日本書紀 巻第二十四
天豊財重日足姫天皇 十五
・逃げのびた山背大兄王
これによりて、
山背大兄王等は、
四、五日間、
山に淹留(えんりゅう)し、
飲食することができませんでした。
三輪文屋君は、
進みでて勧めて、
「請います。
移り、
深草屯倉(ふかくさのみやけ)に
向かいましょう。
ここから馬に乗って、
東国に詣でましょう。
乳部(みぶ)を本にして、
師(いくさ)を興して、
還り戦いましょう。
そうすれば必ず勝つことができます」
といいました。
山背大兄王は答えて、
「卿の述べたようにすれば、
勝つのは必然(ひつぜん)となるだろう。
しかし、
吾の情で冀(こいねが)うは、
十年も百姓を役(いくさ)させたくない。
一身の故をもって、
どうして萬民を
煩勞(はんろう)させられるだろうか。
また後世、
民に、
吾の故により己の父母を喪ったと
言って欲しくない。
どうして、
戰に勝った後、
丈夫(ますらお)と言えるだろうか。
身を損ねて、
国を固くするのもまた
丈夫ではないだろうか」
といいました。
・淹留(えんりゅう)
長く同じ場所にとどまること。 滞留。 滞在
・深草屯倉(ふかくさのみやけ)
山城国紀伊軍深草郷。現在の京都市伏見区
・師(いくさ)
軍
・必然(ひつぜん)
かならずそうなるに違いなく、それ以外にはありえないこと
・煩勞(はんろう)
心をわずらわし、身を疲れさせること。また、その骨折り
・丈夫(ますらお)
一人前の男子のことであり、転じて健康なさまやしっかりしていて壊れないさまをさす
(感想)
前回のお話
(皇極天皇2年11月)
そこで、
山背大兄王らは、
4、5日間、
山に滞留しました。
その間、
飲食することができませんでした。
三輪文屋君は、
進みでて勧めて、
「請います。
移動して、
深草屯倉に向かいましょう。
そこから馬に乗って、
東国にまいりましょう。
上宮の乳部をもとにして、
軍を興し、
再びもどり戦いましょう。
そうすれば
必ず勝つことができます」
といいました。
山背大兄王は答えて、
「卿の述べたようにすれば、
勝つのは必然となるだろう。
しかし、
私の心で請い願うは、
10年も百姓に戦をさせたくない。
私の一身の故で、
どうして、
萬民を心をわずらわし、
身を疲れさせることなど、
できるだろうか。
また、
後世に、
民が私の故により、
自分の父母を亡った
、と言って欲しくない。
どうして、
戦に勝ったとしても、
一人前の男子と言えるだろうか。
身を損ねて、
国を固くするのもまた
一人前の男子ではないだろうか」
といいました。
己の一身上の故で、
民を戦に巻き込みたくない。
、と言う山背大兄王。
美談ですなぁ。
…😑
本当にあったお話ならね。
以前、
蘇我蝦夷臣とのやり取りで、
蝦夷臣が、
山背大兄王に天皇になって欲しくない、
と思っていることを、
山背大兄王
十分に理解していたはず。
民を戦に巻き込みたく無いと言うのなら、
蘇我氏との対立を
事前に解決しておけばよかったはずです。
天皇の位を継ぐ意思はない、
と表現すれば良いだけのこと。
臣下に下る、
仏道に入り出家するなど。
それを全くしていないという事は、
山背大兄王は、
あわよくば、
天皇になりたい。
、と言っているのと同じ事です。
これは、争いは事の種ですよ。
そんな人物が
民の為に争いはしたく無い
って言われてもね。
もう、このお話。
山背大兄王を善に、
蘇我氏を悪に仕立てようという
意図がプンプンします。
あー。
真実はどのような
出来事があったのでしょうか?
真実が知りたい。
明日に続きます。
読んでいただき
ありがとうございました。
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