そうだ京都でお坊さんになろう

お坊さんになるまでの道のりを書いていきます。

お坊さんになるために初めてお寺の催し物に参加したときの話

2023-02-14 18:14:24 | 日記
(どうしよう……さっぱりわからない。帰りたい。)

延々と続く読経の中、僕はその場所に来たことを大いに後悔していた。
暖房が効いた部屋の中、まるで一人だけ極寒の地にいるように僕の心と身体は冷え切っていた。

(これは……いつになったら終わるのだろうか。
そう思いながらただ一点を見つめていると、僕の順番が回ってきたようで前の人に「どうぞ」と目で合図をされた。

(どうぞ……と言われてもなぁ……。)
と思いながらも次の人もその次の人も順番を待っているので行かないわけにはいかない。僕はロボットのようなぎこちない動きで椅子から立ち上がり、前の人の見様見真似でお焼香を済ませた。そしてペコリと周囲に一礼をして逃げるように席にもどった。

話は2ヶ月ほど前に遡る。

お坊さんになる学校に通うためにはどこかのお寺に所属した後、所属元の住職から許可を貰わないと入学出来ない決まりがあると知った僕は、早速近所のお寺に行きお寺に所属したい(門徒になりたい)と住職にお話をした。

するとまずは色々な事を知るためにお寺の催し物に参加してみてはどうかと提案をされたので僕は二つ返事で参加を承諾した。

そしてその日がやってきた。

その日は『元旦会』(がんたんえ)というお正月の催し物でお寺に皆で集まって新しい年を祝い、簡単な近況報告などをする集まりと聞いていた。

買ったばかりの新しい数珠を手にとりあえず参加してみようという軽い気持ちのもとお寺の本堂の襖を開けた。

何十という目が一斉に僕を見ていた。

会釈はしたはよいもののここでは完全な新参者だ。しかも皆僕より20……いや30才は年上にみえる。平均年齢70歳といったところだろうか。そんな中にいきなり見慣れない若造が入ってきたのだ。皆不審に思わないわけがない。

人見知りであまり大勢の集まる場所には極力行かないようにしている僕はこの時点で早くも帰りたくなった。

空いている席を見つけて座っては見たものの、(もしかして誰かの指定席に知らないで座っていたらどうしよう……)と妙な不安に襲われたが、幸いそれは杞憂に終わった。

その後も何人かあとから人がやって来て僕の周りでは知り合い同士が話をしている。

孤立無援。

久々にそんな気持ちになった。

居心地の悪さに耐えていると、

「カーン、カーン……カンカンカンカン」

と鐘のなる音がして、奥の襖から住職が入ってきた。

初めてお会いしたときのカジュアルな服装から打って変わってその日は立派な袈裟を纏い、若いながらも風格を漂わせていた。

(いずれこうなる日が本当にくるのだろうか……。)

と、思っていると住職は皆に新年の挨拶をして、元旦会のスケジュールを簡単に説明してくれた。

本堂の真ん中におられる阿弥陀様に深々と礼をした住職は続いてお経本を開いてなにやら聴いた事のないお経を読み上げ始めた。

帰命無量寿如来 南無不可思議光 〜
(きみょうむりょうじゅにょらい なむふかしぎこう)

これは浄土真宗の『正信偈(しょうしんげ)』とよばれるお経だそうで、住職のあとに続いて他の門徒の皆さんも同じように唱えていた。
かくいう僕はお経本はお借りしたもののお経の意味も、読み方も、さらには節すらも全く分からずまるで金魚のように口だけをぱくぱくさせていかにも「唱えてますよ」といった顔をしてひたすら終わるのを願っていた。

このときばかりはマスクをしていて本当に良かったと心からマスクに感謝した。

永遠と続くと思われた正信偈も終わり、住職から今年に開かれるその他催し物の説明、そして皆の近況報告へと元旦会は続いていった。

門徒代表という白髪の男性の挨拶を皮切りに、門徒の方々が各々自己紹介と近況報告をして、いよいよ僕の番が回ってきた。

「はじめてこの場にこさせて頂きました。この度、ご縁を頂き新しく門徒となりました〇〇と申します。ご覧の通りの若輩者でござざいます。ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします」

なんとか挨拶が終わると、隣の席の御婦人から

「おいくつ?」

と聞かれた。

「はい、今年で47歳です」

「若い!」
「若いねえ……」

と周囲から声が飛んできた。
まぁ70歳、80歳の方々からみれば47歳なんてまだまだ子供のようなものなのだろう。

「私ら来年の元旦会はもういないかもしれないから住職を助けてあげてね」

と先程の御婦人がそう言うと、わっと笑い声に変わった。事実かもしれないが流石にこれは素直に笑うわけにもいかないので困ったような顔してその場をやりすごした。

「本日はありがとうございました」

元旦会が終わり帰り支度をしている僕に住職が声をかけてくれた。

「こちらこそお誘いありがとうございました」

「どうでした?」

「いやぁ……もう緊張して何が何だか。次回はもっと勉強して参ります」

「私も初めはそうでした。特に若いので必死でした」

「そうでしたか。今日は全然そうは見えませんでしたよ」

「ありがとうございます」

「しかし正信偈……長くて覚えるのが大変そうです」

「一応、お経本はあるので読みながらですが、何度も唱えていると自然と覚えてしまいますよ」

「はい、頑張ります」

「是非。あ、正信偈以外にもお経は沢山あるので、他のお経も別の機会に唱えますね」

「は、はい……」

(え?他にもお経は沢山あるの?それ覚えるの?間違えないように今日みたいに節とかも覚えるの?え、えーっ!)

期待よりも不安に襲われながら頂いたお土産のお節を抱えた僕はお坊さんになりたいなんて思ったことをかなり後悔しはじめていた。

本当にお坊さんになれるのだろうか……。

おわり

次回は「いよいよ住職にお坊さんになりたいと言ってみた」を書く予定です。

引き続きよろしくお願いします。

南無阿弥陀仏

















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