マグロは食卓から消えたか

日本のマグロが値上がりしない理由。寿司屋からマグロが消えない理由。

マグロ漁業に関連する統計

2007-06-26 21:45:12 | マグロ
世界のマグロ漁獲量は年間200万トン。マグロ資源の枯渇を防ぐため、国際的漁獲規制がなされているが、便宜置籍国に登録したマグロ漁船は漁獲規制を無視し、マグロの乱獲を続けている。
マグロのうち、キハダマグロとメバチマグロの漁獲量が多い。どちらも熱帯海域を中心に生息していて、加工マグロ用だが、値段が安いので、最近は刺身用の需要が増えてきた。
日本は世界のマグロの30%を食べるが、漁獲量の少ないクロマグロとミナミマグロを、寿司用・刺身用として珍重する。



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日本のマグロ消費量は、ビンチョウマグロを含めると、年間50万トンである。冷凍マグロが多い。日本・台湾の超低温冷凍運搬船が、世界中の漁船からマグロを買い、洋上で積み換えをしている。買い付けるマグロ漁船には、便宜置籍船もある。日本船はマグロを清水、台湾船は台湾(高雄)の大型冷凍倉庫に運ぶ。
日本は台湾からの輸入が最も多い。その理由は、日本国内のマグロ価格が値上がりした時、高雄の冷凍倉庫から清水などに急送する流通システムができているからである。日本の三菱商事の構築したネットワークである。


2005年の日本のマグロ輸入





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日本の遠洋漁業が減少したのは1975年と1990年の2回である。
1975年は、1973年の第1次石油危機から続く燃料費・資材費の高騰と、排他的経済水域の設定により日本の遠洋漁船が漁場を失ったためである。代わりに沖合漁業が増加した。
遠洋漁船は韓国に輸出され、日本人船員が指導員として乗り込んだ。日本は、一時、韓国から冷凍マグロを輸入した。
1990年には日本の遠洋マグロ漁船が、マグロ資源保護を理由に減船されたた。日本漁船は台湾に売却された。また、韓国の日本人の乗船したマグロ漁船も台湾に売られた。台湾近海はホンマグロの通り道であり、本マグロの大漁が続いた。日本に高値で輸出し、マグロ成金が続出した。
台湾はマグロの獲りすぎを国際的に批判されて減船したが、減船された台湾漁船は便宜置籍船として、国際的漁業規制を受けないマグロ漁船となった。日本・台湾の冷凍運搬船と結びついた違法漁業(IUU漁業)の形でマグロの乱獲をし、国際的批判を浴びている。しかし、便宜置籍船所有者には、資源保護の責任感はなく、IUU漁業をやめる気配はないようである。





畜養マグロ2万トン

2007-06-25 21:45:10 | マグロ
オーストラリアのポートリンカーンの沖合では、10kg程度の小さなミナミマグロを巻き網で一網打尽し、それを近くに設置した直径50mの「生け簀(いけす)」に運んでエサを十分に与え、30~40kgの体重になるまで肥らせる。この畜養マグロは、マグロ冷凍運搬船で、日本の清水港などに運ばれる。オーストラリア全体から日本へは、毎年、畜養クロマグロ7~8千トンが輸出される。
オーストラリアでは1993年に日本の技術指導と資本援助で畜養マグロの生産が始まった。しかし、ミナミマグロはもともと生産過剰であり、畜養マグロの供給量が増えるとさらに価格が下がり、オーストラリアのミナミマグロの畜養は、危機をむかえている。

スペイン、マルタ、トルコ、クロアチア、イタリア、キプロスなどでは、地中海クロマグロの畜養が、オーストラリアの畜養技術を基礎に、2、3年遅れて始まった。クロマグロはトロが多くて日本の人気が高く、日本に高値で輸出される。
日本・台湾の冷凍運搬船が、年間2万トンの畜養クロマグロを清水港などに運ぶ。低温冷凍船は、他海域のIUU漁業のマグロと地中海畜養マグロとを、まとめて運搬するため、地中海畜養マグロの正確な生産数量は分からない。日本への輸出数量も、正確には分からない。
日本の年間マグロ消費量は50万トン、そのうち、2万~3万トンが畜養マグロと推定される。
畜養場では、マグロの食べ残したエサによる海洋汚染が進んでいる。また、畜養用クロマグロの幼魚の乱獲で、クロマグロの枯渇が大きな問題になっている。

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マグロ畜養用の生け簀。直径50m。
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オーストラリアの畜養マグロ(ミナミマグロ)
ミナミマグロはトロが少なく、日本への輸出価格は安い。ミナミマグロの付加価値を高めて輸出するために、カリフォルニア産冷凍イワシを大量に与えて太らせる。全身がトロのスーパーマグロにはなる。しかし、肉にはイワシのにおいが残り、クロマグロほどの高値では売れない。
カリフォルニア産冷凍イワシのブロックには、オーストラリア近海に存在しないウィルスが付着している。エサとして海中に投入した冷凍ブロックが融けると、マグロがイワシを食べる。この間にイワシ冷凍ブロック中のウィルスが繁殖する。しばしば、畜養ミナミマグロがヘルペスウィルスで大量死した。近い将来には、近海の生態系が激変するおそれがある。
ミナミマグロを20kg太らせるためには、400kgの冷凍イワシが必要である。カリフォルニアのイワシ資源は減少するし、オーストラリア畜養海域がマグロの食べ残したイワシで、ウィルス汚染されてしまう。
地中海の畜養マグロ(クロマグロ)
地中海のクロマグロは春から夏にはエサを少ししか食べず、「やせマグロ」といわれ、商品価値はない。これを大型巻網で大量に捕獲して畜養生簀に移し、大量のエサを与える。半年で5~10倍の体重になり、30kgを越えると、日本に冷凍輸出される。
地中海のマグロ畜養のエサは、北海産の冷凍ニシンである。日本の水産会社の資本と技術である。



地中海のクロマグロ畜養は、クロマグロの価格高騰に注目した、日本の水産会社が資本と技術の支援をしている。日本の冷凍運搬船が、地中海の畜養場に、必要な資材・エサを世界中から買い集めて来る。その冷凍運搬船が、畜養クロマグロを日本に運ぶが、便宜置籍船や正規船のクロマグロも一緒に運んでロンダリングをするため、畜養クロマグロの正確の輸入量は分からない。
冷凍ニシンを冷凍ブロック解凍して、ニシンを一匹ずつ与えるため、カモメの大群がニシンを取りすることが多い。ニシンのウィルスが、カモメによって地中海全域に拡大するかもしれない。また、カモメの排泄物中に含まれるウィルスも、海域を汚染する恐れがある。
畜養クロマグロのエサに関連し、地中海の海洋汚染が進む。さらに、生態系の変化の恐れもある。クロマグロの幼魚を巻網を使って一網打尽にとるため、クロマグロ資源そのものも減少している。
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日本国内でも奄美大島などで、ホンマグロの畜養が始まった。イワシ・サンマをエサに、10kgのホンマグロを30kgに肥育するのが目標である。20kgの肥育に400kgのエサを必要とする。エサが高価でマグロが安値の時に、果たして経営が成り立つかどうか。

冷凍マグロが、今年も安い

2007-06-24 22:09:10 | マグロ
21世紀、世界の海ではマグロ資源が枯渇し、マグロを食べることができなくなる。世界のマグロの年間生産量は200万トン。日本のマグロ生産量は25万トン。台湾の生産量も25万トンだが、ほとんどは日本に輸出される。
日本の1年間のマグロ消費量は50~60万トンであり、約60%は輸入マグロである。
そのマグロ資源が世界的に枯渇に向かい、国際的漁獲規制を急がなくてはならない。2006年のマスコミ論調は、マグロ資源の枯渇が目前であると、危機感を強調した。
危機感に同調する消費者が大半だが、マグロ漁業関係者はマグロの値上がりを千載一遇のチャンスととらえ、マグロの漁獲増加に努めた。
この結果として、1997年の日本のスーパーマーケットは、特売用マグロの安売りが続いている。まるでマグロ資源は無尽蔵であり、マグロ資源の枯渇は杞憂のようであるが。

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魚介類のうちで価格が上昇傾向にあるのは、輸入の難しい「しじみ」と加工輸入のできる「さば」である。マグロをはじめ、他の魚介類の小売価格低下傾向にある。資料は総務省統計局「家計調査」0410。
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○次は2006年のマグロ資源の危機を訴えた代表的論調である。週間エコノミストは毎日新聞社発行の経済誌であり。見通しの的確さでは定評がある。しかし、マグロ資源の危機に関しては、東海地震予知のように、根拠の少ない記事であった。

マグロ価格急騰、安いマグロの時代の終わり(週間エコノミスト2006.8.1)
●マグロ価格の上昇
東京・築地市場のマグロ卸売場には、全国の漁港から生マグロと冷凍マグロが次々に運び込まれる。競り落とし、買い付けた仲卸業者がマグロを引き取っていく。しかし、このごくありふれた市場風景に異変が起きている。
ここ数年、安値安定していたマグロの卸売価格が急上昇している。通常、4~6月は近海マグロが入荷するので、冷凍マグロの価格は下がる。ところが今年2006年は、冷凍マグロが高値のままなのである。
漁獲量が多くマグロ相場の目安とされる冷凍メバチマグロは2006年6月、前年比28.3%も高い1kg997円をつけた。農林水産省が6月末に公表した1~5月の全国平均卸売価格でも冷凍メバチマグロは前年同期比で16%上昇している。
値上がりの大きな要因は、世界的な魚食ブームによるマグロ需要拡大。その一方で、マグロ資源保護の強まりによって国際管理機関は世界的に漁獲量を規制するという「需給要因」がある。また、短期的要因としても、原油高に伴う国内遠洋マグロ漁業者の経営破綻による供給減少がある。「マグロ価格を押し下げる要因が見当たらない」というのが、水産業界関係者の一致した見方だ。
●中国のマグロ消費量が増大
築地市場場内の寿司屋には、早朝のマグロセリ見物を終えた外国人観光客が押し寄せる。欧米人に交じり、最近、ひときわ目立つのが中国人観光客である。
「中トロとネギトロをお願いします」
「20食限定のマグロ丼をください」
たどたどしい日本語で注文する中国人観光客が、狭いカウンターを独占する。市場内の寿司店主が語る。
「にぎりセットではなく、単品で好きなネタを注文してくる中国人が増えた。中トロをはじめマグロが一番人気。外国人観光客だとあとの会計で『高すぎる』とトラブルになることがあるが、中国人は滅多にトラブルを起こさない。中国人はマグロの価格を、分かっているからだろう」
●中国内の冷凍マグロ流通整備
中国農村部では今でもマグロをCOパックで売っている。COの化学作用で生肉はピンクが維持されているが、色が新鮮なだけである。COパックでは中身のマグロの鮮度維持はできない。
2003年11月、中国は、日本の海外漁業協力財団の支援を得て、「中国マグロ市場開拓プロジェクト」をスタートさせた。2005年9月には北京に初めて超低温冷蔵庫が竣工し、マイナス60度で凍結して流通させる「コールド・チェーン」の整備が進んでいる。
中国では、BSE(牛海綿状脳症)や鳥インフルエンザ発生による、肉食離れが進み、健康で安全な魚食ブームが到来した。上海をはじめ沿海部の富裕層から、刺身マグロ需要が生まれ始めた。北京の超低温マグロ流通量は2004年に27トン、2005年は2倍以上の59トンと急拡大している。13億人の中国で、国民の1割がマグロを食べ始めても日本と同じ規模の市場が出現する。
もともとは、安い労働力を武器に中国マグロ漁船が日本向けに大量の安いマグロを輸出していたが、供給過剰による日本の刺身マグロ相場下落を是正するための中国市場開拓だった。今でも、年間2.2万トン(輸入冷凍マグロの10%)の刺身用マグロを日本に供給する中国だが、近い将来、マグロ争奪競争の強力なライバルになる可能性が高まってきた。
●日本の魚介類の輸入増加
豊富な水産資源をもつ魚食大国・日本が、水産物を100%自給していたのは過去の話。今や食用魚介類の自給率は55%にまで落ち込んでいる。刺身マグロに至っては、国内市場に供給される50万トンの60%(30万トン)が海外からの輸入である。その半分を占める台湾のマグロ漁業業界が深刻な事態に直面している。
●台湾は,マグロ漁船194隻を減船
2006年6月8日、日本の水産庁と台湾政府とのマグロ資源確保のための協議がまとまった。2007年末までに台湾の遠洋マグロ漁船を194隻減船し、280隻とすることで合意したのである。
この結果に、日本国内の刺身マグロを扱う関係者からはため息が漏れた。日本と台湾の合意には、2007年以降は西経130度以東の太平洋における大型マグロ漁船(メバチ船)の操業を暫定的に自粛することも含まれていた。
台湾は、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)から、大西洋で2006年のメバチ操業隻数を、2005年の98隻から15隻減船し、漁獲枠を16500トンから4600トンまで削減する制裁措置を科せられている。
これらの合意や制裁によって、台湾のマグロ漁獲量の大幅な減少は不可避の情勢だ。業界関係者によれば、1隻当たりのマグロ漁船の年間漁獲量は300~400トン。台湾のマグロ漁船は、2007年末までに194隻削減することから、単純計算で5.8万~7.7万トンの減少となる。ほぼ全量が日本向け輸出に回されていることから、これだけで日本の刺身マグロ供給量は12~16%減少する。
●国際ルール
なぜ、台湾だけが厳しい対応を迫られたのか。背景には、台湾マグロ漁船の国際ルールを無視した乱獲の歴史がある。マグロ資源保護の発端は、1999年の国連食糧農業機関(FAO)による「世界の遠洋マグロ漁船の20%減船の勧告」だった。これを受け、世界一のマグロ消費国である日本は2000年までに当時の20%に当たる132隻の遠洋マグロ船を減船した。
FAO勧告を契機にマグロ資源確保機運が高まり、各海域ごとにマグロ資源管理のための国際機関が順次作られた。ICCATをはじめ、南半球中高緯度海域を対象とするみなみまぐろ保存委員会(CCSBT)、インド洋を対象とするインド洋まぐろ類委員会(IOTC)がそれだ。毎年、各国際機関が海域のマグロ量を調査して加盟国に漁獲枠制限を課すなどの規制を実施している。こうしたマグロ資源確保のためのルールや規制を知りながら、それをかいくぐり世界中で操業を続けたのが台湾のマグロ漁船だった。
台湾漁船への批判は、「日本がマグロを買うから台湾漁船の違法操業が続くのだ」と、日本へも矛先が向けられており、日本としても台湾との減船合意などの形で、世界にマグロ資源確保で努力している姿勢をアピールする必要があった。
日本自身も、脂身が多く高級すし店や料亭で使われるミナミマグロに関し、4月から漁業者に一定の漁獲数量を割り当てる「個別割当管理制度」を導入した。違反した場合には、2年以下の懲役か50万円以下の罰金を科すという措置を講じた。また、CCSBT区域で年間6065トンの漁獲割り当てを自主的に4500トンにまで圧縮する方針を打ち出し、世界のマグロ資源を食べつくしている「日本悪玉論」をやわらげようと必死だ。
しかし、それでも違法操業は続くため、2006年7月5日にはWWF(世界自然保護基金)が地中海と東部大西洋地域のクロマグロ漁の即時禁漁を求めるという強硬手段に訴え、日本のマグロ関係者を困惑させている。
●遠洋マグロ漁業者の経営破綻
2005年末から2006年にかけ、マグロ漁業関係者の間に衝撃が走った。国内有数の遠洋マグロ延縄漁業基地で知られる宮城県気仙沼市の遠洋マグロ延縄漁業の老舗が相次いで破綻したからだ。
2005年12月に任意整理を決めた、菅長水産(菅長茂代表)は、1897年(明治30年)創業、ピーク時には漁船7隻を抱え、年間売上高約22億円(1990年)を計上するほどの有力漁業者だった。しかし、1999年以降、マグロ資源確保のための国の減船政策により、保有船を5隻に減船した。
日本のマグロ漁獲量減少が必至な局面で、台湾・韓国・中国のマグロ漁業者が大量に日本市場に輸出した。供給過剰によって、1990年頃には1kg約1300円だった冷凍メバチマグロの相場は2005年には800円台に低迷した。菅長水産は、さらに原油高騰に伴う燃料費負担増で「漁に出れば出るほど赤字を膨らませるだけ」と、操業継続を断念した。2006年1月から2月にかけて菅長水産の後を追うかのように同じ気仙沼市の老舗4社が任意整理を決めた。
他県でも遠洋マグロ延縄漁業者の廃業は後を絶たない。その結果、1967年に1286隻あった国内の遠洋マグロ延縄漁船の数は、2006年3月には381隻にまで激減した。
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世界のマグロ消費量総量は200万トン、そのうち日本の年間マグロ消費量は50万トンである。日本のマグロ生産量、つまり日本漁船によるマグロ漁獲量は25万トン、輸入マグロはほぼ同量の25万トンと推定されている。日本のマグロ消費量は、世界の4分の1を占める。消費量世界第1位であり、世界のマグロ資源維持には大きな責任がある。
減船の対象となった、日本と台湾のマグロ漁船とその乗組員は、どこに消えたのか。その多くは、マグロ船の国籍を隠すため、海洋管理能力のないパナマやベリーズなどの国に船舶登録し、マグロ漁業を続けている。便宜置籍船といわれる。国際的漁業規制を受けずに、違法操業ができる(IUU漁業)。
日本と台湾の超低温冷凍運搬船が、合法・非合法を区別せず、漁船の冷凍マグロを洋上で買い集め、最終的には日本へ運んでいる。日本国内で売られる冷凍マグロは値上がりもしないし、品不足もない。



気仙沼に冷凍マグロ入荷、は大ニュース

2007-06-16 10:52:33 | マグロ
宮城県気仙沼港に冷凍マグロ84トン水揚げされた(2003.6.3)。気仙沼は近海マグロ漁の基地であり、新鮮な生マグロは全国に出荷される。しかし、気仙沼には2年も3年もマグロを保存する超低温冷凍倉庫はない。冷凍マグロが気仙沼に入荷しても、すぐに売り切らないとならない。仲買人に足下を見られて安く買いたたかれるので、気仙沼に冷凍マグロの入荷するのは、せいぜい年に数回、それも少量である。気仙沼に冷凍運搬船が冷凍マグロを積んで入港するのは、気仙沼では大ニュースである。



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気仙沼港所属の遠洋マグロ延縄船が漁獲したマグロやカジキなど84トンを積んだ冷凍運搬船が、気仙沼市朝日町の商港岸壁に入港し、6月3日に水揚げする。冷凍運搬船による地元遠洋マグロ漁船の本格的な母港水揚げは今回が初めてである。地域水産業を取り巻く環境が一層厳しくなる中で、地元関係者は「母港水揚げの新たな推進力になる」とみて、冷凍運搬船による母港水揚げの増進に期待している。

気仙沼市魚市場前の山代水産(畠山昭四郎社長)所有の第18千代丸(409トン、畠山光裕漁労長ら23人乗組)が、2月から5月にかけて太平洋ソロモン諸島沖で漁獲した。メバチマグロ346匹(8トン)、キハダマグロ2809匹(47トン)、ビンナガマグロ1390匹(20トン)とカジキ類174匹(8八トン)などが,第18千代丸の漁獲物である。
漁獲物は、遠洋マグロ漁船に漁具や日用品などを届ける東栄リーファーライン(本社・東京)所有の冷凍運搬船はつかり(2712トン、江田茂船長ら19人乗組)に洋上で積み換えられ、5月31日に気仙沼へ到着。6月2日に入札があり、清水、焼津などと遜色のない色ない価格になった。

気仙沼港では、過去にも転載船による母港水揚げが何度かあったが、静岡県の清水・焼津、神奈川県三崎などへ水揚げした残りがほとんどである。気仙沼への、マグロ類を主力とした本格水揚げは今回が初めてとなった。山代水産の畠山正明専務は「地元関係者からの要請があった。ちょうど漁獲物が転載船の降ろしやすい場所にあり、数量や在庫状況などの面で水揚げしやすい条件がそろった。今後も地元買い受け人の需要があれば、母港水揚げをしたい」と話している。
地元遠洋マグロ漁船の誘致に力を入れている気仙沼漁協は「冷凍運搬船による水揚げを機に、遠洋マグロ漁船の母港水揚げが増えてほしい」と願っている。
気仙沼港への母港水揚げは、2000年(平成12)年度が4隻で364トン(2億3800万円)、2001年度が1隻で2.7トン(145万円)、2002年度が2隻で233トン(1億1500万円)であった。
(三陸河北新報)
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東栄リーファーラインのPR(2007.6)
●冷凍運搬船
当社(東栄)が運航する超低温マグロ専用運搬船の隻数は現在17隻。世界中でも50隻に満たない小さなマーケットですが、ゆるぎないブランドです。7つの海を結んだトビウオマークの年間の運送実績は全体の40%を優に超えます。世界一の集荷力は他社の追従を許しません。お客様の大切な冷凍マグロをいつでも、どこからでも安全に運びます。
●集荷と同時にえさ、資材も提供 
東栄リーファーラインは、冷凍マグロの集荷、えさと資材の販売もします。マグロ関連事業のあらゆるニーズにお応えします。東栄リーファーラインはお客様の事業を強力にサポートします。
●交代船員も提供
外国人船員についてはそれぞれの母国で奨学金を賦与し、乗船後も優秀な船員には学校に戻り、中級・上級教育を受講できるように委託契約しています。このように、東栄リーファーラインは、船員の教育と養成により、積荷の品質保持と安全を徹底しています。
●野菜も給油もOK
野菜の託送輸送も安心です。廉価で良質な燃油の洋上補給は遠洋マグロ漁船の必需品です。
●外国漁船から日本へ直送
東栄リーファーラインは、冷凍マグロの委託輸入業務も活発に行っています。各漁船主から冷凍マグロの日本国内への販売委託を受け、当社海運部門と密接に連携し、日本国内港での水揚げ、品質の見極め、価格交渉を行い、通関から代金決済まで責任をもって、終始一貫したきめ細やかなサービスを提供しています。

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気仙沼の近海生マグロは非常においしいが、値段が高い。安いマグロ料理はまずい。まずいマグロは、安い冷凍マグロを清水から陸送し、冷蔵庫で保管して、食材とするからである。
気仙沼の安いマグロは、仙台・東京のスーパーで安売り特売の冷凍マグロと同じものである。
冷凍マグロの7割はまずい、と漁業関係者は断言する。解凍方法とか調理方法の問題ではなく、もともとまずいのが7割である。どこで、どのように漁獲しているのか分からない、便宜置籍船のIUU漁業の安物マグロなので、おいしいマグロは少ない。
冷凍運搬船「はつかり」はどういう素性のマグロ運船であれ、気仙沼のマグロ漁船の漁獲したマグロが気仙沼に入荷するのは喜ばしいことではある。

マグロ漁業と便宜置籍船FOC

2007-06-08 17:45:04 | マグロ
世界のマグロ漁船の総数は2万隻。そのうちの1500隻は便宜置籍船である。また、船籍不明船も1500隻程度である。
便宜置籍船は船舶の形式的登録国であり、FOC(Flag of Convenience)と書き表される。台湾、日本、スペインなど先進国のマグロ漁船はマグロ資源保護のための国際規制を受けずに操業できるように、海洋管理能力がなく、しかも国際協定にも非加盟の国にマグロ漁船を登録する。登録される国はパナマ、ホンジュラス、ベリーズ、カンボジア、それに海のないボリビア、モンゴルなどである。
日本・台湾の超低温冷凍運搬船が、便宜置隻船からマグロを安く買い集め、最終的には清水の超低温冷凍倉庫に運ぶ。その結果として、日本ではいつでも安い冷凍マグロが売られているのである。

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マグロ漁船を便宜置籍船国に登録すると、マグロの魚種、操業海域、期日、数量などの国際的規制を受けない。マグロをとり放題の違法操業(IUU漁業)になる。洋上で日本あるいは台湾の冷凍運搬船にマグロを売り渡す場合、IUU漁業の弱みがあり、正規船の半値の取引になる。
日本で常時安い冷凍マグロが売られているのは、便宜置籍船国のマグロ漁船の違法操業(IUU漁業)と、それを手助けするマグロ冷凍運搬船が存在するからである。-60℃で冷凍する。日本では清水に-60℃の冷凍倉庫群があり、マグロ冷凍船は最終的には清水をめざす。
便宜置籍船のマグロは安く買いたたかれるので、マグロ漁船の利益が小さい。そのため、発展途上国の低賃金の船員を雇い、日本・韓国・台湾が手放した老朽船を使う。
便宜置籍船として登録変更しなくても、全長24m未満(ほぼ70トン未満)の小型漁船はマグロ漁船とみなされず、マグロ資源保護の規制対象外である。台湾を中心として、小型漁船によるマグロ漁が増加している。そして、マグロ冷凍運搬船は日本入港時のマグロ来歴チェックをすり抜けるため、小型漁船からマグロを洋上積み換えをしたように、偽装することが多い。

日本の冷凍運搬船が、日本漁船や便宜置籍漁船からマグロを買い集めて、日本に運ぶと、日本産のマグロになる。台湾の冷凍運搬船がマグロを買い集めて直接日本に運ぶと、台湾からの輸入となる。
日本のマグロ冷凍運搬船は、洋上で便宜置籍船からマグロを買うことは法的に禁止されている。しかし、長さ24m未満の小型漁船からマグロを買い付けたとか、操業許可を得ている日本漁船から買い付けたとか、入港時のチェックを欺く手口はいくらでもある。
さらに、マグロ冷凍運搬船そのものを、パナマやカンボジアなどの便宜置籍船として登録すると、日本への入港時には、積荷のマグロの来歴チェックがない。違法操業(IUU漁業)のマグロを、簡単に輸入できる。合法的なマグロを日本船籍の冷凍運搬船が運び、違法操業のマグロを便宜置籍船国の冷凍運搬船が運ぶ、という役割分担ができている。

マグロ資源が減少し、資源管理の国際協定が厳しくなった。国別の魚種・漁獲量割当、操業海域・期日指定、混獲防止のための漁法の規制などの国際協定を厳守すれば、日本へのマグロ供給は半減する。
しかし、マグロ漁船を、その国際協定に無関係の第三国に登録し、便宜置籍船とすると、国際協定に拘束されず、違法操業(IUU漁業)のやり放題である。いつ、どこで、どんなマグロを獲ろうが、全く自由勝手である。船員も低賃金の外国人を雇う。日本・台湾で使っていた老朽船を使う。
便宜置籍船の船主は、自らの船を、Flag of Freedom (FOC)と呼ぶ。
1年を越えるマグロ遠洋漁船の長期操業を支えるため、国際的補給システムがある。漁船に資材・食料・燃料・家族からの手紙などを届ける補給船があり、その補給船に冷凍設備があれば、補給と引き替えにマグロを積み替え、日本に運ぶ。IUU漁業のために新たな国籍を得た漁船が、便宜置籍船である。その便宜置籍船も、正規船同様、国際的補給システムに支えられている。

便宜置船国は中南米のベリーズ、パナマ、ホンジュラスなどであるが、海に面していないボリビアの登録船もある。アジアではカンボジア、海のないモンゴルなどである。ファックス1枚で登録ができるし、登録国の変更もできる。
便宜置船国への手数料は年100ドル程度で済むのに対し、IUU漁業による利益は1隻当たり10万ドルを越えると推定されている。
便宜置籍漁船の本当の所有者は台湾、韓国、日本、スペインなどである。特に台湾の便宜置籍船が多い。しかし、漁船の転売が頻繁にくりかえされ、所有者も転々と変わるので、便宜置籍船の国際的規制が難しい。

日本の遠洋漁業は衰退し、マグロ漁船も減船しているのに、日本産マグロ漁獲量が減らない。その理由として、日本の大型冷凍運搬船が、インド洋、大西洋、太平洋で、便宜置籍船から直接マグロを移し替え、日本に運んでいるためである。便宜置籍船の漁獲したマグロが、日本の冷凍運搬船に積み替えられると、日本漁船の漁獲の形になる。マグロのロンダリングといわれる。
台湾にも、マグロ超低温大型冷凍倉庫があり、台湾漁船、便宜置籍船、小型漁船の漁獲したマグロが-60℃で保存されている。日本国内でマグロ価格が上昇した時に、日本の清水港に向けて輸出される。

マグロの国際的漁獲規制は24m以上の漁船を対象とする。中には、長さ50m、総トン数600トンの巨大漁船もある。大型漁船は国際的規制を避けるため、第三国に船籍を移し、便宜置籍船として規制を避けてマグロを乱獲している。

台湾は23.9mプのマグロ漁船を多数建造し、外国にも多数輸出している。23.9mの漁船は国際的マグロ漁業規制の対象外だから、便宜置籍船として登録する必要はない。世界各国では23.9m型のマグロ漁船が、大型の便宜置籍マグロ漁船とともに、国際的規制を受けずに、マグロを漁獲している。
日本・台湾などのマグロ冷凍運搬船は、23.9mの規制外マグロ漁船と、便宜置籍マグロ漁船、日本のマグロ漁船などから、冷凍マグロを洋上で買い付け、日本の清水に運ぶ。このうち、23.9m型のマグロ漁船との洋上取引は違法ではない。日本漁船との洋上取引も違法ではない。つまり、便宜置籍マグロ漁船がIUU漁業の海賊船であったとしても、冷凍運搬船は便宜置籍マグロ船との洋上取引を隠す手段はいくらでもある。つまり、日本へのマグロ供給は当分は減らない。しかし、マグロ資源は確実に減少しているのである。
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便宜置籍船を海賊船と呼ぶ自然保護関係者が少なくない。マグロ資源保護の国際協定を無視するだけではない。合法的に操業しているマグロ漁船の延縄を切断して、漁獲直前のマグロを横取りすることがある。
冷凍運搬船には違法操業(IUU漁業)の弱みで、マグロ価格を安く買いたたかれる。便宜置籍船は、一層コストの削減と違法操業につとめることになる。
下船希望の乗組員には船内で懲罰を加えることがある。また、急病人が出ても、救助を関係機関に要請できにくいため、病人を死なせてしまうこともある。老朽船のため、ある日突然沈没という危険もある。

主要便宜置籍船国とマグロ漁船隻数(24m以上。2005年)
ベリーズ:241
ホンジュラス:416
アンティル:20
パナマ:222
ボリビア:16
キプロス:27
カンボジア:47
マーシャル諸島:7
シエラレオーネ:27
赤道ギニア:39
モーリシャス:24
グルジア:60
バヌアツ:47



マグロ冷凍運搬船「はつかり」の航跡

2007-06-07 20:56:03 | マグロ
日本のマグロ生産量は25万トン、輸入も25万トンだが、本当の数量は誰にも分からない。
パナマ船籍の超低温冷凍運搬船「はつかり」が、IUU漁業の便宜置籍船からどれだけのマグロを洋上で積み替えているのか、関係者の最高機密である。「はつかり」以外の超低温冷凍運搬船も、ほとんど同様である。
偽造書類の数値に基づいて、日本の生産量や輸入量が議論されている。マグロ資源の存在量の科学的推定も、根拠が曖昧である。

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2000年3月3日に清水を出港した冷凍運搬船「はつかり」は、8月8日に寄港するまで、インド洋で15日間もかかって、冷凍マグロの洋上積み換えをした。
最終目的地の大西洋アンゴラ沖では、5日間、冷凍マグロの洋上積み換えをした。ベリーズ船は便宜置籍船であり、台湾企業の所有かどうかは分からない。分からないようにするのが、便宜置籍船なのである。
その帰途、インド洋で12日間、冷凍マグロの洋上積み換えをした。
冷凍運搬船は、合計32日間の洋上積み換えをした。どこの漁船からの洋上積み換えかは関係者以外は分からない。
最終的には日本の遠洋漁船が合法的に漁獲したマグロを、日本まで運んだことにできる。
インド洋・大西洋では便宜置籍漁船のIUU漁業が横行する。その違法漁獲物マグロを、-60度の冷凍運搬船で日本に運ぶのである。IUU漁業のマグロ漁業が合法化される。マグロのロンダリングである。
この方法により、日本へのマグロ供給量は減らないし、安く供給できる。世界のマグロ資源は確実に減少するであろう。
マグロ冷凍大型運搬船の多くは日本の海運会社の所有である。船籍は日本あるいはパナマである。
「はつかり」は日本の海運会社の所有、船籍はパナマである。

マグロの超低温冷凍運搬船が、便宜置籍船からマグロを洋上で買い付ける場合、買い付け価格は合法漁船の半値が相場である。便宜置籍船は冷凍船に安く買いたたかれるためにコストダウンにつとめ、犯罪的行為に及ぶこともある。例えば、船員の長時間労働と低賃金、老朽船の使用と整備不良、傷病対策の不備など。さらに、他のマグロ漁船の漁獲したマグロを延縄から横取りしたり、延縄そのものを切り取ってしまったりすることもある。





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マグロ冷凍運搬船「はつかり」についての要請(2000.8.9 green piece)

今日(2000.8.9)、便宜置籍船によって捕獲されたマグロが清水港に荷揚げされる。グリーンピースは、日本に対し違法に捕獲されたマグロの荷揚げを中止させるよう求める。
本日(2000.8.9)午前 9時、違法に捕獲されたマグロを積んだ冷凍運搬船「はつかり」が清水港に入港した。グリーンピースは、水産庁に対し、清水港への荷揚げをくい止めるように要請した。今年、「はつかり」は、大西洋で違法漁業(IUU漁業)をしていた便宜置籍船からマグロを積み替えていた。
「はつかり」のような船は世界中の海賊漁船団に多大な援助を与えている。グリーンピースは日本政府に「はつかり」 の違法なマグロの荷揚げを止めるように呼びかけている。
2000年5月、グリーンピースの監視船グリーンピース号は、アンゴラ沖数百マイルの公海で「はつかり」を発見した。「はつかり」は、大西洋で違法操業したベリーズとカンボジア船籍の漁船からマグロを積み替えたり、漁のための餌を補給したり、船の整備などのサービスをしていることを映像として記録した。具体的には、
 *冷凍運搬船「はつかり」は、ベリーズ船籍のはえ縄漁船「Jackie 11号」に餌を届けた。
 *カンボジア船籍のはえ縄漁船「Benny 87号」から約70トンのメバチマグロを積み替えた。「はつかり」はメバチマグロと引き替えに、「Benny 87号」へマグロ漁の餌を届けた。
 *ベリーズ船籍のはえ縄マグロ漁船 「Jeffrey 816」の整備を行った。
以上のベリーズ船、カンボジア船は、ICCATの規制に違反したIUU漁業を行っている便宜置籍船であり、ICCATがまとめた違法操業船リストに載っている。
グリーンピースは、2000年7月18日付で中須勇雄水産庁長官に書簡を提出し、「はつかり」が日本に向かっていることを水産庁に通報した。「はつかり」は日本企業株式会社アトラスマリン所有の超低温冷凍運搬船であり、パナマ船籍である。
世界中で1,300隻以上の海賊漁船が違法操業をしているとグリーンピースは推定している。そのほとんどがベリーズ、ホンデュラス、パナマ、セント・ビンセントの船籍である。便宜置籍船国の海賊的IUU漁業は、海洋生物資源を減らし、法律を遵守するマグロ漁船を脅かしている。グリーンピースは、日本とその他の政府に下記のことを要請する。
【グリーンピースからの要請】
*便宜置籍船とその関係運搬船の日本入港を認めないこと。
*便宜置籍船が獲ったマグロなどを、日本市場に流通させないこと。
*便宜置籍船と関連する冷凍運搬船の、所有および操業を禁止すること。
【便宜置籍船とは】
便宜的に船籍を置かれている国はその国の船籍での船の操業を許可するが、その操業内容に関係する法規制を厳守することを保証するわけではない。漁業資源の保護や漁業管理の規制、安全・労働基準の縛りをかいくぐるために、漁船の所有者及び会社がそういう国の船籍を使う。


IUU漁業

2007-06-07 19:32:07 | マグロ
IUU漁業とは違法操業のことである。マグロ資源保護の国際的規制をのがれ、マグロを乱獲するため、国籍を第三国に移した便宜置籍船が利用される。IUU漁業の冷凍マグロを、洋上で日本の冷凍運搬船に積み換え、日本の遠洋漁船が合法的に漁獲した書類を偽造すれば、日本に冷凍マグロを大量に運ぶことが可能である。
日本のマグロ漁獲量は年間25万トン前後だが、そのうちのどれだけがIUU漁業の便宜置籍船から洋上で買い付けたのか、分からない。-60℃の冷凍運搬船を所有するのは日本と台湾だけである。IUU漁業を国際的に規制しても、冷凍運搬船に洋上積み換えてしまうと、日本に運ばれるマグロがIUU漁業のものかどうか、分からない。
日本の水産庁は日本のマグロ冷凍運搬船に対し、IUU漁船からマグロを洋上買い付けをしないように指導し、マグロ漁の許可を得た正規漁船名を公表している。大部分のマグロ冷凍運搬船は正規船から洋上積み換えをしているが、一部の冷凍運搬船はIUU漁船から買い付け、これを日本のマグロ漁船から購入したとか、23.9m型の規制外マグロ漁船から買い付けたとか、合法的取引を装って、IUU漁業の手助けをしている。

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Illegal(違法操業)
自国あるいは他国の200カイリ内で、無許可あるいは違法の漁獲を行う。
200カイリの排他的経済水域内あるいは公海で、国際的漁業管理機関の保全管理措置に反する漁業を行う。
Unreported(無報告漁業)
関係国政府機関に、漁獲魚種・漁獲量・操業位置などについて虚偽の報告をする。あるいは必要な報告を怠る。冷凍運搬船と洋上積み換えをすると、違法操業が帳消しになる。
Unregulated(無規制漁業)
無国籍漁船や、国際管理機関に非加盟の国籍の漁船を用いて、操業をする漁船である。便宜置籍船といわれる。例えば台湾漁船が大西洋でICCATの漁獲規制を受けないように、パナマの船籍に変えて操業する場合などである。

IUU漁業
公海や他国200海里経済水域内において、マグロ資源を守るための国際的な取り決めがあるにもかかわらず、漁船によってはそのような取り決めを無視し、違法操業を続けることがある。そのような違法の漁業をIUU漁業と呼ぶ。マグロ漁においては、海洋管理能力の乏しい発展途上国に船舶を登録した、便宜置籍船がIUU漁業を行う。
マグロ資源保護を考えず、国際法を厳密に形式的に解釈すると、公海のIUUマグロ漁業は国際法に違反しない。したがってIUU漁業には、軍事力をともなう強い取り締まりはできない。




台湾の便宜置籍船対策

2007-06-06 21:45:37 | マグロ
世界の便宜置籍船の実質的船主は台湾の水産会社である。その台湾にも-60℃の長期冷凍倉庫が建設された。台湾漁船と、台湾資本の便宜置籍船が漁獲したマグロを長期低温保存し、日本のマグロ市況が高騰した時に日本へ輸出して、大きな利益をあげている。
台湾政府が、日本の政治圧力を受け、マグロ漁船の減船を強制された。老朽船はエンジンを取り外して解体された。
まだ使える中古大型マグロ漁船は便宜置籍船国に登録されて、世界の海で違法なマグロ漁業をしている。
台湾政府がマグロ漁船を減らしても、海賊船まがいの便宜置籍船が増えるばかりである。そして、日本・台湾のマグロ冷凍運搬船が、便宜置籍船からマグロを洋上で買い、積み替え、最終的には日本に運ぶのである。

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台湾立法院、便宜置籍船取り締まりに関する決議(台湾週報。2005.12.15)

台湾立法院は2005年12月13日、船籍を偽って無秩序な操業を行う便宜置籍船の取締り強化に関する決議を採択した。

台湾の遠洋まぐろ漁業に関しては、2004年の大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)総会で、日本から台湾漁船の過剰な漁獲とフィッシュロンダリング(魚種、漁場、船名などの付け替え)などが指摘された。2004年11月14日からスペインのセビリアで開かれたICCAT第19回年次総会では、2006年度における台湾の大西洋におけるメバチマグロ漁業に関し、漁獲枠を大幅に制限し、2年以内に160艘の漁船を削減することが求められていた。

このため台湾立法院は、公海でのマグロ漁船に対する管理を強化し、国際社会の一員としての義務を全うする姿勢を示す目的で、民進党の立法委員らにより本案が提議された。
これは今後、ICCATと同様の削減措置が他の国際漁業組織で採られることのないよう、台湾の漁民の権益を保護する視点に立ち起草されたもので、中西部太平洋まぐろ類条約(WCPFC)の会合においても、台湾政府の姿勢をアピールする方針だ。

今回立法院で決議された内容は以下の通りである。
(1)台湾の一部の漁船が便宜置籍船となり、台湾国内の法をすり抜け、違法、無報告漁業(IUU)操業を行い、漁業資源に大きな影響を与え、台湾の国家イメージと権益を損なっていることに対し、司法検査機関による積極的な調査を実施する。
(2)台湾籍の漁船の数量は、船の大きさに関わらず、国際漁業組織から割り当てられた枠に合わせなければならない。したがって、全面的に減船を強化する。
(3)台湾籍の小型船については、個人所有のケースが多く、企業により組織的に管理されている大型船とは性質が異なるが、これも大型船同様管理を強化する。
(4)船籍に関わらず、制限を超えた漁獲やその報告資料を捏造した違法者には、国際規範に従い、漁業許可証の取り消しなど相応の処分が採られる。こうした漁船のIUU行為を途絶し、便宜置籍船を廃絶するとともに、国際社会と協力して違法操業を撲滅する台湾の決意を示す。
(5)国民に対し、投資と称して、外国籍名義で公海でのまぐろ漁業に従事することを禁ずる。また、台湾国内における外国籍漁船の造船や、輸出、整備なども原則として禁止する。
(6)行政院は、国際漁業管理および研究に関わる人員と経費を強化する。
(7)台日の産業界の連携を促進するため、産業界に対し日本向け輸出量の公約遵守を要求する。

一方、行政院農業委員会は2005年12月13日、公海における漁業資源保護条例草案を起草する考えを明らかにした。
公海での操業に関し、漁業従事者に一定の規範を設けるもので、違反者には最高で3~7年の刑が科せられるとしている。同署は立法院での決議に関し「IUU行為の廃絶にプラスとなる」と支持するとともに、「こうした台湾の努力により、現在開催中のWCPEC会合でも、相応の評価がなされるはずだ」との考えを示した。







マグロ漁業の国際管理機関RFMO

2007-06-06 20:49:15 | マグロ
マグロの漁獲量が海域別に管理規制されている。1950年にIATTCの管理から規制が始まったものの、規制を無視する国が多い。マグロ資源保護への実効性に乏しい。
マグロ資源の保護には、最大消費国日本の役割が大きいものの、日本の外交能力ではマグロ資源保護の規制強化は困難である。
マグロの漁獲と国際取引においては、ルール無視の状態が数多く見られる。
マグロ資源の減少に危機感を共有せず、自国の利益つまり日本への輸出増加をめざす国があり、国際管理がうまく進んでいないのである。マグロ資源の将来は明るくない。
アジアでは台湾、ヨーロッパではスペイン、地中海岸ではリビア・トルコが資源管理に協力的ではない。






マグロの世界的乱獲

2007-06-06 13:46:13 | マグロ
クロマグロは地中海と大西洋に、ミナミマグロはインド洋に分布する。乱獲による資源枯渇が進んでいる。日本漁船と台湾漁船で世界のマグロの25%を漁獲し、国際的規制を受けるようになった。世界のマグロ漁獲量が年間200万トン、日本の年間消費量は50~60万トントンである。
大西洋と大西洋のクロマグロ、インド洋のミナミマグロの資源が危機的状況にある。海域ごとに国際的規制があるが、リビアやトルコのように規制を拒否する国もあれば、規制を受けないような発展途上国に船籍を移すマグロ漁船が増えている。
このため、規制強化にもかかわらず、世界のマグロ漁獲量は減らないし、最大の消費国日本ではマグロの不足も、マグロの値上がりも見られない。