この記事は、いま起きている放射線に対する実際的な話と言うより、
学問的な興味として読んでいただければと思います。
みなさん、放射線ホルミシスという言葉をご存じでしょうか。
1980年代、アメリカのLuckey(Thomas D. Luckey)というミズーリ大学の教授によって提唱された概念です。
それまで、放射線の生物に対する影響を研究する学者のほとんどが、
原爆などによる被災の経験から
放射線が及ぼす生物に対する悪影響について主に論じてきました。
当然、放射線量が少なければ悪影響も減ることはわかっていましが、放射線はどんなに少なくてもやはり悪玉であり、
ゼロにならなければリスクはゼロにできないと考えられてきました。
安全性の観点から考えれば当然の発想です。
ところから、Luckeyは当時の研究者たちの考えを根底から覆す、
「低線量域で生じる放射線影響は高線量域とは全く異なっており、逆に、低線量の放射線は生理的に有益な効果をもたらす」という考えを示したのです。
もちろん、この考えが誤りであった場合、大きな混乱を招くことになりますので、
慎重に研究が続けられているようです。
さて、ここで鳥の話です。
鶏においてもこの放射線ホルミシスに着目し、研究された獣医師がおられます。
この博士の論文によると、
鶏の放射線照射による半数致死量(LD50)は、
ほ乳類の半数致死量(LD50)である400-600Rをはるかに上回る900R以上という数字であり、
さらに、放射線の照射によって孵化率向上、雛の成長促進、産卵機能の回復などが認められることを発見しました。
また、この研究の中で、羽毛の放射線遮蔽効果も見つけています。
今回、放射線ホルミシスの話をしたのは、何も放射線の擁護(?)のつもりではありませんし、この情報=鳥は放射能に強く安全ということでもありません。
鶏に放射線ホルミシス効果が得られる線量も、もっと長期で見たら、違う角度から見たら悪い面もあるかもしれません。
(ホルミシス効果の話を利用した"擬似科学"も出てきていますので注意!)
”放射線は生物に非常に危険”なシロモノです。
(個人的にはできれば原発に頼らない社会になって欲しいと思っています)
ただ、物事には違った側面もあり、
放射能=危険
と、単純にイメージで捉え、闇雲に怖がってしまうことも、また危険なこと…
ということがお伝えできればと思い記事にしました。
参考
石田 健二(1995):放射線ホルミシス, 放医研シンポジウムシリーズ No.26 放射線生物影響とリスクのモデル化(稲葉 次郎, 小林 定喜編), 115-124, 放射線医学総合研究 所, 千葉.
柏原孝夫(2007):家禽の産卵性に及ぼすイオン化放射線の影響, 放射線生物研究, 42(1): 96-110.
学問的な興味として読んでいただければと思います。
みなさん、放射線ホルミシスという言葉をご存じでしょうか。
1980年代、アメリカのLuckey(Thomas D. Luckey)というミズーリ大学の教授によって提唱された概念です。
それまで、放射線の生物に対する影響を研究する学者のほとんどが、
原爆などによる被災の経験から
放射線が及ぼす生物に対する悪影響について主に論じてきました。
当然、放射線量が少なければ悪影響も減ることはわかっていましが、放射線はどんなに少なくてもやはり悪玉であり、
ゼロにならなければリスクはゼロにできないと考えられてきました。
安全性の観点から考えれば当然の発想です。
ところから、Luckeyは当時の研究者たちの考えを根底から覆す、
「低線量域で生じる放射線影響は高線量域とは全く異なっており、逆に、低線量の放射線は生理的に有益な効果をもたらす」という考えを示したのです。
もちろん、この考えが誤りであった場合、大きな混乱を招くことになりますので、
慎重に研究が続けられているようです。
さて、ここで鳥の話です。
鶏においてもこの放射線ホルミシスに着目し、研究された獣医師がおられます。
この博士の論文によると、
鶏の放射線照射による半数致死量(LD50)は、
ほ乳類の半数致死量(LD50)である400-600Rをはるかに上回る900R以上という数字であり、
さらに、放射線の照射によって孵化率向上、雛の成長促進、産卵機能の回復などが認められることを発見しました。
また、この研究の中で、羽毛の放射線遮蔽効果も見つけています。
今回、放射線ホルミシスの話をしたのは、何も放射線の擁護(?)のつもりではありませんし、この情報=鳥は放射能に強く安全ということでもありません。
鶏に放射線ホルミシス効果が得られる線量も、もっと長期で見たら、違う角度から見たら悪い面もあるかもしれません。
(ホルミシス効果の話を利用した"擬似科学"も出てきていますので注意!)
”放射線は生物に非常に危険”なシロモノです。
(個人的にはできれば原発に頼らない社会になって欲しいと思っています)
ただ、物事には違った側面もあり、
放射能=危険
と、単純にイメージで捉え、闇雲に怖がってしまうことも、また危険なこと…
ということがお伝えできればと思い記事にしました。
参考
石田 健二(1995):放射線ホルミシス, 放医研シンポジウムシリーズ No.26 放射線生物影響とリスクのモデル化(稲葉 次郎, 小林 定喜編), 115-124, 放射線医学総合研究 所, 千葉.
柏原孝夫(2007):家禽の産卵性に及ぼすイオン化放射線の影響, 放射線生物研究, 42(1): 96-110.