my music life

私の好きな音楽の話を綴ります。

信じられないジャズ・ギター「ウェス・モンゴメリー」

2009-08-25 | ジャズ


ギター好きな私とすればジャズ・ギターの大御所「ウェス・モンゴメリー(1923年~1968年)」を忘れるわけにはいかない。

「チャーリー・クリスチャン」が編み出した単弦奏法を継承して、よりモダンなジャズギターとして昇華させた功績は大きい。
 70年代のフィージョン時代からは「ジョン・マグラフリン」「ジョン・スコフィールド」など新世代のジャズ・ギタリストも現れて来たが、彼の影響を受けていないジャズ・ギタリストはいないほどだ。

 彼は独学で「チャーリー・クリスチャン」の曲を耳でコピーして独自のギター奏法を編み出した。たしか楽譜は読めなかったと思うが、元々音楽的才能があり1回聞いた曲は直ぐに弾けたそうだからたまげたね。やはり天才と言える。

シングルトーンでのアドリブも素晴らしいが、やはり彼の真骨頂はオクターブ奏法とコード奏法。
オクターブ奏法は、1オクターブ離れた2つの同じ音をユニゾンでメロディーやソロを弾く奏法。単音よりは音が膨らみ、盛り上がった時にオクターブ奏法でのアドリブはもう最高!
その後のコードを駆使してアドリブを弾くコード奏法も圧巻!
この2大奏法でリスナーは完全にノックアウト!!

このオクターブ奏法を真似しているロック・ギタリストも結構多い。「ジミ・ヘンドリックス」「サンタナ」もそうだね。

 60年代半ばのヴァーヴ・A&M時代のムードジャズ的なコマーシャルな「カリフォルニア・ドリーミン」や「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」なども好きだけれど、50年代末の頃からリバーサイドで録音したアルバムは彼の才能があふれ出ている。

特に最高傑作とされている「インクレディブル・ジャズ・ギター(1960年1月26日&28日録音)」は大好きなアルバムだ。まさに「信じられないジャズ・ギター」なのだ。
 しばらくぶりに聴いたが、懐かしい本道を行くジャズ・ギターが堪能できた。

 1曲目「エアジン」から痛快なフレーズを一気に弾きまくる。ドラムとの掛け合いもすばらしい。
「D-ナチュラル・ブルース」は気だるく始まり「ウェス」のソロになるとタイトになり最高潮に達する。
「フォア・オン・シックス」はファンキーな「ウェス」のアドリブ満載!ピアノ&ベースソロのバックで弾くコードもセンス抜群!私の一番好きな曲だ。

 このアルバムでの「ウェス」はとにかく自由なのだ!自分をさらけ出してバック・ミュージシャンとやりたいことをとことんやっている。バンドとしてのグルーブも素晴らしい。
この時のミュージシャンはトミー・フラナガン(P)、パーシー・ヒース(B)、アルバート・ヒース(DS)です。



リバーサイドのもう一枚「フル・ハウス(1962年6月25日録音)」も私の大好きなアルバムだ。
ウイントン・ケリー(P)、ポール・チェンバース(B)、ジミー・コブ(DS)のバック・アップで展開する演奏はバークレイのコーヒー・ハウスでのライブ録音の要因も加わり時に激しく、優しく自由奔放に弾きまくる「ウェス」を堪能できる。
愛用のギブソンL5-CESを弾くジャケット写真も最高だね。

 ジャズの底辺を拡大するということでは大成功した後期のコマーシャル路線のアルバムは、きっちりアレンジがなされていて曲としてはステキだが「ウェス」はさぞ窮屈だったのだろうな。
 だからリバーサイド時代の自由な「ウェス」が評価されているのだろう。

なぜコマーシャル路線に移行したかは不明だが、「サム・クック」はR&B路線からポップス路線に方向転換したのは、元々「白人のポップス」が好きでポップ・シンガーになりたかったのだそうだ。
 「サム・クック」と違い「ウェス」はレコード会社の方針だったと思うが、果たして本人はどう考えていたのだろう?
当時「ウェス」のプロデューサーA&M「クリード・テイラー」は後にCTIレコードを創設、ジャズの大衆化を図ったことでも有名だから当時からコマーシャル路線を考えていたのは当然だよね。

 1968年、彼が絶頂期のころわずか43歳で心臓発作で死亡。なぜか天才といわれるミュージシャンは短い生涯を終えてしまう。
 私生活では家族のために朝から明け方までハードに働いて体を酷使していたとか。

神様が命と引き替えに与えたギターの才能はレコードに刻まれてCDで蘇り時代を超えてリスナーを虜にする。
はやり廃りとは一切関係ない本物のミュージック。「ウェス・モンゴメリー」のギターは永久に輝き続けるだろう。



途中から私の好きな「フォア・オン・シックス」が演奏されます。



「ウエスト・コースト・ブルース」




「フル・ハウス」