日本書紀 巻第十七 男大迹天皇 十八
・物部麁鹿火大連に詔する
秋八月一日、
詔して、
「ああ、大連よ。
この磐井が率(したが)わぬ。
汝が行って征せよ」
といいました。
物部麁鹿火大連
(もののべのあらかびのおおむらじ)は、
再拝して、
「ああ、
磐井は西夷の姧猾(かだましきやつこ)です。
川が阻(さがしき)のをたのみにして、
朝廷に仕えず、
山が崚(たか)いのをたよりに
乱をおこしました。
徳(いきおい)を敗(やぶ)り、
道に反しています。
人をあなどり、
侮辱して、
自らを賢いとしています。
在昔(ざいせき)の
道臣(みちのおみ)から
室屋(むろや)にいたるまで、
帝を助け、
罰してきました。
民が塗炭(くるしき)を救ってきました。
彼此(あれこれ)も一つです。
ただ、
天が賛(たす)ける所は、
臣を常に重きとしているからです。
よく、
恭(うやうやしく)させることが
できぬようでしたら、
伐(う)ちましょう」
といいました。
詔して、
「良将の軍というのは、
恩(めぐみ)を施し、
恵を推しすすめ、
己をおもいはかり、
人を治め、
攻めごとは河がさけるが如く。
戦いことは風が発するが如く」
重ねて詔して、
「大将は民の命を司っている。
社稷(くにいえ)の存亡はここにある。
つとめよ。
つつしみ天罰を行え」
といいました。
天皇はみずから斧鉞(ふえつ)をとり、
大連に授けて、
「長門(ながと)以東は珍が制しよう。
筑紫以西は汝が制せ。
賞罰を専行(せんこう)せよ。
いちいち、奏しなくてもよい」
といいました。
・姧猾(かだましきやつこ)
=かんかつ・心がよこしまで、猾こと。ずるいこと
・在昔(ざいせき)
むかし。往古
・塗炭(くるしき)
=とたん・非常に苦しい境遇
・社稷(くにいえ)
国家
・専行(せんこう)
自分の判断で行う
(感想)
継体天皇21年秋8月1日、
詔して、
「ああ、大連よ。
この磐井が従わぬ。
お前が行って征伐せよ」
といいました。
物部麁鹿火大連は、
再拝して、
「ああ、
磐井は、
西夷の心が邪で、
ずるがしこい者です。
川が阻(はばむ)のをたのみにして、
朝廷に仕えず、
山が高いのをたよりに
乱をおこしました。
道徳を敗(やぶ)り、
道に反しています。
人をあなどり、
侮辱して、
自らを賢いとしています。
昔の道臣(みちのおみ)から
室屋(むろや)にいたるまで、
帝を助け、
反するものを罰してきました。
民の苦しい境遇を救ってきました。
昔も今も一つです。
ただ、
天が助けるということは、
臣を常に重要と思っているからです。
よく、
恭順させることができない時は、
討伐いたしましょう」
といいました。
詔して、
「良将の軍というのは、
恩(めぐみ)を施し、
恵を推しすすめ、
己をおもいはかり、
人を治める。
攻めごとは河がさけるが如く。
戦いことは風が発するが如く」
重ねて詔して、
「大将は民の命を司っている。
国家の存亡はここにある。
つとめよ。
つつしみ天罰を行え」
といいました。
天皇は自ら斧鉞(ふえつ)をとり、
大連に授けて、
「長門(ながと)以東は珍が制しよう。
筑紫以西はお前が制せ。
賞罰を自分で判断せよ。
いちいち、
報告しなくてもよい」
といいました。
磐井、
討伐の命を受けた、
物部麁鹿火大連。
今後は如何に?
明日に続きます。
読んで頂きありがとうございました。
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