寺院の境内に植えられているのを見かけることもあるチャノキ(茶の木)ですが、相国寺の境内でも生け垣として植えられているチャノキの花が咲き始め、ミツバチが花粉集めに勤しんでいました。アリもたかっていましたが花蜜を求めてのことでしょうか。
チャノキはツバキ(椿)の仲間ですが、同じツバキの仲間であるサザンカ(山茶花)よりも少し早く咲き始め、昨年の花が結実して1年ほどかけて成長した蒴果も花と一緒に観賞することができます。
受粉の状況によって真ん丸だったりしますが、たいていは実の中に3つの種子が入っているため、三角形というか角が尖っていないルーローの三角形のようなかたちをしています。
種子が硬いのでなかなか割りにくいのですが、カッターの刃先を突き刺して、横割りで強引に2つに分けたのがこちら。
このかたち、どこかで見覚えがないですか。はるか昔、社会(地理)の地図記号で見た記憶はないでしょうか。じつは、これが茶畑の地図記号の由来です。国土交通省の国土地理院のホームページのキッズページにある地図記号一覧の茶畑でも説明されていますよ。
小学校でも、こういったものを教材に利用すれば、社会だけでなく理科など複数の教科を横断して学習できるのかなと思ったりします。実際の教育現場ではそんな簡単なことではないのかもしれませんが……
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なお、よく似た、と言うか、かたちは全く同じの記号に「史跡・名勝・天然記念物」がありますが、大きさが違うそうです。茶畑のほうが小さくて畑のある場所に点在して記載されているのに対し、史跡・名勝・天然記念物のほうは記号がひとつで、史跡等の名称が併記されていることが多いので、たとえば伊勢茶で知られる日本の茶所のひとつの三重県の地図でも、この倍率では茶畑の記載はないのですが、このように……
新詳高等社会科地図 四訂版104頁より(帝国書院編集部編、平成2年3月25日発行)
四半世紀以上も前に高校の授業で使っていた地図帳が役立つとは……というのはさておき、この「二見浦」のように地図記号に名称を表記して名勝であることを示しています。ちなみに伊勢茶で知られる三重県は、昨年2021(令和3)年の荒茶生産量の都道府県別内訳(主産県のみ/埼玉県、静岡県、三重県、京都府、福岡県、熊本県、宮崎県、鹿児島県)の資料によると全国第3位になるそうで、主産県のみの集計ではありますが、全国トップ5は以下のとおりです。
順位 都道府県 生産量(t) 主な銘茶
1位 静岡県 29,700 静岡茶
2位 鹿児島県 26,500 かごしま茶
3位 三重県 5,360 伊勢茶
4位 宮崎県 3,050 宮崎茶
5位 京都府 2,450 宇治茶
合計 70,700
京都府が1位でないことは知っていましたし、静岡県が1位なのはともかく、2位に鹿児島県、4位に宮崎県と九州勢が入っているのに、ちょっとびっくり。九州の方なら周知の事実なのかもしれませんが、九州の茶所(銘茶)で思い浮かぶのは福岡県の「福岡の八女茶」や佐賀県の「嬉野茶」だったので、勉強になりました。
ちょっと調べてみたら、一番茶に関して今年の統計データもありました。令和4年産の一番茶生産量の都道府県別内訳(主産県のみ/埼玉県、静岡県、三重県、京都府、鹿児島県)によると…
順位 都道府県 生産量(t)
1位 静岡県 10,500
2位 鹿児島県 8,140
3位 三重県 2,370
4位 京都府 1,160
5位 埼玉県 418
合計 22,600
荒茶だろうと一番茶だろうと、静岡県、鹿児島県、三重県は不動の順位で、順番も変わらずなのですね。日に日に肌寒く感じる季節となってきましたが、そろそろ温かい緑茶がおいしく感じられる時期でもありますね。緑茶を飲んで、茶カテキンで風邪対策もよいかもしれません。