62.fazzoletto(ファッゾレット):これはハンカチのこと。日本語のハンカチは、handkerchiefという英語からきたものだが、これはhandとそしてchief。chiefはchiffon(シフォン=薄くて柔らかな生地、絹モスリン)あたりからきてくっつけたものだろうか。手に持つ柔らかい布地という意味なのだろうか。英語はさておき、イタリア語でfazzolettoという言葉を使うときには注意がいる。イタリアには、ハンカチはない。誰もハンカチなどもっていない。特に男性においては皆無である。fazzol-ettoの"etto"(またはetta)は、小さいものを表わす。etichetta(エチケット)はetica(道徳)から出て、小さな道徳の意味、pacchetto(パケット)はpacco(箱、包み)から出て、小包のこと(パケット通信のパケットも、小さい箱のこと)など、多くの外来語にも通じる。従い、fazzolettoはfazzolo(ネクタイ用生地)の縮小辞である。つまり、恐らくこれは、ネクタイの余った生地のことを指していたものと思われる。従い、余り生地だから、はながみ代わりに、しかも柄が入っているので女性がおしゃれに使っていたのだろう。従い、イタリアではfazzolettoは、はながみ代わりに使う切れ端のことである。日本でいうティッシュなども、fazzoletto da carta (紙製のハナ拭き布)ということになる。日本のハンカチメーカーの規定によれば、ハンカチとスカーフの境は、一遍の長さにあるようだ。定かではないが、60cmあたりが境になったように記憶している。つまり、日本では大きさだけで分けられており、用途は関係ない。実際に、高価な刺繍やプリント入りのハンカチも多く、ハナをかむどころか額縁に入れて飾るためのものもある。fazzolettoといって思い出すのは、Comoのプリントメーカーとハンカチの話をしていたときに、そこのオーナー(実は高名なテキスタイルデザイナーでもあるが)が、オペラの”Otello”を思い出すといったこと。そういえば、Verdiの”Otello"の重要な小道具が、ハンカチである。まあオペラに興味がなければ仕方がないが、ちょっとした知識がビジネスの成否やそれからの人間関係につながらないとも限らない。
