日本書紀 巻第二十六
天豊財重日足姫天皇 12
・伊吉連博徳の書 二
三十日、
天子と相見て問訊(もんじん)して、
「日本国天皇は平安にしているのか」
といいました。
使人は謹み答えて、
「天地が德を合わせて、
自ずと平安を得ています」
といいました。
天子は問い、
「執事の卿等は、健在かどうか」
といいました。
使人は謹み答えて、
「天皇が重く憐(あわ)れむので、
また健在でいられます」
といいました。
天子は問い、
「国内は平か」
といいました。
使人は謹み答えて、
「治めが、天地にかない、
萬民は無事でおります」
といいました。
天子は問い、
「これ等、蝦夷の国はどの方にあるのか」
といいました。
使人は謹み答えて、
「国の東北に有ります」
といいました。
天子は問い、
「蝦夷はいく種あるのか」
といいました。
使人は謹み答えて、
「類は三種有ります。
遠い者は都加留(つかる)と名付け、
次の者は麁蝦夷(あらえみし)と名付け、
近い者を熟蝦夷(にきえみし)と
名付けました。
今、これは熟蝦夷です。
毎年、
本国の朝に入貢しています」
といいました。
天子は問い、
「その国に五穀はあるのか」
といいました。
使人は謹み答えて、
「ありません。
肉を食べて生存しております」
といいました。
天子は問い、
「国に屋舍(やかず)はあるのか」
といいました。
使人は謹み答えて、
「ございません。
深い山の中、樹の本に住んでいます」
といいました。
天子は問い、
「朕は、蝦夷の身や面が異なるのを見て、
極めて、喜び、興をもち怪しく思った。
使人は、
遠くから来て、
辛苦したことであろう。
退き、館裏(むろつみ)に居るがよい。
後にさらに会うとしよう」
といいました。
・問訊(もんじん)
問いたずねること。 聞きただすこと。 訊問
・都加留(つかる)
津軽
(感想)
前回のお話
(斉明天皇5年)
30日、
天子と相見て問いたずねて、
「日本国の天皇は平安にしているのか」
といいました。
使者は謹み答えて、
「天地が徳を合わせて、
自ずと平安を得ています」
といいました。
天子は問い、
「執政の卿らは、健在かどうか」
といいました。
使者は謹み答えて、
「天皇があつくいつくしみ、
卿らもまた健在でいられます」
といいました。
天子は問い、
「国内は平和か」
といいました。
使者は謹み答えて、
「天皇の政治が天地にかない、
萬民は無事でおります」
といいました。
天子は問い、
「これら、蝦夷の国はどの方角にあるのか」
といいました。
使者は謹み答えて、
「国の東北に有ります」
といいました。
天子は問い、
「蝦夷はいく種類あるのか」
といいました。
使者は謹み答えて、
「種類は三種あります。
遠い者は都加留と名付け、
次の者は麁蝦夷と名付け、
近い者を熟蝦夷と名付けました。
今、ここにいる蝦夷は熟蝦夷です。
毎年、
本国の朝廷に入貢しています」
といいました。
天子は問い、
「その国に五穀はあるのか」
といいました。
使者は謹み答えて、
「ありません。
肉を食べて生存しております」
といいました。
天子は問い、
「国に家屋はあるのか」
といいました。
使者は謹み答えて、
「ございません。
深い山の中、
樹の本に住んでいます」
といいました。
天子は問い、
「朕は、蝦夷の身や面が異なるのを見て、
極めて、喜び、興をもち不思議に思った。
使人は遠くから来て、
辛苦したことであろう。
退き、
賓館に居るがよい。
後にさらに会うとしよう」
といいました。
明日に続きます。
読んでいただきありがとうございました、
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