日本書紀 巻第二十四
天豊財重日足姫天皇 二十八
・乙巳の変 三
古人大兄の虚
この日、
雨がふり、
潦水(ろうすい)が
庭に溢(あふ)れました。
席の障子で
鞍作(くらつくり)の屍を覆いました。
古人大兄(ふるひとのおおえ)は、
それを見て、
私宮に走り入り、
人に語って、
「韓人(からひと)が鞍作臣を殺した。
(韓の政により、誅(ころ)されたのをいう)
吾は心は痛む」
といいました。
卽ち、
臥内(ねやのうち)入り、
門をとざして出ませんでした。
中大兄(なかのおおえ)は、
卽ち法興寺(ほうこうじ)に入り、
城にするため備えました。
およその諸々の皇子、
諸々の王、
諸々の卿大夫、臣、連、伴造、国造は、
ことごとく皆、
随(つ)き侍(したが)いました。
人を使い、
鞍作臣の屍を大臣蝦夷(えみし)に
賜わせました。
ここにおいて、
漢直(あやのあたい)等は、
眷属(やから)をすべて集め、
甲(よろい)を身につけ、
兵(つわもの)を持ち、
大臣を助け、
まさに軍陣(いくさ)を
設けようとしました。
中大兄は、
将軍の巨勢徳陀臣
(いくさのきみこせのとこだのおみ)
を使いとし、
天地開闢の始まりより、
君と臣が有ることを、
賊党に説かせ、
赴く所を知らせました。
ここにおいて、
高向臣国押(たかむくのおみくにおし)は、
漢直(あやのあたい)等に、
「吾等の君・大郎のせいで、
戮(はずかし)めを被るだろう。
大臣はまた、
今日、明日にでも、
待ち受けるは、
その誅(ほろ)ぼされることが、
はっきりとしている。
然るが、則、
誰のために空しく戦うのか、
ことごとく刑を受けるのか」
といい終えると、
剣を解き弓を投げて、
これを捨てて去りました。
賊徒はまた、
従って散り走りました。
・潦水(ろうすい)
たまり水。にわたずみ
・鞍作(くらつくり)
蘇我入鹿
・臥内(ねやのうち)
寝室
・眷属(やから)
一族
・兵(つわもの)
武器
・軍陣(いくさ)
兵隊
(感想)
前回のお話
(皇極天皇4年6月12日)
この日、
雨がふり、
地上にたまった水が流れ、
庭にあふれました。
席の障子で
蘇我入鹿の屍を覆いました。
古人大兄は、
それを見て、
私宮に走り入り、
人に語って、
「韓人が鞍作臣を殺した。
吾は心は痛む」
といいました。
すぐに、
寝室入り、
門をとざして出ませんでした。
古人大兄は、
舒明天皇の第一皇子。
母は蘇我馬子の娘、
蘇我法提郎女(ほほてのいらつめ)です。
皇極天皇の側で仕えていた
古人大兄。
一部始終を見ていたはずですが、
入鹿臣を殺したのは、
韓人だと証言しています。
入鹿臣は、
古人大兄皇子を
皇極天皇の次期天皇に擁立しようと
望んでいたようですので、
後ろ盾の入鹿臣が、
暗殺されてしまい、
身の危険を感じて
虚言したのではないでしょうか。
中大兄は、
すぐに法興寺に入り、
城にするため備えました。
およその諸々の皇子、
諸々の王、
諸々の卿大夫、臣、連、伴造、国造は、
ことごとく皆、
付き従いました。
人望があったなら、
武力行使せずに事は済んだはずです。
皆が付き従う?
疑問ですね。
(¬_¬)
後からなんとでも言えますよね。
人を使い、
鞍作臣の屍を大臣蝦夷に与えました。
ここにおいて、
漢直らは、
一族をすべて集め、
よろいを身につけ、
武器を持ち、
大臣を助け、
まさに兵隊を設けようとしました。
中大兄は、
将軍の巨勢徳陀臣を使者として、
天地開闢の始まりより、
君と臣の別が有ることを、
賊党に説かせ、
これからどう進むのか、
わからせようとしました。
この時、
高向臣国押は、
漢直らに、
「お前たちの君・入鹿のせいで、
はずかしめを被るだろう。
大臣もまた、
今日、明日にでも、
待ち受けるは、死のみ。
誅殺されることは、
はっきりとしている。
それなのに、
誰のために空しく戦うのか。
ことごとく刑を受けるのか」
といい終えると、
剣を解き弓を投げて、
これを捨てて去りました。
賊徒はまた、
従って散り散りに走り去りました。
本当に説得したのかなぁ?
怪しい…
不意をついて滅ぼしたのでは?
明日に続きます。
読んでいただき
ありがとうございました。
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