸出数量も、正確には分からない。
日本の年間マグロ消費量は50万トン、そのうち、2万~3万トンが畜養マグロと推定される。
畜養場では、マグロの食べ残したエサによる海洋汚染が進んでいる。また、畜養用クロマグロの幼魚の乱獲で、クロマグロの枯渇が大きな問題になっている。

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マグロ畜養用の生け簀。直径50m。
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オーストラリアの畜養マグロ(ミナミマグロ)
ミナミマグロはトロが少なく、日本への輸出価格は安い。ミナミマグロの付加価値を高めて輸出するために、カリフォルニア産冷凍イワシを大量に与えて太らせる。全身がトロのスーパーマグロにはなる。しかし、肉にはイワシのにおいが残り、クロマグロほどの高値では売れない。
カリフォルニア産冷凍イワシのブロックには、オーストラリア近海に存在しないウィルスが付着している。エサとして海中に投入した冷凍ブロックが融けると、マグロがイワシを食べる。この間にイワシ冷凍ブロック中のウィルスが繁殖する。しばしば、畜養ミナミマグロがヘルペスウィルスで大量死した。近い将来には、近海の生態系が激変するおそれがある。
ミナミマグロを20kg太らせるためには、400kgの冷凍イワシが必要である。カリフォルニアのイワシ資源は減少するし、オーストラリア畜養海域がマグロの食べ残したイワシで、ウィルス汚染されてしまう。
地中海の畜養マグロ(クロマグロ)
地中海のクロマグロは春から夏にはエサを少ししか食べず、「やせマグロ」といわれ、商品価値はない。これを大型巻網で大量に捕獲して畜養生簀に移し、大量のエサを与える。半年で5~10倍の体重になり、30kgを越えると、日本に冷凍輸出される。
地中海のマグロ畜養のエサは、北海産の冷凍ニシンである。日本の水産会社の資本と技術である。



地中海のクロマグロ畜養は、クロマグロの価格高騰に注目した、日本の水産会社が資本と技術の支援をしている。日本の冷凍運搬船が、地中海の畜養場に、必要な資材・エサを世界中から買い集めて来る。その冷凍運搬船が、畜養クロマグロを日本に運ぶが、便宜置籍船や正規船のクロマグロも一緒に運んでロンダリングをするため、畜養クロマグロの正確の輸入量は分からない。
冷凍ニシンを冷凍ブロック解凍して、ニシンを一匹ずつ与えるため、カモメの大群がニシンを取りすることが多い。ニシンのウィルスが、カモメによって地中海全域に拡大するかもしれない。また、カモメの排泄物中に含まれるウィルスも、海域を汚染する恐れがある。
畜養クロマグロのエサに関連し、地中海の海洋汚染が進む。さらに、生態系の変化の恐れもある。クロマグロの幼魚を巻網を使って一網打尽にとるため、クロマグロ資源そのものも減少している。
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日本国内でも奄美大島などで、ホンマグロの畜養が始まった。イワシ・サンマをエサに、10kgのホンマグロを30kgに肥育するのが目標である。20kgの肥育に400kgのエサを必要とする。エサが高価でマグロが安値の時に、果たして経営が成り立つかどうか。


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