レナード衛藤のブログ

Facebookやインスタが多くなりましたが、書き留めておきたいことはブログですね。

レコーディング・プロセス #3

2021-07-28 13:44:00 | わくわく創作編

7月23日「マスタリング」

最終段階のマスタリングという作業に入っています。配信がメインとなっている今、この作業はあまり必要でなくなっていますが、今回はCD制作なのでとても重要なプロセスです。

具体的には曲によって異なるボリュームや質感をCDというひとつのパッケージに収めて、バランスよく聴きやすくするための作業です。曲間もこのマスタリングで決めます。

※アルバムを聴いていて、音が小さくて聴き取れないからボリュームを上げたら、次の曲が大きな音でびっくり!ということがあると思います。これが音のダイナミックレンジ。小さな音から大きな音までの幅が広いということです。

そもそも、これでこれ聴くって無理がありすぎ。


今回のマスタリング・エンジニアは、元ドラマーということもあり、私が気にしていた音を同じように感じて、かなりの時間を費やして作業して下さっています。

ダイナミックレンジが広い太鼓は、コンプレッサーというエフェクターを使ってダイナミックレンジを狭くします。けれど、エフェクターを鰍ッすぎると音の強弱=表現の豊かさが弱まってしまいます。ここが太鼓のアルバム作り、レコーディングの難しいところです。

※さらに専門的になりますが・・・。

ダイナミックレンジだけでなく、太鼓の音は倍音をたくさん含んでいます。「どん!」と叩いた後、太鼓の胴の中で「うい~~ん⤴い~~ん⤴」と消えていく余韻。太鼓の場合、響きと解釈されている成分かも。

専門的な倍音の説明ではありませんが、太鼓の音の特徴としてイメージしていただけたらと思います。テレビが終わった時のピー音にはないですし、今売り出し中の電子ドラムにもない成分です。

倍音は調律された楽音とは異なるため、多重録音の場合、扱いにくい成分と言えます。なので、デジタル録音の場合はカットされます。また、収録するスタジオも響きをなくした設計になっているところが多いため、今回、完全なソロ演奏はホールで収録しました。

ホールは響きがある分、倍音が際立って聴こえてきます。

7月28日「マスタリング終了!」

通常は1~2日で済むマスタリングですが、今回は音のこだわり×多忙なエンジニア=2週間以上鰍ゥりました。

コンプレッサーを鰍ッた時に起こり得る事象がどうしても気になってしまい、それを解消するために時間を鰍ッました。

また、音楽の聴き方が多様化し、スマホからコンメA本格的なオーディオ機器まで申し分ない音を提供することは至難の業。

それぞれの再生機器で納得して、聴いてもらえるラインをマスタリングで探し続けました。

今回、なんでCD???と片付けてほしくないイメージがあって、その音楽性と世界観に見合う方法を選んでアルバムを作りました。

アナログ・レコーディングに始まり、それをデジタル化して編集し、マスタリングするまでのプロセスは、今の音楽制作において最高のプロセスだったと思います。

曲を3分前後でまとめている時間軸もちゃんと持たせています(ここ、私らしさ出てます)。

まさにエンジニアの皆さんの職人技の塊みたいな音。音魂と言えるアルバムが工場に入りました。

主流となっている配信は曲ごとに販売されるため、アルバムのストーリー性や世界観が重要視されないとも言えます。音楽の在り方、アルバム作りの時代の変化が如実に表れていますね。

厳しい社会情勢が続く中、私達のように表現活動する者は、テーマや世界観をより大事に、しかも押しつけがましくならないように作品作りを大切にしていくこと。それを今回のレコーディングを通じて、とても強く感じました。

クラウドファンディング実施中(8月6日まで)


このアルバム制作にあたりクラウドファンディングを行っています。おかげさまで、7月28日現在で達成率は92%!
事前に商品をご購入して、ご支援いただくスタイルとなっております。森にちなんだグッズもご用意しておりますので、引き続き、皆さまのご支援よろしくお願いいたします。

ソロアルバム”Soloist”制作プロジェクト(専用サイト)


レコーディング・プロセス #2

2021-07-26 15:24:00 | わくわく創作編

6月26日「アナログ・レコーディング」

今、レコーディングと言えば、デジタル録音が当たり前ですが、今回の私のアルバムはアナログテープで録音。それをデジタル音源にしてミックスを行っています。

このアナログで録音した音が実に素晴らしく、食で例えると、オーガニックのお野菜とそうでないもの。天然ぶりと養殖ぶりの違いとでも言いましょうか。

大変貴重なスイス製レコーダー"STUDER"


※実はこの頃、その先にどれだけ大変な作業が待ち受けているか、分かっていなかったのです。


7月2日「トラックとミックス、そして定位」

”Soloist”=独奏者というアルバムタイトルですが、ひとつの楽器を演奏して完結している曲もあれば、いろいろな太鼓を一人で重ねている曲もあります。

それを多重録音(オーバーダビング)と言いますが、それぞれ録音した音をトラックと呼び、いくつかのトラックをバランスよく混ぜ合わせることをミックス、もしくはトラックダウンと言います。

多重録音の場合、定位というものを考えないといけません。定位と言うのは今回の場合、太鼓の音の配置のことですが、右左だけでなく奥行も表現できます。

例えば、オーケストラのように太鼓を置いて録音できれば良いのですが、一人で音を重ねていく場合はそうもいきません。

また、私が写真の太鼓セットを叩く時は手前にいるので、左側に①が聴こえるのが自然ですが、アルバムとして聴く場合、お客さんと同じ側になるので①が右側から聴こえます。



アンサンブルの場合、例えば、大太鼓はセンター奥、かつぎ桶太鼓は左側、締太鼓は右側などの振り分けが必要になります。中央に音が集まってしまうと、すべてが一緒くたになってとても聴きづらい音になってしまいます。

音の定位を整えることは、生で聴く時の臨場感に近づけるということです。

実はライブ空間においても定位はとても重要なのです。

例えば、オーケストラの楽器の配置が変わったら、おそらく、同じ曲とは思えない感じになると思います。残念ながら、太鼓演奏の多くは見栄え重視。音の定位まで考えられていないことが多いです。

7月3日「ミックスと空間」

音を重ねていく多重録音(オーバーダビング)はとても楽しいのですが、音を重ねる分だけその「空間」も収録されるので音が籠ってしまいます。

昔は「一発録り」のアナログ録音だったので、オーケストラやジャズなどのアルバムは、その場にいるような臨場感を感じることができます。

デジタル化が進んでオーバーダブが当たり前になる中、ノイズが大幅に軽減された精密で無駄のない音作りが進み、多重録音もかなり進歩しました。

きれいな音に仕上げるためにズレは修正し、雑音はできるだけ除去。なんでも除菌という社会現象とかぶります。空気感なんてノスタルジックなものになりつつありますね。

今回のアルバム"Soloist"は、収録場所が違う空間の音で構成されています。これがなかなか面白いです!出ている音を録るだけでなく「空間」を録る。

これは映像にも言えることで、デジタルで音も絵も「鮮やか指向」になるのは良いのですが、私は「空間」を大事にしたいです。

※この後、マスタリングという最後の作業で、とっても貴重な経験ができ、ゆるぎない自分の音の美学を知るのです!

クラウドファンディング実施中(8月6日まで)

このアルバム制作にあたりクラウドファンディングを行っています。おかげさまで、7月26日現在で達成率は91%!
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続く


レコーディング・プロセス #1

2021-07-25 15:43:00 | わくわく創作編

6月某日「連日スタジオ通い」

曲作りで連日スタジオに入る時は、スタジオの近くに倉庫を借ります。そして、車を運転しない私はこのようにホームレス的装いでカートに太鼓を積んで、倉庫からスタジオまで2ブロックほど運びます。このような装いの時、アメリカ国籍の私は「外国人登録証」必携。



6月某日「ヘッドアレンジ」

今日は一歩も外に出ず、机に向かってアルバムの構成を考えていました。他のミュージシャンがどうしているか分からないのですが、太鼓の曲はどうしてもライブのように構成してしまいがちです。

例えば、構えるところから叩くまでの動きとか、「間」やタメといったリズムの拍を問わない要素が音のイメージにくっ付いてきてしまいます。けれど、音は音でしかなく、知らない人にはそのプロセスは絵として浮かんできません。太鼓の生音は世界最強ですが、音源としてはそれではあかんのです。明日はスタジオに入って、そのズレを叩きながら確認します。

6月22日「いよいよレコーディングスタジオへ」

レコーディングは、その日の「記録」と割り切ることが基本。
けれど、この1年半があってか慎重になっています。ソロアルバムなので当たり前ですが、自分が叩かなければ何も始まらない。長いお付き合いのレコーディング・エンジニアにも言われちゃいました。

「どうしても意気込むよね~」。

6月23日「全力でレコーディング!」

まず、総重量300kgを超えるフル機材を搬入することから始まりました。実は2台ある大太鼓のどちらを持っていくか決めきれなくて、朝になって、結局2台持ち込むことに。



演奏する機会が激減して、しかも、梅雨に入ってコンディションがつかみきれなかったのです。そして、大太鼓は翌日の方がその場の空気に馴染んで音が良くなるので、今日は太鼓セットのベーシックトラックをほぼ録り終えることができました。

これ以上、絞りだせないエナジーを絞り出し、レコーディングできる喜び。まさに今日という記録を残せた一日でした♡

クラウドファンディング実施中(8月6日まで)

このアルバム制作にあたりクラウドファンディングを行っています。おかげさまで、7月25日現在で達成率は91%!
音楽専門のプロジェクトで事前に商品をご購入いただくスタイルとなっております。
森にちなんだグッズもご用意しておりますので、引き続き、皆さまのご支援よろしくお願いいたします。

ソロアルバム”Soloist”制作プロジェクト(専用サイト)

続く


460日ぶりの景色

2021-05-03 16:37:00 | わくわく創作編
音楽人生初となるソロライブを南青山マンダラで行いました。

ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。お会いできて嬉しかったです。

昨年12月、演出した渋川市の公演がありましたが、純然たる自分の世界を作り上げるという意味では、昨年1月のベルギーのアントワープ公演以来460日ぶりのライブでした。

この1年、何度か森に入りました。



実際に森に入るとそれはそれは圧涛Iで、腐葉土を踏む感触を楽しみながら、目的地があるわけでもない道なき道を歩いていると、テンモ窿潟Yムは目まぐるしく変わり、朽ちた大木が横たわり、そこから新芽が生まれている。

目に入る生命の色の豊かさは本当に多様でした。

今回、森をテーマにその情景を描くにあたって、既存曲やリズムを一度解体することから始めました。

2台の大太鼓を使ったGEMINIという曲は、右側の太鼓は実直なリズム(人格)。
左側の太鼓は楽しくやりたいリズム(人格)という設定にして、異なるリズムを小節ごとに打ち分けて、そのうち、お互いが影響し合い、最後は一つになるという作りでした。



大袈裟かもしれませんが、多様性とか言いながら、どんどん差別化が進み、保身に走る世の中を皮肉ったところもあります。

また、2つの大太鼓のピッチ(音程)のバランスが良く、自分でチューニングできない大太鼓の「今しかできないこと」の一つかもしれません。

他の太鼓セットやチャッパ、かつぎ桶太鼓も多様性とリズムの変容にトライしました。

3拍子と4拍子、もしくは7拍子のリズムを交互に入れたり、3拍子の中に4拍子を1回だけ挟んだり、手法としてはインド音楽やクラシックにもあるのですが、メロディーがない分、マニアックな手法になるのでグルーヴ感をなくさないようにという意図がありました。

恥ずかしながら、アウトプットがうまくできなくて、演奏もMCも反省点がてんこ盛り。

帰宅後、すぐにあかんところはお酒で流して、可能性があるところを膨らまし、もっと!もっと!確実にその色を出せるようにせねばと思った次第。

もしかしたら、構成や流れのイメージを再現しようとせず、イメージを持ったままガン!とインプロで行くべきだったか。

いや、感覚がそこまで上がってきていないから、後半は絶対ガス欠になるとか。

ああ、もっとトライアル&エラーを繰り返して高めていきたい!!!

人が動くことで生まれるコミュニケーションがあってこそ、ネットも価値が高まると思います。

やるべきことをやって、音楽のある生活、日常を切り拓いていけたらと思います。

お花を添えていただき、ありがとうございます。



曲が生まれる時

2020-12-29 23:50:00 | わくわく創作編
Facebookの書き込みから、ちょっとした狂想曲のような販売となったCD “Power and Patience”

ご購入いただいた皆様ありがとうございました。

私自身、リスナーとして作品の経緯を探ることはとても好きなのですが、作り手としては送り出した曲は余計な説明なく、自由に感じてもらえたらというスタンスでした。

でも、今のような情報過多の世の中において、曲や作品のプロセスをお伝えすることは押しつけがましいものではなく、むしろ大切にするべきことなのかなと改めて思いました。

先のブログで「族」という曲の成り立ちに多くの方々が関心を持っていただいたこともあり、今回はCD “Power and Patience”の1曲目”KAKUMEI”の動機について書いてみようと思います。

2010年の終わり、CNNか何かの深夜ニュース番組をぼーっと観ていたのですが、北アフリカのチュニジアでデモが起きているけれど暴動までにはなっていない様子。

引き続き、ぼーっと観ていたら突然、群衆の中から火の手が上がる映像。でもすぐに鎮静化される様子を対岸の火事のように観ていた私。

それは、「ジャスミン革命」でした。

9.11のこととダブり、気になって音を消して画面を見続けていました。そうしていたら、シュールに頭の中で音が鳴り始めたのです。

情景描写と言っては不謹慎かも知れませんが、曲を作る動機は高い緊張感とリラックスした感覚が混ざり合って生まれてくることが多々あります。

国内外で旅が多い人生。

旅の道中はキーンと張り詰めたものがありますが、移動中の車中や機内はリラックス。なので、移動中の景色は大好物。私の曲作りにおいて気持ち良いリズムと情景描写は欠かせないものです。

けれど、少し斜(はす)に構えるというか、場合によっては皮肉って創作することもあります。

ヨーロッパなどの文化において、その奥行きを作り出している要素は角度を変えることによって見えてくる影だったりします。

話を元に戻しますが、そういう意味でデジタルと向き合った”Power and Patience”は、私のアルバムの中で最も斜に構え、温度も低い作品かもしれません。

創作の動機が対岸の火事と感じていた「ジャスミン革命」。日本とマッチングしなかったのもそこか!?

今年もあと数日。順調にいけば、1月4日から”DON DEN”を皮切りにデジタルでシングル3曲をリリースしていきます。太鼓の曲でシングルって冷静に考えても変だと思いますが、3~4分に集約した音を配信に乗せて世界に放ってみます。

今年、最初で最後の公演となった渋川公演。


2021年の第一弾は、スコーンと明るい"DON DEN"から!


前向いていこう!

ねっ!