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事故の航空史(10)ユナイテッド航空173便 1978/12/28

2017-11-08 01:12:44 | 事故の航空史
【事故の概況】
[発生日時及び場所]1978年12月28日18時15分頃 アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド国際空港近郊
[航空会社及び便名]ユナイテッド航空173便(UA173便) ニューヨーク ジョン・F・ケネディ国際空港(JFK)発、デンバー・ステイプルトン国際空港(DEN)経由、ポートランド国際空港(PDX)行きダグラスDC-8-61(N8082U)

【事故の経過】
 ポートランド国際空港へ着陸進入中、ギアダウンを行ったところ、大きな音が発すると同時に機首が右に振られた。コックピット内の計器を確認すると、右主脚の降下およびロックを示すランプが点灯していない状態になっていた。機長は直ちに着陸を中止し、機を旋回させながら原因と対策を講じた。
 まず目視で主脚が下りていることは確認したものの、機長はロックされていない可能性を考慮し、副操縦士及び航空機関士と胴体着陸の手順について確認を行い、客室乗務員もその情報を伝え、乗客への周知と準備を進めていた。その間も機は空港周辺の旋回飛行を継続していた。
 準備が整い緊急着陸態勢に入ったのち、空港から10キロ手前の森に墜落した。原因は燃料切れであった。乗員乗客189名中、副操縦士1名客室乗務員1名、乗客8名が死亡した。

【事故の原因】
 墜落の直接の原因は燃料切れであった。同機はデンバーを出発する際、予備燃料を含めた規定通りの燃料を搭載したが、ポートランド空港着陸寸前の不具合により空港周辺を旋回している間に残存燃料をすべて使ってしまい、墜落した。その時点で旋回飛行は1時間を超えていた。
 事の発端となった右主脚は、ギアダウンのためにロックを外した際、油圧装置のピストンロッドが破断した。これにより右主脚は自重により自然落下して、降りきった際の衝撃で、振動と騒音を発生させロックを確認するセンサーのスイッチを破壊していた。これにより操縦室のロックを示すランプが点灯しなかった。
 この場合のダグラス社のマニュアルによる対応としては、「目視で主脚が下りているか確認」、「下りている場合、主翼上部の突起によってロック状態を確認」、「ロックが確認できない場合は管制官などにより脚が降下しているか確認」、以上を満たす場合はロックされていると考え、着陸を行う、であった。
 しかし、機長はあくまでも右主脚はロックされていないと考え、胴体着陸を前提とした準備を進めた。旋回に入ってから約30分後に機長が残存燃料が5,000ポンドであることをコールして確認している(直後に5,000ポンドを切った警報音も確認している)が、マニュアルによれば、5,000ポンドでの飛行時間は約25分とされている。副操縦士及び航空機関士はその後、燃料に関する発言をしているが、機長は他の作業に気を取られており、特に燃料に関する言及はない。
 燃料不足でエンジンが停止する6分前に機長が残燃料が1,000ポンドであることを発言しているが、このとき実際には100ポンドであったと考えられる。この誤認は、個別の燃料タンクの残量は計器の残量表示の100倍、総燃料残量計の表示は1,000倍で求めることとなっており、計器の「1」という表示を100倍すべきところ、1,000倍したことによる誤認識と思われる。
 この結果、全く予想していない状態で、燃料払底により全エンジンが停止してしまい、高度がほとんどない状態で機長は何とか住宅地を避けて森に接地させることぐらいしか猶予は残されてなかった。


【再発防止策】
 ユナイテッド航空は、事故の原因の一部をコックピット内のコミュニケーション環境にあると考え、機長-副操縦士-航空機関士という階級的立場による影響の排除と、ほぼ初対面の乗員であってもチームワークが発揮できるよう、クルー/コックピット リソース マネジメント(CRM)という考え方を1980年から訓練に取り入れている。これにより、操縦室内でのチームワークは向上したと考えられており、他の航空会社でも訓練に取り入れられている。

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