かれこれサザンとミスチルのライブを20年ほど、ほとんど欠かさず行っている。
サザンが常に最上級のエンタテインメントを見せてくれるのに対し、
ミスチルは常に進化し続ける姿を見せる。だから、両者とも飽きることがない。
昨年ミスチルはデビュー以来共に歩んできた小林武史から離れ、デビューから20年以上を経て初めて、メンバー4人だけでのセルフプロデュースという新たな地平に歩みだした。既に国民的バンドとしての地位を確立し、40代後半に差し掛かってのチャレンジ。現状に甘んじず、常に新鮮な気持ちで音楽に向き合い、進化を止めないバンドでありたい―彼らのそんな気持ちが大きな決断となったのだろう。その最初の仕掛けとして、アルバム発売前にツアーを行うという前代未聞の試みを行ったのが前回のアリーナツアー「REFLECTION」。初めて聴く音楽への高揚を皆で共有するという体験は、メンバーのみならずファンにとっても鮮烈であった。
そして、アルバム「REFLECTION」の発売後の開催となったのが今回のドームツアー「未完」。
そのタイトル通り、おそらく彼ら4人で考えたのであろう選曲や演出からは、不安や憂いを抱えながらも新たなステージに進もう…という強いメッセージが、いつも以上に強く打ち出された内容になっていたと思う。
以下、ネタバレを含めて振り返ろう。
■「未完」「擬態」「ニシエヒガシエ」「光の射す方へ」
前回のツアーの最終曲「未完」からスタート。以下、3曲で一気に盛り上げる。この3曲に共通するのは、POPでありながら陰も携えていること。その辺りが過去曲でありながらアルバム「REFRECTAION」の世界観にも合致していたと感じた。
■「CHILDREN'S WORLD」
最近のツアーでは、こうしたレア曲を披露するサービス精神も忘れない。デビュー時以来披露されてこなかった初期の初々しい楽曲が笑顔と共に奏でられた。
彼らの活動の変遷を大きく分けるなら4期に分かれると思う。この曲に代表されるデビューから3枚のアルバムの「初期」。この頃は甘酸っぱい恋と青春がテーマだ。そしてイノセントワールドでのブレイク以降、ミスチル現象と言われた「2期」。小林武史との強力タッグによる超POPなメロディーと、桜井の葛藤やプライベートがリアルに表れた歌詞が万人の共感を呼んだ。その後、離婚再婚、小脳梗塞とバンドとしての活動休止などを経た「3期」。この時期には身近な中の小さな喜びや愛が歌われるようになっていった。そして今、彼らは「第4期」に差し掛かったと言っていい。つい数年前のインタビューでは桜井和寿は、「もう歌詞として歌いたい事はなくなった。純粋に音楽を楽しむことの方に興味がある」という気になる発言をしている。改めて音楽を奏でる喜びや音楽的挑戦をそのものを楽しみながら、人生と社会へのエールを届けていく・・・そんな新たなステージに、彼らの力で踏み出したのではないだろうか。
■「忘れ得ぬ人」~MC~「and I Love you」「タガタメ」
数曲のニューアルバムからの楽曲のあと、センターステージに移ってのこのパートが、個人的には涙無くして見れなかった。「忘れ得ぬ人」を聴きながら嫌がおうにもミスチルを共に聴いて過ごした人のことを思い出す。そこで語られたMC―子どもの屍を抱いた母親が神様にどうか生き返らせてくれと神に頼むと、神は誰も失っていない人の家からケシの実を貰ってくるよう伝える。しかし、世の中に誰も失わずに生きている人なんていないのだ。それを悟った母親に神は言う。「失ったままで愛しなさい」と―。そして、最後に一緒に行ったライブで聴いた「and I Love you」。この時勢に強い意味を持つ「タガタメ」。「愛とは想像力なんじゃないか」と思ったと語った桜井の言葉が重く突き刺さった3曲だった(この時、ドラムのJenのTシャツに“IMAGINE”と書かれてるのに気付いて嬉しくなった)
■「ALIVE」
全ての楽曲について書くことは割愛するが、後半でハイライトと言える重要な意味を持ったのがこの曲だろう。桜井がまっすぐに歩き続けながら歌っているかのような映像演出で見せたこの曲では、彼の未来を見据えるような強い眼差しが印象的だった。
初期から多くの変遷を得ている彼らの楽曲だが、“あの頃の楽曲”を今聴くと不思議と違った意味を持って改めて心に響く…というマジックが彼らの楽曲にはよくある。この曲にまさに、彼らの今の心境と我々へのメッセージが詰まっていたのではないかと思う。
■アンコール
終盤やアンコールで前述の「2期」にあたるような名曲の数々が惜しげもなく披露される…というのが最近のツアーでの傾向となってきている。今回も、初めてミスチルのライブを見る人にも嬉しい楽曲の数々が待っている。「未完」に近い意味をこれまでも言葉を変えて言ってきた楽曲があったかと・・・(ヒントになったでしょうか)。しかし、ここでもちゃんと「未完」という今回の趣旨に沿って選曲されていたのが素晴らしかったと思う。
Mr.Childrenというバンド名さながらに、大人と子供の間を行き来しながら、常に進化を止めない彼ら。その「第4章」の始まりの瞬間に立ち会ったようなライブは、それを目にした我々にも、大きな一歩を踏み出す勇気と力を与えてくれたのではないかと思う。
サザンが常に最上級のエンタテインメントを見せてくれるのに対し、
ミスチルは常に進化し続ける姿を見せる。だから、両者とも飽きることがない。
昨年ミスチルはデビュー以来共に歩んできた小林武史から離れ、デビューから20年以上を経て初めて、メンバー4人だけでのセルフプロデュースという新たな地平に歩みだした。既に国民的バンドとしての地位を確立し、40代後半に差し掛かってのチャレンジ。現状に甘んじず、常に新鮮な気持ちで音楽に向き合い、進化を止めないバンドでありたい―彼らのそんな気持ちが大きな決断となったのだろう。その最初の仕掛けとして、アルバム発売前にツアーを行うという前代未聞の試みを行ったのが前回のアリーナツアー「REFLECTION」。初めて聴く音楽への高揚を皆で共有するという体験は、メンバーのみならずファンにとっても鮮烈であった。
そして、アルバム「REFLECTION」の発売後の開催となったのが今回のドームツアー「未完」。
そのタイトル通り、おそらく彼ら4人で考えたのであろう選曲や演出からは、不安や憂いを抱えながらも新たなステージに進もう…という強いメッセージが、いつも以上に強く打ち出された内容になっていたと思う。
以下、ネタバレを含めて振り返ろう。
■「未完」「擬態」「ニシエヒガシエ」「光の射す方へ」
前回のツアーの最終曲「未完」からスタート。以下、3曲で一気に盛り上げる。この3曲に共通するのは、POPでありながら陰も携えていること。その辺りが過去曲でありながらアルバム「REFRECTAION」の世界観にも合致していたと感じた。
■「CHILDREN'S WORLD」
最近のツアーでは、こうしたレア曲を披露するサービス精神も忘れない。デビュー時以来披露されてこなかった初期の初々しい楽曲が笑顔と共に奏でられた。
彼らの活動の変遷を大きく分けるなら4期に分かれると思う。この曲に代表されるデビューから3枚のアルバムの「初期」。この頃は甘酸っぱい恋と青春がテーマだ。そしてイノセントワールドでのブレイク以降、ミスチル現象と言われた「2期」。小林武史との強力タッグによる超POPなメロディーと、桜井の葛藤やプライベートがリアルに表れた歌詞が万人の共感を呼んだ。その後、離婚再婚、小脳梗塞とバンドとしての活動休止などを経た「3期」。この時期には身近な中の小さな喜びや愛が歌われるようになっていった。そして今、彼らは「第4期」に差し掛かったと言っていい。つい数年前のインタビューでは桜井和寿は、「もう歌詞として歌いたい事はなくなった。純粋に音楽を楽しむことの方に興味がある」という気になる発言をしている。改めて音楽を奏でる喜びや音楽的挑戦をそのものを楽しみながら、人生と社会へのエールを届けていく・・・そんな新たなステージに、彼らの力で踏み出したのではないだろうか。
■「忘れ得ぬ人」~MC~「and I Love you」「タガタメ」
数曲のニューアルバムからの楽曲のあと、センターステージに移ってのこのパートが、個人的には涙無くして見れなかった。「忘れ得ぬ人」を聴きながら嫌がおうにもミスチルを共に聴いて過ごした人のことを思い出す。そこで語られたMC―子どもの屍を抱いた母親が神様にどうか生き返らせてくれと神に頼むと、神は誰も失っていない人の家からケシの実を貰ってくるよう伝える。しかし、世の中に誰も失わずに生きている人なんていないのだ。それを悟った母親に神は言う。「失ったままで愛しなさい」と―。そして、最後に一緒に行ったライブで聴いた「and I Love you」。この時勢に強い意味を持つ「タガタメ」。「愛とは想像力なんじゃないか」と思ったと語った桜井の言葉が重く突き刺さった3曲だった(この時、ドラムのJenのTシャツに“IMAGINE”と書かれてるのに気付いて嬉しくなった)
■「ALIVE」
全ての楽曲について書くことは割愛するが、後半でハイライトと言える重要な意味を持ったのがこの曲だろう。桜井がまっすぐに歩き続けながら歌っているかのような映像演出で見せたこの曲では、彼の未来を見据えるような強い眼差しが印象的だった。
初期から多くの変遷を得ている彼らの楽曲だが、“あの頃の楽曲”を今聴くと不思議と違った意味を持って改めて心に響く…というマジックが彼らの楽曲にはよくある。この曲にまさに、彼らの今の心境と我々へのメッセージが詰まっていたのではないかと思う。
■アンコール
終盤やアンコールで前述の「2期」にあたるような名曲の数々が惜しげもなく披露される…というのが最近のツアーでの傾向となってきている。今回も、初めてミスチルのライブを見る人にも嬉しい楽曲の数々が待っている。「未完」に近い意味をこれまでも言葉を変えて言ってきた楽曲があったかと・・・(ヒントになったでしょうか)。しかし、ここでもちゃんと「未完」という今回の趣旨に沿って選曲されていたのが素晴らしかったと思う。
Mr.Childrenというバンド名さながらに、大人と子供の間を行き来しながら、常に進化を止めない彼ら。その「第4章」の始まりの瞬間に立ち会ったようなライブは、それを目にした我々にも、大きな一歩を踏み出す勇気と力を与えてくれたのではないかと思う。