Little Bird News

鳥の医学情報、日々の雑感など、気が向くままに・・・。

放射線ホルミシス

2011-03-26 19:08:34 | 鳥の医学情報(その他)
この記事は、いま起きている放射線に対する実際的な話と言うより、
学問的な興味として読んでいただければと思います。


みなさん、放射線ホルミシスという言葉をご存じでしょうか。

1980年代、アメリカのLuckey(Thomas D. Luckey)というミズーリ大学の教授によって提唱された概念です。

それまで、放射線の生物に対する影響を研究する学者のほとんどが、
原爆などによる被災の経験から
放射線が及ぼす生物に対する悪影響について主に論じてきました。

当然、放射線量が少なければ悪影響も減ることはわかっていましが、放射線はどんなに少なくてもやはり悪玉であり、
ゼロにならなければリスクはゼロにできないと考えられてきました。
安全性の観点から考えれば当然の発想です。


ところから、Luckeyは当時の研究者たちの考えを根底から覆す、
低線量域で生じる放射線影響は高線量域とは全く異なっており、逆に、低線量の放射線は生理的に有益な効果をもたらす」という考えを示したのです。

もちろん、この考えが誤りであった場合、大きな混乱を招くことになりますので、
慎重に研究が続けられているようです。

さて、ここで鳥の話です。

鶏においてもこの放射線ホルミシスに着目し、研究された獣医師がおられます。
この博士の論文によると、
鶏の放射線照射による半数致死量(LD50)は、
ほ乳類の半数致死量(LD50)である400-600Rをはるかに上回る900R以上という数字であり、
さらに、放射線の照射によって孵化率向上、雛の成長促進、産卵機能の回復などが認められることを発見しました。
また、この研究の中で、羽毛の放射線遮蔽効果も見つけています。

今回、放射線ホルミシスの話をしたのは、何も放射線の擁護(?)のつもりではありませんし、この情報=鳥は放射能に強く安全ということでもありません。
鶏に放射線ホルミシス効果が得られる線量も、もっと長期で見たら、違う角度から見たら悪い面もあるかもしれません。
(ホルミシス効果の話を利用した"擬似科学"も出てきていますので注意!)

放射線は生物に非常に危険”なシロモノです。
(個人的にはできれば原発に頼らない社会になって欲しいと思っています)

ただ、物事には違った側面もあり、

 放射能=危険

と、単純にイメージで捉え、闇雲に怖がってしまうことも、また危険なこと…
ということがお伝えできればと思い記事にしました。

参考
石田 健二(1995):放射線ホルミシス, 放医研シンポジウムシリーズ No.26 放射線生物影響とリスクのモデル化(稲葉 次郎, 小林 定喜編), 115-124, 放射線医学総合研究 所, 千葉.
柏原孝夫(2007):家禽の産卵性に及ぼすイオン化放射線の影響, 放射線生物研究, 42(1): 96-110.

ミネラルウォーター

2011-03-26 12:17:35 | 鳥の医学情報(その他)
コメント欄で質問があったのですが、
コメント欄だとあまり多くの人の目に触れないようなのでこちらにあげときますね。

>ネットでお水について検索をかけると、「インコにミネラルウォーターを与えると、結石の様な物が出来るので良くない」と言うレスをよく見かけます。

結石が何結石(泌尿器系?消化器系?)を指し示しているのかわからないのですが
一般的に“結石”と言われる泌尿器系だとすれば、
鳥はほ乳類に比べて結石症例がはるかに少ないです。
おそらく何千(何万?)分の1という数字になるかと思います。

鳥は、ボレー粉のようなカルシウムの塊をガリガリ食べる珍しい生物ですから、
硬水ごときのカルシウム量でどうにかなるとは考えにくいです。

もちろんそれなりの量のCaを摂取すれば、鳥でも害がでます。
飼料中2.5%が有害な濃度とされ*、
小型飼鳥の食事量が体重の10-20%ですから、
概算ですが、一日辺り2.5~5g/kgのCaは危険ってことになります。
食欲が落ちたり、組織にCaが沈着してしまったりします*。
*AVIAN MEDICINE: PRINCIPLES AND APPLICATION , 1994 , Wingers Publishing, Inc.


で、非常な硬水である、エビ○ンのCa濃度は30mg/100ml
一日に体重の10%飲むと考えると・・
1kgの鳥で100ml、ということは、
エビ○ンからの一日でのCa摂取量は30mg/kg、gに換算すると0.03g/kgってことになります。

超硬水のコント○ックスであっても、
146.8mg/100ml
なので、0.1468g/kgってところですから、
危険量の2.5~5g/kgに比べれば微々たる量です。

もちろん、ビタミンD3とかリンとか様々な他の因子も影響しますので一概に言えませんが、
やはりどう考えても理論的には問題なかろうかと思います。

疫学的にも、
硬度が高い地域に結石が多いって話は聞いたことがありませんので実際的にも大丈夫なのだと思いますよ。

水道水の放射性物質について

2011-03-25 03:30:45 | 鳥の医学情報(その他)
前回のブログで私なりの考えを述べさせていただきましたが、
それでもやっぱり気になるって人のために。

今回の水道水中への放射性物質の混入は、雨の影響が強いようで、
現在数値は下がっているようです。

下のニュースでも書かれているのですが、
気になる方は、数値が低いときに水をくみ置きして、
保存しておくのが良いかと思います。
冷凍で8日も保存しておけば、半減期が過ぎますのでさらに安全性は高まると考えられます。

乳児の指標100ベクレルとは?(読売新聞) - goo ニュース

また、浄水器に関しての問い合わせもあるのですが、
メーカーに問い合わせてーとしか言いようがありません。
とはいえ、メーカーにも問い合わせが殺到していて大変なようですが・・・

特殊な活性炭粒を使用すると除去できるようですが、
家庭用浄水器用の活性炭だと「やらないよりやったほうがまし!」程度に考えてもらうって使ってもらうのが良いかと思います。

水道水から検出された放射線について

2011-03-23 17:05:32 | 鳥の医学情報(その他)
電話が鳴り止みません・・・

「鳥に水道水を与えて良いか?」というお問い合わせがあまりに多く、
診療と入院管理がおぼつかない状態となってきましたので、
緊急にアップさせていただきます。


現在の放射線レベルでは、成鳥に対する健康被害はないと私は判断しています。

飲料水からの被爆で考えなければならないなのは、放射線の総量です。

現在の濃度であれば、
健康な成人がある程度の期間摂取しても問題にならない総量にしかならないと発表されています。

鳥は体が小さいので、心配されるかもしれませんが、その分、飲む量も少ないのです。

ということは、鳥が”極端に放射線に弱くない限り”人と同様に考えて良いわけです。

そして、鳥の細胞(DNA)が、放射能に弱い!という話を私は聞いたことがありません。

というわけでして、今のところ心配はいらないと思います。

雛に関しては、人同様、”万が一”の可能性があるので、
水道水を控えた方が良いかもしれません。

ペットボトルの水を使う際、みなさん軟水or硬水を気にされますが、
どちらでもかまいません。

ミネラル制限を言い渡されている場合だけは、軟水をお使いください。

みなさな、くれぐれもパニックにならず、落ち着いた対応をよろしくお願いいたします。






熱中症に注意!!

2010-07-24 15:06:46 | 鳥の医学情報(その他)
暑いですね・・・

日本はどうなっちゃったんでしょうね?

さて、これだけ暑いと熱帯生まれの鳥さんたちはさぞや元気にしてることでしょう!
などと思いきや。

毎年、この時期は熱中症の子がたくさん来院します・・・

いくら熱帯生まれの鳥たちでも、育ちが日本ならば体は日本人(鳥)になってしまっているのです。
(アフリカ生まれの人でも日本育ちなら、この季節はそうとう暑いのではないかな?)

昨今の夏は非常に暑いですし、マンションなどで密閉性もあがっています。

風通しを良くしているから大丈夫!なんて方もいますが、
風通しはそこまで鳥に冷却効果をもたらしません。

人間は、風通しがいいと汗が蒸発して体温を下げてくれる働きをするのですが・・・

鳥は、汗をかかないのです。←なのでこれはウソです(笑)

特に、普段人がいる時はクーラーをつけていて、仕事に出かけるときは消してしまうなんてお宅は要注意です。寒暖差でマイってしまいます。

また、水がなんらかの事故でこぼれてしまって飲めなくなってしまうのも非常に危険です。
暑いときは、水を沢山飲んで、気嚢から蒸発させて体温を下げているからです。

体調や鳥種、個体差、精神状態などさまざまなことに影響されますが、
できれば、32℃以下に室温をエアコンで制御しておくことをお勧めします。

ちなみに、暑がっているときの鳥さんの様子ですが・・・

・開口呼吸・・・口をあけてはぁはぁしている。
・開翼姿勢・・・脇をあけて、脇の無毛域から熱を放散しようとがんばっている
・縮羽・・・正羽(フェザー)を体にぴったりくっつけて、綿羽(ダウン)をつぶして保温効果を下げようとしている。

こんな様子が見られたらすぐに室温を下げましょう!!


さて、明日は愛知で講演をしてきますのでコジマの診察はお休みです。
ご迷惑おかけしますがお許しくださいませ・・・(愛知も暑そうだなぁ;;)
糞便検査や血液検査、レントゲン検査の解釈について徹底的にお話してこようと思っております。