日本書紀 巻第十七 男大迹天皇 十三
・恩勅を奉じ宣べる
・伴跛国、戢支を派遣する
・勾大兄に詔する
冬十一月五日、
朝庭(みかど)において、
百済の姐彌文貴(さみもんき)将軍、
斯羅(しら)の汶得至(もんとくち)、
安羅(あら)の辛已奚(しんいけい)及び
賁巴委佐(ほんはわさ)、
伴跛(はへ)の既殿奚(こでんけい)及び
竹汶至(たけもんち)等を引き列ねて、
恩勅(めぐみ)を奉じ宣べました。
己汶(こもん)、帶沙(たさ)を、
百済国に与えました。
この月、
伴跛国(はへ)が、
戢支(しゅうき)を遣わし、
珍宝を献じて、
己汶の地を乞いました。
しかしけっきょく与えられませんでした。
十二月八日、
詔して、
「朕は天緒(あまつひつぎ)を承けて、
宗廟(くにいえ)を保つようになり、
兢々(きょうきょう)し
業々(ぎょうぎょう)していた。
このごろ、
天下は安静で、
海内(くに)は清平である。
しばし年が豊となり、
しきりに国が豊になった。
よきかな、
麻呂子(まろこ)よ。
朕の心を八方に示すとは。
さかんだなぁ、
勾大兄(まがりのおおえ)よ。
吾の風(のり)を万国にてらすとは。
日本(やまと)はやわらいで、
名は天下をほしいままにしている。
秋津(あきつ)は赫々(かっかく)にして、
その誉は王畿(うちつくに)では重い。
宝とするのは賢であり、
善をなすことを
もっとも楽しみとしている。
聖化(ひじりのおもぶけ)によって
遠くまでさかんとなり。
玄切(はるかなるいたわり)これにより、
長くかかげられている。
まことに、
汝の力にかかっている。
宜しく、
春宮(しゅんぐう)の位にいて、
朕を助け、
仁をほどこしてくれ。
冀う、
吾のかけているところを補ってくれ」
といいました。
・恩勅(めぐみ)
=おんちょく・情けある天皇のおことば
・天緒(あまつひつぎ)
天皇位
・宗廟(くにいえ)
国家
・兢々(きょうきょう)
おそれつつしむさま。びくびくして安心できないさま
・業々(ぎょうぎょう)
1・あやぶみおそれるさま2・さかんなさま。りっぱなさま
・麻呂子(まろこ)
わが子、ここは勾大兄
・赫々(かっかく)
赤々と照り輝くさま。強く光輝くさま。または名声や功績、栄華などが華々しい様子を表す表現
・王畿(うちつくに)
畿内
・春宮(しゅんぐう)
皇太子
(感想)
継体天皇7年冬11月5日、
朝廷において、
百済の姐彌文貴将軍、
新羅の汶得至、
安羅の辛已奚および賁巴委佐、
伴跛の既殿奚および竹汶至等を
引き列ねて、
恩勅を奉じ宣べました。
己汶、滞沙を、
百済国に与えました。
この月、
伴跛国が、
戢支を遣わし、
珍宝を献上して、
己汶の地を乞いました。
しかし結局、
与えられませんでした。
12月8日、
詔して、
「朕は天皇位を承けて、
国家を保つようになり、
畏れ謹み、
危ぶみ怖れている。
このごろ、
天下は安静で、
国は清く平安である。
しばし年穀が豊作となり、
しきりに国が豊になった。
よきかな、
麻呂子よ。
朕の心を八方に示すとは。
さかんだなぁ、
勾大兄よ。
吾の教化を万国に照らすとは。
日本は和らいで、
名は天下をほしいままにしている。
秋津洲は赤々と照り輝き、
その栄誉は畿内では重い。
宝とするのは賢であり、
善を成すことを
もっとも楽しみとしている。
帝王の徳化により、
遠くまで盛んとなり。
遥かなる労りにより、
長くかかげられている。
まことに、
汝の力にかかっている。
宜しく、
春宮の位にいて、
朕を助け、
仁をほどこし、
冀う、
吾の欠けているところを補ってくれ」
といいました。
明日に続きます。
読んで頂き
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