北海道十勝を開拓した「晩成社」。実話をもとにしたフィクションということで読んでみました。オベリベリとは帯広のこと。(アイヌの言葉で)。
乃南アサさんの長編の本を読むのは初めてです。
帯広「六花亭」名物マルセイバターサンドのレトロな包装にプリントされている「成」は、晩成社製バターの「成」マーク入りラベルを復刻したものだそうです。
この晩成社を率いた依田勉三、渡辺勝、鈴木銃太郎ら三人のリーダーと、鈴木の妹で渡辺の妻となったカネの視点で描いた大長編小説。
図書館で受け取って衝撃。こんなに分厚い本なのかー!
でも、文字もそれほど小さくなくて、想像したよりは読み難さもなく、すいすいと読めました。
★以下ネタバレで書いています★
うーん、、、でも、しかし、、
主人公の女性カネは、学もあってキリスト教徒で信心深く、とても出来た立派な人なのですが、苦労続きで、そのまま終わっているのですよ・・・。
これだけ分厚い本を長時間、何日にも渡って読んで、やったー!とか嬉しい気持ちになるラストが待ってるとかじゃなかったので、重い気持ちになってしまいました。
殆どがカネさんや、開拓民の苦悩や大変さをつづっている本なのですよ・・・
寒さ等過酷な自然環境、バッタの襲撃、霜や冷害や洪水、マラリア、仲間割れ、、、、
それでもアイヌの人達との交流とか、最後の方でふとやってくる外国人の男性とカネが英語で会話出来て心弾むなど(思えばここがハイライト?)ところどころ温かい気持ちになるシーンもあるのですけれども・・・
読み終わってから、さて実際のカネや3人の男性はどんな人だったのか?を調べてみて、
まず夫の勝。
これで身長も高かったそうだし、結構ルックスが良い男だったんだろうな・・・ カネが最初に会って良い印象を持ったのも、まあわからんでもないか・・。
でも、この夫、酒飲みが酷いですよね・・・。長くカネと暮らして行く内に、なんだかなあ・・・な感じになっていったし・・・。
その後のカネと勝の人生を読みましたが、結局ずっと苦労続きだったそうで、でもご本人は達観されているというか・・・寛容というか、いつでも腰が低く愛情に満ちた立派なお人柄だったようです。
小説では2人子供を産んだ後位で終わっていますが、結局トータル6人子供を産み、そのうち2人の男の子を自分より先に亡くしているそうです。
カネ夫婦は小説の後、勝がこの場所に見切りをつけて、別の場所に家族でお引越しし、そこで酪農をしたりして、勝は役場等で地位のある立場になったりしたものの、入って来るお金よりも出て行くお金の方がずっと多く生活は困窮していて・・カネは苦労続き。
勝が亡くなった後、長女についてカネは北見とか東京とかに引越しされたりもしたそうですが、最後は孫や子供に囲まれて穏やかに亡くなったそうです。
カネは我慢強く、体が丈夫だった。(北海道に行く前に父親から「小さい時から風邪一つ引かず元気」と言われていたが、ほんとにそういうたぐいまれな体をお持ちだったからから、やり遂げられたのかも。信心深さだけでは、やり遂げられなかったかも。)
でもなあー、勝と結婚せず、別の人と結婚したほうが幸せに暮らせたのでは?と、ちょっと思っちゃったなあ・・・。
依田勉三ってリーダーさん、うーん、、、実際にコミュニケーションが上手に取れなかったらしいとのことですが、少々問題有り。小説以後も色々な事に手を出しては失敗を繰り返した人生だったそう。彼の妻が可哀想だった。その後彼女とは離婚したそうで、別の女性と再婚したものの、先にその女性が亡くなって、晩年は淋しいものだったらしい。
鈴木銃太郎。カネの兄貴。良い人よね。アイヌの女性と結婚しました。
そうそう、帯広の中島公園というところに依田勉三の銅像が立ってるそうなのですが、それを建てたのが中島みゆきさんの祖父だそうです。へえー!
チーム・オベリベリ 乃南アサ 2020/7/2
内容(「BOOK」データベースより)
約140年前、その女性は、北海道十勝の原野へ渡った。オベリベリ―和人たちによって「帯広」とされた新天地。明治の先進教育を受けた彼女は、いかに生き抜こうとしたのか。開拓に身を投じた実在の若者たちを基にした、著者が初めて挑む長篇リアル・フィクション
私の大叔父が移民したのは自作農が定着し始めた頃なのですが、それでもまだまだ大変だったようです。奥さんからの送られてきた手紙が残っているのですが
「こちらはまことに便利の悪いところであります。病気したとて医者もなし、とんでもない田舎です。食べ物と言えば米は唐米(外米)、おかずは野菜に豆。これより他には何にも無し。茶と言えば白湯です。実に情けない所です。」
「私等はまことに淋しい山奥で真っ黒になって、夜とも昼とも思わずに一生懸命に働いて居ります。家の周りは山に巻かれております。その山には恐ろしいケダモノ(ピューマらしい)がおりますで、夜は山のねと(根元)には行かれません。鹿などは沢山居ります。こちらでは、こんな所で慣れねば金は残りません。私はつるよ(娘3歳)を連れて食わして貰い、半人前で働いておりますで、ご安心下され」
といった状態だったようです。ちなみにこの奥さん、30歳半ばで小さな三人の娘を残して亡くなってます。
昨年、色々調べた結果、その人達の子孫が見つかり、交流が始まりました。今は皆さんお元気そうで、特にブラジルの一族は(国民性か)家族間のつながりが強いようで、しょっちゅう集まっている様子です。
latifaさんの感想で、ついつい思い起こして長文の書き込みになってしまいました。ご容赦を。
貴重なお話、聞かせて下さってありがとうございました。
大変な苦労をされた親類の方がいらっしゃるのですね・・・。
とても興味深いお話で、私だけが聞くのは、勿体ない気がしました。
todo23さんが、これらを小説にしてみたらいかがかしら・・・。
実話で、その子孫の方もご存命で、繋がりがあるなんて、凄い事ですよ。
そうそう、マラリアですがこの本でも大変苦労されていて、書き漏れしていたので、追加しました。勝手にマラリアって南国だけだと思ってたのに北海道でもいたのかーというのが驚きでした。
こうした事を知ったのは昨年ですが、私が中学生の頃に祖父の米寿の祝いに一時帰国したこの大叔母と同じ写真に収まっているのです。しかし全く記憶に無く。もし知って居たら、もっと話を聞けたのかもしれません。
他にも調べたことは色々あって、兄や甥姪たちにシェアしているのですが、皆から一冊にまとめる様に言われています。小説のようなものでは無くドキュメントとしてですが。これは今もコツコツ続けています。
一方で米国やブラジルに移民した大叔父・大叔母の子孫を探り当てて連絡を取り、最終的には日・米・ブラジルで40人を超えるFaceBook-Groupを組みました。昨年は随分投稿が有りましたが、今は一段落したところです。こちらもなかなか面白かったですよ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E4%BA%BA
詳細
http://blog.livedoor.jp/todo_23/archives/52301418.html
いやあー 凄いですね・・。ありきたりですが、そんな言葉しか見つからず・・・。
大変な苦労をされたご親戚の方、こうやって写真が残っていて、その後何十年も経て子孫の方々がつながったなんて、NHKで特集してもらいたい位のお話ですよ!
素晴らしいですね。良いお話を聞かせて頂いてありがとうございました。
乃南さん、久しぶりに読みたくなりました。でも、これはパスかなぁ('_')
オリンピックで「恋せぬふたり」の放送がなくてつまらないです。
オリンピックこにさんは見てますか?
なんかメダルとか・・日本や応援を背負って・・とか、選手が可哀想過ぎる。
なんで謝らなくちゃならないのか・・・気の毒過ぎるわー。
で、これ。
これ、凄く長くて大変な割に、読み終えた後の後味が良くないのよ・・・
私は道産子だから読んだけど、、、、
そうなのー。恋せぬふたり、放送無いのよね、私もガッカリしてるところです。
そちらは雪ですか?
偶然、六花亭のマルセイ・バターサンドを食べたところでこれを読んだので、へーとうなっていました。
中島公園という名称も中島みゆきさんの「中島」と関係ありそうですね。
私の住んでいるところは、雪は降らなかったみたいです。都内よりは若干温かいみたいで。
マルセイバターサンド、食べているところだったんですね。いいなあー。私の大好物です。
中島公園と中島さんの繋がり、私も気になりましたが、そこは深く調べずじまいになっちゃいました。
でもあの厚さに怯んだ私。
latifaさん、凄いなあ!
コメントありがとうございます。
これ、分厚さに驚きますよね・・・
私は実物を見ずにネットで図書館にリクエストしたので、届いた本を見て衝撃・・。
でも、せっかく順番回って来たし、取りに来たし・・と、持って帰りました。
しずくさんは、乃南アサさんお好きなんですね。
私は、ほぼお初だったのです。他も読んでみようかなー