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『ありがち日記』

『クマにあったらどうするか―アイヌ民族最後の狩人 姉崎等―』

著者は、アイヌ民族最後の狩人である姉崎等さんと、
その姉崎さんをインタビューをして本書をまとめた片山龍峰さん。
お二方はすでにどちらもお亡くなりになっています。

こういうタイプの本を読むのは珍しいのですが、ちくま文庫のコーナーで、
イラストのクマが描かれた表紙が目に入って購入してしまいました。
その可愛いイラストからは想像できないほど、中身はかなり濃いものとなっています。
春になり、冬眠していたクマたちが動き始める季節となりましたが、
そういう時にこの本をぜひ読んでいただきたいなぁ~と思うものでした。
この本の中で言うクマとはヒグマのことですが、
サイズ的にはもう少し小さいツキノワグマの
人間を襲うニュースが頻繁に聞かれるようになっている昨今、
とても他人事とは思えないことですよね。

姉崎さんは60年以上、クマ撃ちとして山に入ってきた方。
一言一言、その経験に裏打ちされた知識がこの本にはたくさん詰まっています。
インタビュー形式なので、その話し方そのままなところも多いです。
時々アイヌの言葉が混じるんですが、それもまた良し。

クマを撃ってどのような儀式があるのか、
山に入るときの準備や心構えといったものは何なのか、
アイヌの伝統も含めながら紹介してくださっています。
大学の頃、マタギの本を読んだこともありますが、
共通しているところもあれば、アイヌ独特の文化というのもあるようで、
非常に興味深く読ませていただきました。

ずっと同じく一貫して仰っているのは、
クマはもともと臆病な動物で、むやみに人を襲うものではないのだ、ということ。
それでも遭遇してしまったら、何らかの行動を取らねばなりません。
背中を向けて逃げるのはもってのほか、
腰を抜かしてでもいいからその場を動かず、目を合わせて互いの動きを見るほうがいいのだそう。
うん…(^^;)難しいぞ…
クマは、縦横無尽に歩き回り変な道具を操る人間のことを強いと思っているらしく、
そのまま強く見せておくほうがいい、ということなのかしら?
逃げてしまうと、その人が襲われやすいのだそうです。

やっぱり、そう簡単にはできなさそうです…
真っ先に走って逃げたくなりそう。

ま、これはごく一部のことでしかありません。
本の中にはなるほど…と思うようなことがたくさん出てきます。

印象に残っているのは「『クマが怖い』という言葉が怖い」というフレーズ。
むしろ人間がクマの住処にどんどん入り込んでいっているわけだし、
松だけ、杉だけの死んだような山で餌を求めて人里にまで出て来ざるを得ないクマに、
何の罪があるのかと思ってしまうのでした。
それで、本来なら共存しているべき存在のクマに対して一方的に怖いというのは…。
どうしたら共存できるのか、これは現代の我々にとって大きな課題だと思います。
住んでいる場所を簡単に線引きできるものでもないのですから。

でも、人を襲ったことのあるクマは、やはり殺さなければならないそうです。
悲しいことですが、一度人間が弱いものだ、あるいは餌だと認識してしまったクマは、
同じことを繰り返すのだそうです。
そのことに対しては、姉崎さんも殺さなければならないと断言していました。

すっかり表紙に騙されて買ってしまった感がありましたが、
こんなにいろんなことを考えさせられたことに感謝したいです。
残念ながら今はおそらく姉崎さんほどの経験をもった方はいらっしゃらない、
いらっしゃったとしても、数少ないのだと思います。

狩猟免許に興味を持ったこともあるんですが(笑)、
自然(野生動物)と人間との関係について、理解を深めることが大事ですね・・・。


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