吉田屋のブログ。「新・自給ライフ研修旅館」を発信します!

「ミニマム」でいい「持続可能」であれば。あの日からそんなふうに思う。笑いながら汗を流し、ドンと構える社会を掴みたい。

都会のインターンがあこがれる田舎の仕事

2008年09月27日 | 2011年3月までのブログ内容はこちら
みなさん、ご無沙汰しています。
応援いただいているのに、更新が途切れがちですみません・・・。

9月に掲載された、山陰中央新報のコラムです。なつやすみは、こんな賑わいを吉田屋では見せていました。人数が一気に増えた分、地域活動は活発になりました!

ぜひお読みください。


都会からのインターンがあこがれる田舎の仕事
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 夏休み、旅館には沢山の学生インターンが全国から長距離バスで10数時間かけてやって来る。地域活性ゼミに属す子、国際問題に興味を持つ子、もてなしを学ぶ子、伝統的建物が専門な院生、農家からでる規格外のもったいない野菜の活用に挑む料理人志望、将来シェフを目指す高校生。流動性が高く選択肢の多い時代を生きる若者に「始めたら一生の仕事としてやれ」なんてのは辛いが、真摯に彼らの興味を一緒に深めていくうち、「農業や旅館などを田舎でやって行きたい」と言う若者も現れる。

旅館には食器からフトンまですべて揃い、農場には畑も、農機具も、農業技術もある。地域にある様々な「眠る財」を活用し、若者を受入れ後継創業を育てることは、地方再生の有望な戦略に違いない。
一方、田舎を目指す若者を邪魔する仕組みも多々ある。一つは農地が活用しにくい制度。ある一定以上の農地を確保し、経済的にも成り立つことを証明せねばならない。農業だけでの現金収入確保が難しい時代に、兼業農家を認めない政策では折角の財を活かすのは困難だ。

 自給率49%の韓国では農業体験が学校の単位になり、そこから農業を選択する若者が増えていると韓国出身のインターン生から聞いた。都会から来る若者は都会のルールに縛られたくない傾向も強く、自由に働きたいという。週40時間とか言う工業化の下で機械のように労働をしばるルールは農業に似合うのか。晴耕雨読+好きなことで稼ごうと思えば、長時間労働(=長時間楽しめる)は当たり前。農業再生では「個々人が働き易いように働ける労働政策」にしないと農業の魅力は活きない。

 旅館ではもったいない野菜の購入で、無駄をなくすだけでなく「土地を守るお年寄り農業」の価値を褒め、励ましている。土地と言うハード以上にもっと大事な「ソフトとしてのお年寄り技術」を残せると考えたからだ。ソフト継承を本当に急がないと、遺伝子組換えなどの外国技術に安易に頼ることになる危険を感じる。

 日本には世界が羨むほどの自然があり、豊富な水は財産だ。政府は自給率アップを謳うが、まずは使われていない土地、お年寄りの技術活用を始めたらどうか。管理から活用へ、チェックから創造へ、という豊かな時代の農が見えてくる。欧州では実際に縦割りの農予算を教育、環境、技術開発などに分散し、農への直接的補助金を減らそうとしている。WTOへの自給防御策でもあり、省庁横断化への入り口なのだろう。農政は大きな価値観の選択をし、省庁をまたぐ政策変更が求められる。

でも哲学がないと、無駄がまた増えるばかり。私たちは現場で楽しい仕事モデルを成り立たせ、提言し、地域から少しずつ日本を変えていければと思う。