「苦役列車」を観た。
原作者から不評で興行的にもコケてるらしいこの作品。
自分が観た回も、まあまあ大きい会場に30人未満。実に閑散としていた。
が、原作の比較は抜きにして映画としては全然、イケてる作品だった。
森山未来がキモクて嫌われそうな難しい役どころに好感が持てるような演技をしていて良かった。
きちんと役作りしたのか元来の性分か知らんが、前者だとしたらメシの食い方まで人間性を統一しているのは凄い事だ。
また、“下衆感”が取って付けた感じがしなかったので、それも良かった。覗き部屋で元カノにバッタリ出くわしても充分フェラサービスをお願いしてきそうな人間性に見える説得力があった。
前田敦子も悪くなかったと思う。
適度な地味感とそこそこなカワイイ感が、「パッとしないガード下の古書店のマドンナ」像にピタリ。トックリセーターとかローゲージなニットが似合う。
前田敦子に大方予想していた芝居は、高良健吾の彼女役の子の芝居だったのだが、案外アイドル感を無しで出ていたし、2012年の20台前半トップアイドルの基準としては大分エログロに寛容だったかと思う。
独立して「女優」と言う肩書を得る彼女のタイミングに、この作品がに上手い事乗っかれたからこそ寝たきりジジイの放尿補助や変態男の舌舐プレイの餌食や下着スケスケ海水浴もOK出た可能性もあるが、まあ山下監督としては望む望まないは別にして機会に恵まれて少し面倒なハードル越えの手間が省けたのでは無いか?
しかしながら、そもそも前田敦子出演と芥川賞作品、しかも原作者は今テレビタレントとして旬な状態なだけに、上映館が大き過ぎる。
故に大コケしている。
また、原作者が望む作風がもっとメジャー志向な作風だとしたら、山下テイストに仕上がったこの作品はキツイかもしれない。
いつも通り美しくなく、何処と無く退廃的なニオイが強い。だから、全体の雰囲気がストーリーとマッチしていて良い作品にはなっていた。
山下監督の作品は小じんまりとユーロスペース辺りで上映してくれれば良いのに。
テレビドラマの延長線上で観に来る人に山下敦弘作品は地味過ぎるし、ドライ過ぎる気がする。
とにかく世間的に捉えられている程に作品は駄目でないし、演者も悪くない。「ヘルタースケルター」何かよりは評価されるべきだ。
ただ、立つべき壇上は違ったような気はする。
港の荷役の悶々とした日々の話を“国民的”基準で評価するのはヒドイ・・・