日本書紀 巻第二十四
天豊財重日足姫天皇 二十九
・乙巳の変 四
蘇我臣蝦夷ら、書物・宝を焼く
・皇極天皇、譲位する
十三日、
蘇我臣蝦夷(そがのおみのえみし)等は、
誅(ほろ)ぼされるに臨んで、
ことごとく
天皇記、国記、珍宝を焼きました。
船史恵尺(ふねのふびとえさか)は、
卽ち疾(はや)く焼かれそうになった
国記(くにつふみ)取り、
中大兄に奉献しました。
この日、
蘇我臣蝦夷及び鞍作(くらつくり)の屍を、
墓に葬ることを許しました。
また哭泣(こっきゅう)を許しました。
ここにおいて、
或る人が第一の謠歌(わざうた)を説いて、
「その歌は所謂(いわゆる)、
『はろはろに
言(こそ)そ聞ゆる
嶋の藪原』
というのは、
これは卽ち、
宮殿を嶋大臣の家に接して起こして、
中大兄が中臣鎌子連と、
密かに大義を図(はかり)、
入鹿を殺そうと
謀(はかりごと)をした
兆(しるし)である」
といいました。
第二の謠歌を説いて、
「その歌は所謂、
『彼方(おちかた)の
浅野の雉(きぎし)
響(とよも)さず
我は寝しかど
人そ響(とよも)す』
というのは、
これ卽ち、
上宮(かみつみや)の王等の性は、
順(すなお)で、
まったく罪が有るということは無いのに、
入鹿のために害された。
報は無いとはいえども、
天が人をして、
誅(う)つ兆しである」
といいました。
第三の謠歌を説いて、
「その歌の所謂は、
『小林(おばやし)に我を引き入れて
姧(せ)し人の
面も知らず
家も知らず』
というのは、
これ卽ち、
入鹿臣が、
忽ち宮中で、
佐伯連子麻呂
(さえきのむらじこまろ)、
稚犬養連網田稚犬養連網田
(わかいぬかいのむらじあみた)ために、
誅(う)たれることの兆しである」
といいました
十四日、
軽皇子(かるのみこ)に位を譲り、
中大兄を立てて、
皇太子としました。
・鞍作(くらつくり)
蘇我入鹿
・哭泣(こっきゅう)
1・声をあげて泣くこと。 泣き叫ぶこと2・親族の死を弔って泣き叫ぶこと
・軽皇子(かるのみこ)
後の孝徳天皇
前回のお話
(感想)
(皇極天皇4年6月)
13日、
蘇我臣蝦夷らは誅殺されるに臨んで、
ことごとく、
天皇記、国記、珍宝を焼きました。
船史恵尺は、
すぐに、
素早く焼かれそうになった
国記を取り、
中大兄に奉献しました。
この日、
蘇我臣蝦夷および蘇我入鹿の屍を、
墓に葬ることを許しました。
また、
死を弔って泣き叫ぶことを許しました。
この時、
ある人が第一の謠歌(わざうた)を説いて、
「その歌に、
『はろはろに 言そ聞ゆる 嶋の藪原』
というのは、
これは、
宮殿を嶋大臣(馬子)の家に接して建てて、
中大兄が中臣鎌子連と、
密かに大義をはかり、
入鹿を殺そうとはかりごとをした
兆しである」
といいました。
第二の謠歌を説いて、
「その歌に、
『彼方の 浅野の雉 響さず
我は寝しかど 人そ響す』
というのは、
これは、
上宮の王らの性格は素直で、
まったく罪が無いのに、
入鹿によって殺害された。
自らは報復はしないとはいえども、
天が人をして、
誅(う)つ兆しである」
といいました。
第三の謠歌を説いて、
「その歌に、
『小林に我を引き入れて
姧し人の 面も知らず 家も知らず』
というのは、
これ卽ち、
入鹿臣が、
たちまち宮中で、
佐伯連子麻呂、
稚犬養連網田稚犬養連網田ために、
誅殺されることの兆しである」
といいました
14日、
軽皇子に位を譲りました。
中大兄を立てて、
皇太子としました。
教科書で、
蘇我臣蝦夷が
天皇記、国記、珍宝を
焼いてしまったと習いました。
その時、
思ったのは、
何てもったいないことをするんだー!
何故蝦夷は、
日本の歴史を葬り去ろうとしたのか?
しかし、
日本書紀で
乙巳の変の前後を読んでから、
今日のお話を読むと、
自らが滅ぼされようとしている時、
先祖の軌跡、
自分たちの軌跡である、
天皇記、国記、珍宝を焼いて
何の意味があるのだろうか?
むしろ
後世に残したい…
、と思うのではないでしょうか?
ですから、
天皇記、国記、珍宝を焼いたのは、
蘇我蝦夷ではないと私は思います。
むしろ、
勝ち残った人物たちにとって
天皇記、国記、珍宝により
真実を暴露されると困る内容が
記載されていたのではないでしょうか?
それを暴露されぬよう、
蝦夷臣と屋敷に火を放ち
滅ぼしてしまったのではないでしょうか?
しかし、
大昔のことですから
真実を知ることはできません。
残念です。
しかし、
武力行使しての改革は
なんとも後味が悪いですね。
中大兄が次の天皇にならなかったのは、
全てを見ていた人々が
彼を否定したからではないでしょうか?
皇極天皇の条、
本日で終了です。
お付き合いいただき
ありがとうございました。
明日から孝徳天皇の条
始まります。
次回もお付き合いいただけたら幸いです。
最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
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