ふと思い出したように
夜の海が見たくなった。
最近の私は、
運動らしい運動もしていないので
散歩がてら海まで歩いて行った。
遠くの工場夜景
潮の香りと波の音だけしか聞こえない海
防波堤に座って
それらを眺めていた
なのに
目の前に見えるもの
肌で感じるもの
香りや音さえ消えてしまって
私の頭の中に見えたのは
台風が去った後の街
駅ビルの中、角のカフェ
慌ただしく行き交う人々
窓から見えたあの景色
海を見に来たのに
見たのは、あの情景
あの日
美味しいはずの料理の味さえ
私は覚えていない
覚えているのは
あの街の横顔だけ