kasaiさんの江戸甲府物語

江戸時代の甲府の様子を庶民の生活を中心につづる。

第107回 奉公

2015-12-15 09:33:40 | 説明
奉公について


 甲府城下の商店には奉公人がいました。奉公人の数は店の規模によって違っていました。奉公人は周辺の農村から来る者、甲府城下の住民、多国から来る者がありました。奉公には、武家奉公と商人への方向がありますが、今回は商人への奉公について書きます。

 江戸に関する本を読むと、白木屋などの江戸の大店の奉公に関する記事が目につきます。甲府城下には奉公人を大勢抱えているような大きな店はありませんでした。

 奉公するには請人 (保証人)と人主が必要でした。請人は奉公しようとする人の身元を保証するだけでなく、奉公人が事件を起こした場合は請人が弁償する義務を負っていました。人主は請人と同じですが、通常親がなりました。他国から奉公人を雇う場合は、役所に届ける必要があり、さらに解雇する場合も役所に届けました。

 奉公にあたって年季(奉公する期間)と金額などの条件を最初に決めます。これらの条件が記載された証文を取り交わします。奉公の交代は11月亥の日で、閏11月がある場合は閏11月になります。宝暦6年(1756)の甲府町年寄の御用留には「当11月亥の日冬御幸と申す御国法にて町在共に奉公人出替り相極申候」とあります。奉公の期間が1年の場合は、11月から翌年の11月までになります。ただし、この月以外の場合もありました。
 
 奉公人は店に主人と一緒に住みます。自宅から通勤ということはありません。人別帳も主人の人別に入ります。ただし、人別帳には奉公人ではなく、下男下女として記載されます。当時は寺請制度がありましたので、旦那寺もほとんどの場合主人と同じになります(奉公人の人別に関しては第15回に書いてあります)。また、奉公人については、人主と請け人、年季が記載されています。

 寛延元年(1751)の横近習町の清右衛門の人別帳には奉公人に関して次のように記載されています。清右衛門は下男5人、下女2人を抱えています。
〇下男清八(18歳) 是は、西河内領本郷村人主新左衛門、同断直右衛門請人にて、亥年より申年迄10年季に召抱候
〇下男譜代治助(26歳) 
〇下男藤八(20歳) 是は、逸見筋小笠原村人主清右衛門、同村源七請人にて、卯暮より辰暮迄1年季に召抱候
〇下男吉兵衛(28歳) 是は、信州松本上新村人主久右衛門、同村源蔵請人にて、卯年より未年迄5年季に召抱候
〇下男新兵衛(33歳) 是は、江戸霊岸島長崎長崎町人主宇兵衛、同所市右衛門請人にて、寅年より牛年迄5年季に召抱候
〇下女きん(30歳) 是は、府中城屋町人主喜兵衛、同町喜右衛門請人にて、寅年より辰暮迄3年季に召抱候
〇下女ゆき(22歳) 是は、府中下連雀町次郎左衛門人主、武川筋教来石村右衛門請人にて、卯暮より辰暮迄1年季に召抱候
 清右衛門は他国者を2人雇っています。この奉公人の中で、年季が10年の者は清八だけで、年季5年が吉兵衛と新兵衛です。藤八とゆきは1年の短い年季です。治助は譜代となっていますので、終身奉公であり年季は記載されていません。


 奉公人が店の商品や金を持ち逃げしたり、逃亡したりした場合は請け人が当人を探し出し、さらに被害額を弁償する義務がありました。また、給金も弁済する必要がありました。請け人の責任は重いことになります。

 奉公人請状が山梨県立博物館所蔵の甲州文庫にあります。
◎明和5年(1756)の”とよ”の奉公人請状には次の内容が記載されています。”とよ”は町年寄りの坂田与一左衛門のところに奉公しています。
①下府中の西一条町の出生であること。
②明和5年暮れから翌年の暮れまでの1年季の奉公であること。
③給金は1ケ年に甲金1分3朱であること。(このうち甲金1分を身代金として前借すること)
④お仕着(支給される着物)三枚、中綿ともに支給されること。
⑤”とよ”の旦那寺は浄土宗の西青沼町にある天然寺であること。
⑥”とよ”が欠け落ちしたり、取迯した場合は請人が弁済すること。
⑦”とよ”の奉公には誰も異存がないこと。
⑧”とよ”が気に入らない場合や病気になった場合は身代金を返済すること
⑨人主は”とよ”の母、請人は西一条町の幸右衛門と一蓮寺地内町の伝右衛門である事。

 ◎天明5年(1785)に、春野屋喜三郎が信州から奉公人として忠蔵を雇い入れています。この奉公人請状には次の内容が記載されています。
①天明5年2月から同7年2月までの3年季の奉公であること。
②給金は1ケ年に文金1両2分2朱であること。
③忠蔵の奉公には誰も異存がないこと。
④忠蔵の旦那寺は信州高遠中伊那郡中坪村の忠心寺であること。
⑤忠蔵が欠け落ちしたり、取迯した場合は請人が尋ね出し弁済すること。
⑥忠蔵が気に入らない場合や病気になった場合は請人がいつでも引き取る事
⑦人主は、信州高遠中伊那郡中坪村の忠右衛門、請人は甲府上飯田新町の久米右衛門と柳町の善助である事。
 そのほかの奉公人請状にもこれらと同じ内容になっています。





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