新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

“文学少女”見習いシリーズ

2012年07月19日 | 読書
 「心葉先輩! 大発見です~~~~~~! ジョバンニとカンパネルラはホモだったんです!」(「“文学少女”見習いの、発見」野村美月)

 「ホモ」という言い方には傷つく人もいるから、注意が必要だ。しかし、ひよこ頭の菜乃ちゃんを責めないでほしい。後からお父さん(!)がよく言い聞かせておきます。

 しかしジョバンニとカンパネルラ、あの二人が精神的ゲイセクシャルというのは、ありえなくはない。いや、十分ありうる。太宰治もいうように、青少年期の友情は、要するに純粋ごっこだ。古代ギリシア起源のプラトニックラブは、もともとボーイズラブのことなのである。

 しかし“文学少女”見習い・日坂菜乃ちゃんがいいたいのは、GoogleやWikipediaですぐわかる、そんなつまらないことではない。星の子幼稚園時代に見たアニメ映画と違う?! 『銀河鉄道の夜』はニャンコ星人の話じゃなかったの? 原作には、髭がひくひく動く描写も、尻尾がぴんと立つ描写もない(当然だ!)。え、人類だったの?!

 で、「ホモ○○○○○」といいたい。しかし菜乃ちゃんボケまくり。○○○○○が思いつかない。「ホモサーモン」というナイスボケに、「ホモサピエンス!」と、クールを装っていた心葉先輩もついにマジ切れ。このツッコミに返すボケが、なんともいえない。

 「そうです! ……そのホモサピーです! “文学少女”っぽく、賢そうに学名を使用してみました」

 その後も迷走する菜乃ちゃんの「銀河鉄道の夜」論。しかし何気ない感想が、遠子先輩を失った心葉の傷を、クリティカルヒットしてしまう。

 こうして思えば、菜乃ちゃんには、何度も心葉を陥落するチャンスはあったんだよなあ。

 「おたくは、口数を半分に減らしたほうが、恋愛的に有効なんじゃない?」

 と、麻貴先輩に助言されてしまうのも、もっともだ。

 菜乃はその助言に喜びながら、すぐにこう返している。

 「でも、ダメです。……心葉先輩が寂しいより、わたしが心葉先輩に怒られるほうがずぅぅぅっとマシです」

 そんな彼女が、今にも泣き出しそうに見える初恋にして最愛の先輩を、どうしてほっておけるだろうか。彼女は女の子の一番大切なものもかなぐり捨てる。

 「かっ、カバの物まねしますっ!」

 こんなヒロイン見たことない!

 こんな彼女だからこそ、カンパネルラがジョバンニに本当に伝えたかった言葉にたどり着ける。「“文学少女”見習いの、発見」はわずか26ページの小品ながら、腹の底から笑わせ、心から泣かせてくれた。こんな作品読んだことがない。

 で、菜乃ちゃんは1989年の3月生まれなんだよね。早生まれだが、菜の花のきれいな頃に生まれたのだ。(突然、なんや?)

 「今どき、メロンぐらいでつられる、平成生まれの女子がいるとは思わなかったわ」

 という麻貴先輩の言葉からも、1989年以降の生まれであることは確定。あえてこういう言い方するのは、麻貴先輩きみは昭和生まれなのか。

 町の図書館で司書のバイトをしているとき、小学5年生の快斗のボンに出会う。ボンが中1の春にバイトをやめてる。
 
 バイトをやめたのも(最近はもっと早いのかもしれないが)、就職活動の始まる大学4回生……と、考えると、菜乃と快斗の学年差は8年。菜乃が浪人していないとしてな。でも、菜乃は本当はあたまがいい。やればできる子。

 高校2年生の快斗が再会したときの菜乃は25歳ということになる。あれ? 2014年? 早生まれとしても、来年2013年。

 『半熟作家と“文学少女”は編集者(ミューズ)』は2011年刊なので、ちょっと未来の話ということになるね。姫倉蛍ちゃんの物語のように、もっと未来の話もある。 

 (しかし、ロシア文学はやはりチェーホフに限る)

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