変形性股関節症は治る病気です!

変形性股関節症は治り方が特殊なため『治る病気』とは理解されていないのが現状です。そんな現状を変えていくブログです。

変形は治ります 3

2021-04-30 18:33:40 | 日記

変形は治ります             Youtube、始めました。

 

骨硬化像(こつこうかぞう)

股関節のレントゲン写真をよく見ると、骨と骨が接する部分が濃い白色の骨に写っていることがよく見られます。

 

図1 骨硬化像(こつこうかぞう)

 

このレントゲン像は、骨硬化像と呼ばれています。

 

レントゲン写真で白く映るのは骨密度が高いことを意味します。

本来、レントゲン像で問題になるのは骨萎縮(こついしゅく)とよばれ骨が黒く映る場合ですが、この骨硬化像は非常に白く写るにもかかわらず変形という悪者扱いされたイメージで説明されることが多いと思います。

 

骨と骨が接する股関節の関節面がなぜ白く硬くなるのかを考えることが重要でしょう。

 

骨と骨が当たって骨が潰れるのではないかと思われるくらい骨が黒く映ってしまうと、私でも患者さんに対して脚をかばうように指導するかもしれません。

ところが、骨硬化像があると、骨密度が高く骨がしっかりしているので安心して「悪い方の脚に体重をかけて下さい。」と指導することができます。

実は、ほとんどの患者さんのレントゲン写真で骨硬化像は確認できます。

 

骨硬化像も、先に紹介した研究でも報告されていたように、骨を守るための修復作用としての自然治癒力による修復作用だと考えるべきです。

 

私は、病院の診察で骨硬化像に関する説明をする時の改善点だと考えます。

 

 

リモデリング

もともとリモデリングとは様々な分野で用いられている言葉です。

人体の細胞の入れ替わりや新陳代謝という言葉を想像するとリモデリングのイメージが理解しやすいかもしれません。

 

骨に関しては骨粗鬆症の分野で頻繁に使われる言葉だと思われますが、実は変形性股関節症による変形が治ることを象徴するような言葉かもしれません。

 

骨のリモデリングとは、骨の再構築という意味になります。

 

皆さんの骨は、骨を作る骨芽細胞(こつがさいぼう)による骨形成(こつけいせい)と、骨を壊す破骨細胞(はこつさいぼう)による骨吸収(こつきゅうしゅう)を繰り返して常に骨を再構築しています。

 

このリモデリングは常に行われているということが非常に重要です。

 

変形性股関節症による変形は、いかにも無秩序に何のルールも存在しないかのように破壊されていくように説明され過ぎだと感じています。変形性股関節症の診断名を受けても、人は生きているわけですので当然リモデリング機能は体内で行われています。まずは、この事実をよく理解してほしいと思います。

 

変形性股関節症の場合は、通常のリモデリング機能に加えて、さらにもう一つの強力なリモデリング機能を持っていると私は考えています。それは、股関節に炎症が起こった時に関節内に発生する炎症メディエーターと呼ばれる各種の物質による強烈なリモデリング機能です。

 

もう一つ重要なことは、この骨に起こるリモデリングは、重力の影響を受けるということです。

わかりやすく説明すると、脚に体重をかけることで骨のモデリング機能は維持向上されるということです。

 

宇宙飛行士が、重力の少ない環境で長期間過ごしていると、骨形成より骨破壊の方が上回って骨粗鬆状態になることでも理解しやすいと思います。

 

変形性股関節症による変形が治るのは元の形に戻るのではなく、一度変形を起こした骨をリモデリングして元の形とは異なった形で治るのです。

この治った骨の形は、非常に綺麗です。

 

それは、全体の形というより、関節面の形が非常に綺麗に丸みを帯びることが多いです。

この、元の形とは異なった綺麗な形のレントゲン写真を見た時、単なる変形と判断する先生方は多いと思います。

このリモデリングに基づくレントゲンの見方が一般的になった時、変形性股関節症患者に対する診察法は大きく変わると思います。

 

 

以上の様な自然治癒力による骨の修復によって、皆さんの骨は一所懸命治ろうと頑張っているのです。

皆さん、自分の身体に備えられている自然治癒力を信じて下さい。

 

 

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変形は治ります 2

2021-04-28 18:31:38 | 日記

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骨棘(こつきょく)

骨の変形によって骨にできるトゲ(棘)は皆さんに危害を加えないどころか、この変形も治るための修復なのです。

変形性股関節症といっても個人差が大きく、骨に棘ができやすい方(増殖型変形性股関節症)やできにくい方(萎縮型変形性股関節症)がいます。しかし、ほとんどの患者にこの骨棘はできます。

 

変形性股関節症の原因となる病気はいくつかありますが、その中でも有名なのが臼蓋形成不全症(きゅうがいけいせいふぜんしょう)という病気があります。

股関節の屋根にあたる骨盤側の寛骨臼蓋が成長不全のため『屋根が浅い』状態の病気です。

 

図1 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)

 

臼蓋形成不全症は、大人になって急激に起こるものではなく、子供の頃からずっとある病気です。

 

屋根が浅いので股関節としては不安定になります。

 

その不安定さを筋力でカバーするので、子供の頃は大きな支障なく大人に成長する方は多いです。

このような方が、何らかの原因で、例えば軟骨の破片が関節包を刺激して、股関節内に炎症が始まると股関節痛を感じますのでその時に初めて臼蓋形成不全症の診断を受ける場合が多いです。

 

この屋根の浅い臼蓋形成不全症の方で、まるで屋根のひさしのように骨の棘、骨棘(こつきょく)ができることが多いです。

 

レントゲン写真では、正面画像で棘のように見えるので、「この棘が当たって痛みが出ているのです。」と説明する先生がいます。

 

骨は立体の構造ですので、立体的に見るために多方向でレントゲン写真を撮るのが原則で、骨を立体的に見れば、これが棘ではないことはすぐにわかることです。

 

この骨棘ができることで手術を回避できる方は多いです。

 

かつて、私が患者さんと共に山梨県の富士温泉病院矢野英雄先生の診察室を訪れた時、その患者さんの骨棘のレントゲン写真を下側から特殊な方法で撮影し、「しっかり屋根ができていますね。もう手術は必要ではありません。」と説明されたことを覚えています。

 

この骨棘は、帽子のつばだと考えるとわかりやすいでしょう。

 

横から見ると尖った棘の様に見えるのですが、下から見るとしっかりと広い面積のつばが確認できるでしょ?

 

 

図2 骨棘のモデル

 

股関節では、この帽子の中に大腿骨頭が入っていることになります。

 

もっとわかりやすく説明すると、この帽子のつばが元々なかった患者さん(臼蓋形成不全)にしっかりとしたつば(骨棘=屋根)ができることによって股関節が非常に安定し、骨や軟骨や筋肉への負担が減り股関節痛が出なくなり変形性股関節症が治っていくということです。

 

1991年東京医科大学整形外科の伊藤康二先生らは骨棘形成についての研究を行っています。

その結果を次の様に報告しています。

 

骨棘がどのようにしてできるのかということには諸説あるが、関節は荷重、関節運動などの力学的要因を受けて構築学的に安定した方向へ成長、変形していく修復機転が働いていくものと思われる。(東医大誌49、1991)

 

つまり、屋根が浅くて構築学的には不安定となっている股関節に骨棘ができることは、股関節を安定させる為の修復作用であるということでした。

 

骨棘ができることは良いことだけではなく、骨棘ができることによって関節可動域が狭くなることはあります。しかし、ほとんど神経の無い骨棘ができて、ほとんど神経の無い骨に当たっても強い股関節痛は起こりません。

 

先にも書いたように骨棘は骨の棘とは書きますが、実際には棘ではないので、筋肉に刺さって痛いということはあり得ません。

 

したがって、「この棘が当たって痛みが出ているのです。」という説明は間違った説明であるということになります。

皆さんは、このような間違った説明に心を乱されないようにしてください。

 

私の患者さんで、病院の診察時にレントゲン写真に写った骨棘を指さされながら「この棘が当たって痛みが出ているのです。」と先生から説明された方がいました。

その方は、骨棘の本当の姿を理解していましたので、「あ、そうですか。」と先生に答えながらも、心の中では『よしよし、しっかり屋根が育っているぞ。』とにやけたとおっしゃっていました。

 

この様に変形の本当の姿が理解できると、この方の様に皆さんも心が救われるのではないでしょうか?

骨にできるトゲと言われている骨棘は、股関節をより安定させるために自然治癒力によってもたらされる修復作用ですので、骨棘ができることによって股関節痛は必ず和らいでいくのです。

私は、病院の診察で骨棘に関する説明をする時の改善点だと考えます。

 

 

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変形は治ります 1

2021-04-26 18:00:23 | 日記

変形は治ります

1、自然治癒力の活躍

変形性股関節症による軟骨や骨の変形は治ります。

変形を治す原動力も、皆さんの誰もが持ち合わせている自己治癒力です。

具体的には関節包に起こる炎症という自己治癒力が軟骨や骨の変形を治してくれるのです。

前に紹介した信州大学医学部麻酔蘇生学教室の石田高志先生らが書かれた論文内の一文を思い出してください。

関節炎では、滑膜線維芽細胞や軟骨細胞からのIL-1やTNF-αをはじめとする各種炎症性サイトカインの放出が起こり、軟骨の変性や骨増殖が起こる。炎症は関節内のみにとどまらず、関節周囲組織にも広範囲に波及する

変形は治るという考え方でこの一文を説明します。

変形性股関節症などの関節炎では、炎症が起きた時に関節包の内側のある滑膜線維芽細胞や軟骨細胞から各種の炎症性サイトカインと呼ばれる炎症が起こった時に分泌される炎症性物質が出ることによって、軟骨や骨を治す目的で一旦変形させて修復を図り股関節の再構築を行います。この過程も見方によっては変形です。

その炎症は股関節内のみにとどまらず、関節周囲の靭帯や筋肉といった周囲組織にも広がります。

変形性股関節症になると軟骨や骨も治ろうとするでしょう。これが常識的で自然な人体の反応です。

そこで、軟骨や骨を治す目的で炎症が起こり、炎症性サイトカインなどの炎症メディエーター(炎症性物質)を股関節内に分泌することによって軟骨や骨の修復を図り、股関節の形を再構築させるのです。

股関節の再構築が終わると、炎症は不要となり股関節痛は治り、変形は治るのです。

しかし、変形の治り方は元に戻るのではなく形を変えたまま治るのですが、この形が変わり再構築された股関節はいつまでも『変形』と呼ばれ治ったものとは理解されにくいのです。

変形が治ると股関節痛も治り運動能力は向上します。

つまり、治り方が通常のイメージとは異なりますが、変形性股関節症という病気自体も治る病気だと言えます。変形性股関節症はどんどん進行して悪化してしまう病気の様に説明されていますが、実際にはある時期を過ぎると改善傾向を示す方が多いです。

炎症の治り方を主として、股関節痛の治り方、変形性股関節症の治り方を表にしてみると、今までにも何度も登場した表の様になります。(表1)

表1 一般的な股関節痛の経過(炎症の山)

患者さんの多くは、変形性股関節症がかなり悪化したころ病院を訪れることが多いので。この表の前半だけに注目してみると次のような表になります。

表2 一般的な股関節痛の経過の前半

まるで進行性の病気の様に見えますね。

ところが、炎症もピークを過ぎると、自己治癒力が炎症の力を上回り後半の表の様になるのです。

表3 一般的な股関節痛の経過の後半

この事実は、今まで説明されてきた様に変形性股関節症がどんどん進行して悪化してしまう病気という説明とは一時期的には一致しますが、長期経過を観察すると完全に矛盾します。

この矛盾を生んでいる最も大きな原因は、股関節痛の原因が軟骨や骨の変形であるという考え方です。

皆さんの中には次のような方々がいます。

①軟骨や骨に全く変形は無いのに強い股関節痛を訴える方。

②軟骨や骨の変形が末期と呼ばれるほど重度にもかかわらず、全く痛みが無く生活をおくれている方。

変形性股関節症による股関節痛の原因が軟骨や骨の変形が原因だから治らない病気だとお考えの方は、この2人の状態を説明できないと思います。

先に紹介しました『変形性股関節症の診療のガイドライン』に変形性股関節症におけるX線所見と臨床症状の関連は、という項目があります。

その要約は次のようでした。

X線所見において変形性股関節症の病期が進行すると股関節痛は一般的に増強するが、変化が無いもしくは改善する症例も存在する。

更に次のような解説が書かれています。

X線所見のみで股関節痛の有無や程度を判断することが困難な場合も存在する。

皆さんには、“X線所見”(えっくすせんしょけん)という言葉は聞きなれない言葉かもしれません。

X線所見は、レントゲン写真による診察と考えると理解しやすいと思います。

私が調べた股関節痛の長期経過表を見ると、短期間の経過だけでは変形性股関節症の本当の姿を知ることができないことがわかります。

従って、3年~5年程度の経過では、放物線状の経過を示す患者の前半部分(痛みがピークに向かっている時期)しか経過を追っていないことになり、ピーク後の改善期を見落とすことになると思います。

実は、患者さんの多くは股関節痛がピーク近くまで強くなった時に、いろいろと調べて私のもとに来られる方が多く、この傾向は病院受診の時も同じと考えられます。

先に書いた①と②の方々は確実に存在します。

特に②の様に軟骨と骨の変形が重度にもかかわらず痛みを感じない方は意外と多く存在します。

『変形性股関節症の診療のガイドライン』に書かれている(股関節痛に)変化が無いもしくは改善する症例も存在するとか、X線所見のみで股関節痛の有無や程度を判断することが困難な場合も存在するという項目に当てはまる患者に対する考察がもっとなされるべきです。

変形性股関節症による股関節痛を感じ、初めて病院を受診した時、現在のレントゲン写真を見せられ、その写真だけの判断で「手術しかない。」とか「今後歩けなくなります。」と言われる方は結構多いです。

ひどい場合は、初めての受診にもかかわらず「手術はいつにしますか?」と言われ手術日の予約までさせられた方もいました。

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股関節痛は治ります 5

2021-04-24 18:58:40 | 日記

股関節痛は治ります

表1 Iさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Iさんは急激な股関節痛でピークを迎えた2009年から深圧を開始しています。(遠方の為年3回~4回)開始後1年目から徐々に改善が見られ、4年後にはピーク時の5分の1まで改善しています。

現在はピーク時の20分の1の股関節痛の状態でほぼ普通に生活されています。(現在年2回の深圧)

表2 Jさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Jさんは1994年から股関節痛が出始め、11年後の2004年に股関節痛がピークの時に深圧を開始しています。(月1回~2回の深圧)

1年目から徐々に改善が見られ、7年目にはピーク時の10分の1まで改善しています。

2017年に遠方へ引っ越されてからは知人の地元の先生が往診にて面倒をみてくれています。(年2回~3回の深圧)

表3 Kさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)Kさんは2006年から股関節痛が出始めました。

股関節痛のピークから少し改善した2010年から深圧を開始しています。(月1回の深圧)

1年目から徐々に改善し、5年目にはピーク時の5分の1まで改善し、7年目にはピーク時の10分の1まで改善しています。

そして、深圧開始から9年後の2019年に股関節痛が全く無くなっています。(現在2ヶ月に1回の深圧)

表4 Lさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Lさんは2001年に股関節痛が出始めました。

股関節痛がピーク時の2007年に深圧を開始しています。(月1回の深圧)

その後徐々に改善し、6年後の2013年に股関節痛は無くなり深圧は終了しています。

以上の様に深圧開始から股関節痛が徐々に改善する場合は、関節包の炎症が股関節痛の主な原因です。

GさんとHさんの場合は、深圧開始から一時期悪化しています。

多くの方が、股関節痛がピークになった時に、いろいろと情報を検索して来院されることが多いのですが、GさんとHさんの場合は、股関節内の炎症がピークに達する前に来院されていることになります。

変形性股関節症による股関節痛の主体となるのは関節包の炎症です。

私は、深圧を行う事で炎症の期間を短縮できると考えていますが、皆さんの身体の持つ自己治癒力がおおもとの治癒力であり、このような経過を示す方々にとって深圧は股関節痛が悪化しない方向に導くための補助的手段だと考えています。

私は、初めての患者さんにお会いした時、その方の変形性股関節症の歴史を詳しく問診し経過を知ろうとします。

その問診によって深圧開始後の予後予測はおおよそ可能ですが完璧にできるものではありません。

とにかく、一定の期間深圧を行ってみて、深圧開始後から股関節痛が少しでも改善するのであれば「関節包の炎症は、すでにピークを過ぎていますので、徐々に股関節痛は治っていくでしょう。」と説明します。

一方、深圧開始後なかなか股関節痛が改善しない場合や、さらに股関節痛が悪化する場合には、「関節包の炎症はまだピークを迎えていないようですが、必ずピークを迎え、その後改善に向かいますので、今は筋トレを止めて股関節の動き(関節可動域)を悪化させないように自分でも筋肉をほぐすようにしてください。」と説明します。

以上の様な経過をたどり、2種類の原因で起こる股関節痛は治ります

股関節痛が治る原動力は皆さんの誰もが生まれた時から持ち合わせている自己治癒力です。

炎症の山の初期の頃は、どんどん炎症が強くなりますので、自己治癒力は働いていないように思えますが、変形性股関節症になったからと言って自己治癒力が無くなるはずはありません。

これは、常識中の常識的な考え方です。

皆さんも股関節痛は必ず治ると考えて頂きたいと思います。

皆さんの股関節痛の経過はいかがでしょうか?

自分の股関節痛の経過を知ることは非常に重要です。

「私はこのような表を書けない。」と感じた方は、まだ股関節痛のピーク(炎症の山のピーク)を迎えていないか、もしかしたら炎症の山のピークは過ぎているのに、直接的な治療がなされていない為に筋肉の暴走が起こっているのかもしれません。

股関節痛のピークを過ぎている方は、過去を振り返ってみると「2年前の痛みがピークだったかな?」などと考えられ自分の股関節痛の経過表が書けるはずです。

是非皆さんも一度自分の股関節の経過表を書いてみて自分の経過を知ることにトライして頂きたいと思います。

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股関節痛は治ります 4

2021-04-22 18:55:56 | 日記

股関節痛は治ります

ここまでの話は、すでに関節包の炎症がほぼ治っていて、筋筋膜症候群による痛みだけが残っている、いわゆる『筋肉の暴走』が起きている段階の患者さんの経過でした。

次に、Bさんの様に深圧開始から徐々に改善する股関節内に炎症が残っている方々の股関節痛の経過について説明します。

ここでもまた私が深圧にて直接治療を開始してからの1年毎の改善の程度に注目して頂きたいと思います。

表1 Dさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Dさんは2001年から股関節痛が出始め、股関節痛がピークを迎えた2008年から深圧を開始しました。

(月1回~2回の深圧)

深圧を開始してから1年間はほとんど股関節痛の程度に変化はありませんでした。

この期間は、まだ股関節内の炎症が強かったと思われます。このように炎症が強い時期は関節の動き(関節可動域:かんせつかどういき)が狭くなりやすいので、この時期の深圧は股関節痛の改善を目指しながら関節の動きを悪化させない目的で行っています。

深圧開始から2年後の2010年から少しの改善がみられると徐々に改善は加速して来院から5年目で股関節痛が5分の1まで改善しています。

表2 Eさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Eさんは、2008年に急激な股関節痛の悪化が見られ、すぐにピークに達しています。

そのピーク時から深圧を開始していますが、1年間はほとんど股関節痛に変化はありませんでした。(遠方にお住いのため年3回~6回の深圧)

深圧開始2年目から徐々に改善が見られ、6年後の2014年に股関節痛は0になりました。

急激に起こった股関節内の炎症により、当初は深圧に効果は見られませんでしたが、2年目くらいからの炎症の改善に伴って徐々に改善し、4年目から急激に炎症の改善がみられました。

表3 Fさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Fさんは、2007年から股関節痛が出現し、2009年に股関節痛がピークに達しています。

股関節痛はピークのままその一年後2010年から深圧を開始しています。(月1回の深圧)開始後から徐々に股関節痛の改善が見られ、6年後に股関節痛は0になりました。

深圧を開始する頃から股関節内の炎症は徐々に改善したものと思われ、その改善に伴い股関節痛は改善しました。

表4 Gさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Gさんは、2007年から股関節痛が出始めました。

股関節痛がピークになる前の2010年から深圧を開始しています。

深圧を開始しても、その後1年間は股関節痛が悪化し2011年にピークを迎えています。

2010年頃は股関節内の炎症がまだまだ強くなる時期だったので、深圧開始後も股関節痛は強くなったものと思われます。その後2012年から少しずつ股関節痛の改善が見られました。

この時期には「先生、最近はちょっといい感じがします。」とおっしゃる患者さんが多いです。

少しずつですが良くなってきた自覚が感じられる時期です。

股関節痛が改善傾向を示し出すと、股関節痛はどんどん改善に向かいます。

Gさんは深圧開始5年後の2015年に股関節痛は10まで改善し深圧終了となりました。

表5 Hさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Hさんは深圧開始(月1回の深圧)後も股関節痛は悪化し、2年後にピークを迎えています。

この頃は股関節内の炎症も強く、本人も私も非常につらい時期でした。

このような時期に私は「必ずピークを迎えますので頑張りましょう。」「炎症の山の向こうに希望あり!」と説明することが多いのですが、この頃の患者さんは半信半疑の状態です。

深圧開始から4年目から徐々に股関節痛は改善し5年目にはピーク時の5分の2の痛みまで改善しました。この頃から歩行距離が非常に伸び、歩行スピードが急激に改善しています。

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股関節痛は治ります 3

2021-04-20 18:51:59 | 日記

股関節痛は治ります 

2、経過を知る

皆さんは、ご自身の股関節痛の経過を振り返ってみたことはありますか?

実際に過去を振り返ってみて、経過をグラフ化してみると過去だけではなく、未来の予想も見えてくるかもしれません。

是非、視覚的にご自身の股関節痛の経過を知ることを試していただきたいと思います。

先に紹介したAさんやBさんの様な経過を示した他の患者さんの例を示して股関節痛の治り方について説明しますので参考にして下さい。

次から出てくる表を見て、私が深圧にて直接治療を開始(〇印)してからの1年毎の改善の程度に注目して頂きたいと思います。

まずは、Aさんと同様に、股関節痛が尖った山のような経過を示したCさんの例を見てみましょう。

縦軸 股関節痛の程度  横軸 期間

表1 Cさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

Cさんの場合、2012年に深圧を始めるまでは、まるで進行性のような経過を示していました。(月1回の深圧)

ところが、翌年には股関節痛は無くなっています。

この様に深圧開始から股関節痛が急激に改善する場合は、筋筋膜症候群が股関節痛の主な原因です。

股関節痛に対してしっかり向き合い、直接的な治療を行う事の重要性がわかる経過表ですね。

病院の診察での「また痛みが出たら来てくださいね。」という言葉と薬だけでは股関節痛は進行性の様に悪化することがわかります。

このような股関節痛の経過は、ある特徴を持った方々によくみられる経過です。

ある特徴とは『経過が長い』という特徴です。

子供の頃先天性脱臼があった方、子供の頃から股関節に違和感や痛みがあった方、子供の頃には何ともなかったが初めての痛みからすでに長期間経っている方(5年~10年間くらい)、子供の頃に手術を受けている方などは、このような経過を示す方が多いです。

これは変形性股関節症になってから経過が長い方のメリットです。

経過が長いと、関節包に起きた炎症が治っている方が多いということです。

また、本来なら関節包の炎症による股関節痛が治るのに伴って筋筋膜症候群による股関節痛も改善するはずなのですが、『筋肉の暴走』により関節包内の炎症が治った後も股関節痛が残る方にもある特徴があります。

その特徴は、股関節痛を治す目的で筋トレを行ったり、運動を行ったりしていたことです。

股関節に違和感や痛みがある時の筋トレや運動は、関節包の炎症を悪化させますし、筋肉の病気も悪化させます。

皆さんが風邪をひいて熱が出ている(炎症)時に、筋トレや運動で治そうとしますか?炎症には安静ですね。安静と言っても生活をしなければならないので、できる限り少ない活動量に抑える必要があるでしょうね。

また、常識的に考えて筋肉が病気の時に筋トレで治そうとするのは危険であることは想像しやすいと思います。前出の『臨床医のための痛みのメカニズム』には、筋筋膜症候群の治療法について3つの方法が書かれています。

筋筋膜症候群の治療法

① トリガーポイントに局所麻酔薬を注射する

② 筋肉の牽引(ストレッチ)

③ トリガーポイントの指圧

私は医師ではなく注射はできませんので、筋肉をほぐしてストレッチを行っています。

病院の先生が、目の前で筋筋膜症候群による股関節痛を訴えている患者さんに対し、その場でできる直接的な治療法のひとつはトリガーポイントへのトリガーポイント注射です。

病院の先生には、手術以外にもできる治療は存在するのです。

このトリガーポイント注射によって、その場で全てを解決できなくても、このような治療介入が患者さんの股関節痛を好転させるきっかけになる可能性は高いと感じます。

繰り返しになりますが、このような治療法について病院の現場で活躍する先生方に向けて書かれた本が1990年から存在しているのです。

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股関節痛は治ります 2

2021-04-18 18:48:56 | 日記

股関節痛は治ります 

 

次に、1、股関節の関節包に起こる炎症による痛みの治り方について説明します。

はじめにで紹介したBさんの経過は次のようでした。(表1)

 

 表1 Bさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

 

 

Bさんは2003年から股関節痛が急激に悪化していました。

その股関節痛は2006年にピークに達しその後約2年間は股関節痛がピークの状態で維持していたようです。股関節痛がピークの2008年に当院を受診し、深圧を開始しました。

 

炎症がピークの頃は、椅子に座っていて立とうとすると筋肉が固まっていてすぐに動けないことや、股関節周囲で音がする方が非常に多い時期です。筋肉が固まりやすかったり音がするという症状も、炎症の改善と共に徐々に無くなっていきます。

 

Bさんはお住まいが愛媛県だったこともあり、当初は銀座での深圧が多かった(年6回の深圧)のですが、私が四国での出張深圧を開始してからは高松市で年3回程度の深圧を行いました。

 

当初は股関節の炎症が強く、深圧の持続的効果は非常に短時間しか出ませんでした。

その後は少しずつではありますが股関節痛は改善を示しましたが、なかなか改善しない感じを受けていました。

 

ところが、2011年頃から股関節痛の改善と共に歩行が楽なってきました。この頃から関節包内の炎症がかなり和らいできたものと考えられました。

 

比較的楽に動けるようになり最後に深圧を行ったのが2013年2月でした。

その後の経過を知りたくて、ご本人に連絡を取り経過を記入して頂いたのが表1になります。

 

現在は、経過表で20程度の股関節痛が残っているようですが、高速バスに乗って遠方までひとりで出かけられるようになっています。

 

ご両親への思いや親せきの方の人工股関節手術後の経過不良などを見て、手術はしたくないという強い想いがありましたので現在も手術する事無く過ごされています。

現在残っている筋肉の暴走による痛みについてはご本人の希望があれば7年ぶりに再度深圧を試みてみたいと考えています。

 

以上の様に、患者さんの長期経過を調べると、軟骨や骨の変形を股関節痛の原因と考えて、診断だけで済ましている現状はあまりにもレベルが低過ぎることがわかります。

 

徹底的に股関節痛の原因を追究してくれる先生が少なくなったように感じます。

 

私が初めて勤務した整形外科病院の院長先生は、ほとんど椅子に座ることなく、左手に持ったレントゲン写真を見ながら右手で触診して患者さんとコミュニケーションをとりながら痛みの原因を追究し、目の前にいる患者さんにビックリするような治療効果をもたらしていた先生でしたので、現在の病院での診療が悲しくて仕方ありません。

 

変形性股関節症による股関節痛の原因は、軟骨や骨の変形ではありません。

 

私は医師ではないので、深圧後の経過観察によって股関節痛の原因が関節包の炎症なのか、筋筋膜症候群なのかを明確にしています。

もしも私が医師であれば、股関節の関節包内に麻酔薬を注射(股関節ブロック)して、その注射後の股関節痛の程度を確認することによって、患者さんの股関節痛の原因が関節内の炎症なのか関節外の筋筋膜症候群なのかを明確にするでしょう。実際、股関節ブロックを行っている病院はありますが、非常に少ないのが現状です。

皆さんも。自分の経過を振り返り、自分の股関節痛の原因がどちらかなのかを考えてみてください。

病院の先生方や私のような職業の先生方は、股関節痛の原因を明確にする知識や技術を持っています。

 

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股関節痛は治ります 1

2021-04-16 18:43:32 | 日記

 股関節痛は治ります

 

1、原因を明確にする重要性

何事においても原因が明確になれば正しい対策が明確になります。

言い換えると、原因を間違うと治療法が間違うと言えます。

患者さんの長期経過観察から導き出された股関節痛の原因は2つでした。

 

1、股関節の関節包に起こる炎症による痛み

2、筋肉に起こる筋・筋膜痛症候群による痛み

 

通常、この2種類の痛みは関節包の炎症から始まりますが、その後は2種類の痛みが同時に起こっている時期が続き、順調にいけば関節包の炎症による痛みが治るに伴い筋筋膜症候群による痛みも治ります。

 

ところが、関節包に炎症がある時期の筋肉のケアを間違うと、関節包の炎症が治っても筋筋膜症候群の痛みだけが残る方もいます。

この場合、股関節痛の原因は筋筋膜症候群だけですので、私はこの状態を『筋肉の暴走』と呼んでいます。

股関節痛の2つの原因は治ります。

 

次に、股関節痛の2つの原因の治り方ついて説明しましょう。

 

まずは2、筋肉に起こる筋・筋膜痛症候群による痛みの治り方です。

はじめにで紹介したAさんの経過は次のようでした。(表1)

 

 表1 Aさんの股関節痛の経過 (〇が深圧開始年)

 

Aさんは左股関節が痛くて足を地面に着くことができず、4ヶ所の病院で人工股関節の手術を勧められていました。

Aさんの股関節痛の経過を見ると初めて痛みを感じた1988年から徐々に股関節痛は進行性の様に悪化しています。

この10年間に、股関節に対する直接的な治療はなされていませんでした。

Aさんの場合、変形性股関節症の歴史が長いので、股関節の炎症はこの10年間、またはそれ以前に治っていたものと思われます。

ところが、炎症があるうちに筋肉をほぐせればよかったのですが、筋トレを指導されていたため炎症が治っても、筋肉の暴走がおこり発痛物質が筋肉内に蓄積して股関節痛はどんどん悪化していったと考えられます。

 

1998年に深圧を開始(月1回~2回の深圧)すると、股関節痛は急激に改善し2000年には股関節痛が全く無くなりました。(現在年2回の深圧)

 

このように、深圧によって筋肉への治療を開始すると急激に改善するケースでは、関節包内の炎症はすでに治っており、筋肉の病気である筋筋膜症候群による痛みのみだったので股関節痛が急激に改善したものと考えられます。

 

Aさんの経過からは非常に重要なことがわかります。

 

Aさんは、1988年に股関節痛を感じたので4ヶ所の病院を受診しているにもかかわらず、直接的な治療がなされていなかったので、股関節痛はまるで進行性の様に悪化しているということです。

このことから、変形性股関節症が進行性の病気だと考えられているのは、直接的治療がなされないことが原因だという証拠をAさんに教えられました。

 

つまり、変形性股関節症が進行的に悪化するのは、進行を防ごうとせず患者さんを放置していた治療者側が作り上げてしまった結果だということです。

レントゲン写真を主体とした診察により「変形性股関節症ですね。」と診断されることは重要ではありますが、その診断だけでは股関節痛も変形性股関節症も治る方向に向かわないのです!

 

目の前に股関節痛を訴える患者さんがいるわけですから、目の前にいる患者さんに直接的な治療を行わないのではせっかく病院に行った意味がないと思います。診察室で行える直接的な治療法は存在しますので、忙しい臨床現場だとは思いますが、患者さんのために直接的治療に時間を割いていただきたいと強く願います。

 

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股関節痛の原因 5

2021-04-14 18:52:14 | 日記

次回、トリガーポイントの3つの症状について簡単に説明を加えておきます。

 

A、しこり

 筋肉を顕微鏡レベルで細かく見てみると、アクチンフィラメント(以下アクチン)とミオシンフィラメント(以下ミオシン)というたんぱく質で構成されています。

アクチンとミオシン

 

正常な筋肉の場合、筋肉が収縮するとミオシンの間にアクチンが滑りこみ、筋肉は短縮します。

 

そして、筋肉を緩ませる(弛緩:しかん)とミオシンとアクチンは離れて筋肉は元の長さに戻ります。

 筋肉の弛緩と収縮時のアクチンとミオシンの関係

 

 

ところが、様々な原因で筋肉内にある筋小胞体が破れ、中からカルシウムイオンが漏れ出すと筋肉は縮んだままとなり(筋肉を弛緩させても元の長さに戻らない)筋筋膜症候群へ移行していくのです。

 

力を抜いた状態でもミオシンとアクチンの重なりが続くので、その部位を押してみるとしこりとして感じることになるのです。

 

B、圧痛

ミオシンとアクチンの重なりによってしこりができると、しこり周辺の血流が悪くなりしこりの中に発痛物質(痛みを感じる物質)や発痛増強物質が蓄積すると考えられ、その結果痛みを感じる神経がより興奮して痛みが生じやすくなります。

 

したがって、発痛物質や発痛増強物質が多く溜まったしこりを押すと、非常に強い圧痛を感じるのです。

この圧痛は、しばしば飛び上がるほど痛いのでジャンプサインと呼ばれています。

 

皆さんの筋肉内に発痛物質や発痛増強物質が蓄積している時は、皆さんが走ったり、歩いたり、立ち上がったり、姿勢を変える時などに筋肉が瞬間的に強く収縮して股関節周辺に痛みを感じやすくなります。

 

筋肉内にしこりができて長時間経っている場合は、お風呂や温泉などで温めるだけでは発痛物質や発痛増強物質はしこりの外に流されない程血流が悪くなります。

 

しかし、筋肉内に発痛物質や発痛増強物質が溜まる原因は、しこりによる血流障害ですので、しこりをほぐし除き血流を改善させることで発痛物質や発痛増強物質はしこりの外へ流されるため圧痛は徐々に無くなります。

 

C、関連痛

 関連痛の存在については1864年に初めて報告されています。

1964年にケルグレンらが筋筋膜症候群の筋肉における圧痛と関連痛の関係を報告しています。

 

この報告では、高張食塩水(6%食塩水)を筋肉の付け根の腱に微量注入しても局所にしか痛みを引き起こさないのに、筋肉内に注入すると注入局所以外の遠隔部位に痛みを引き起こすことがあり、しかもそれぞれの筋特有の関連痛バターンが現れることを報告しています。

 

現在、それぞれの筋特有の関連痛バターンの説明で良く用いられている図は、1980年代のシモンズ氏らの研究報告を参考にしていることが多いと思います。

 

それぞれの筋特有の関連痛バターンに関する著書も何冊か発行されています。

 

当院でもこれらの著書を参考にしますが、実際の関連痛は本に書かれたような単純なパターン以外のパターンも多く、当院ではあまり専門書に頼り過ぎないように気をつけなければならないほど関連痛は複雑で厄介な症状です。

 

つまり、患者さんが痛がっている部位の痛みが、その部位にある筋肉が原因なのか離れたどこかの筋肉から発せられた関連痛なのかが非常にわかりにくく私を悩ませています。

 

しかし、痛みを感じている部位から離れた位置にある原因筋がほぐされた時には、急激に股関節痛が改善し歩きやすくなるので患者さんにも関連痛だったことが自覚できる程の改善が起こります。

 

この関連痛も、圧痛の改善と同様にしこりによる血流障害が改善されたことで解決します。

 

 

以上の様に、股関節痛の原因は関節包に起こる炎症や筋筋膜症候群であって、軟骨や骨は全く関係しません。

従って、病院でのレントゲン写真の結果はひとつの参考程度の情報ととらえ、レントゲン写真に写らない軟部組織に対する診療が不可欠になるのです。

 

皆さんを担当する先生は、診察時に皆さんの顔を見て話を聞いて、椅子から立って皆さんの身体を診察してくれますか?

椅子から立たない先生は問題外であり、いくら有名な先生であっても名医とは呼べません。

 

 

 

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股関節痛の原因 4

2021-04-12 18:50:10 | 日記

2、筋肉に起こる筋筋膜痛症候群による痛み

 

筋肉は筋膜と呼ばれる膜につつまれています。

 

筋膜には痛みを感じる神経が多く存在します。

 

 筋肉を包む筋膜

 

 

では、痛みを感じやすい筋膜に包まれた筋肉の内部はどうなっているのでしょうか?

筋肉の内部には多くの筋線維が存在します。

 

この筋線維は、筋線維の束となり、筋線維の束が集まって筋肉を構成しています。

 

この筋線維は痛みを感じる筋膜(筋内膜)に包まれ、さらに筋線維が集まった筋線維の束も痛みを感じる筋膜(筋周膜)に包まれています。

 

そして、筋線維の束が集まってできた筋肉も痛みを感じる筋膜(筋外膜)に包まれているというわけです。

従って、筋肉は表面だけでなく筋肉の内部にも痛みを感じる神経が非常に多いことになります。

 

 

筋膜(筋内膜・筋周膜・筋外膜)

 

 

世間一般には、筋肉に病気が起こることがあるとは考えられていないように感じます。

 

従って、筋肉は筋力トレーニング(以下筋トレ)で鍛えることが重要という考え方しかないように感じます。

様々な雑誌やテレビ番組では、とにかく筋肉を鍛える内容が多いですね。

 

もしも、今鍛えている筋肉が病気だったらどうでしょう?

筋トレをすればするほど痛みは増すことでしょう。

 

筋肉はレントゲン写真に写りませんので、病院の先生方は筋肉が常に健康で正常な状態だと考えているようです。

 

先にも書いたように、股関節内に発生した炎症は関節周囲の筋肉までその影響を及ぼすので筋筋膜症候群の重要な原因となります。

 

その他の原因としては、股関節の捻挫等の怪我の後遺症や、股関節周囲の筋肉の筋疲労なども筋肉の病気の原因となりえます。

 

筋肉の状態を理解するために握力の話をしましょう。

握力計を使って握力の測定を永遠に続けたらどうなると思いますか?

 

最初50kgあった握力は、筋疲労と共に徐々に30㎏や20㎏へと低下するでしょう。さらに握り続けると筋肉は痛みを出しとうとう握力計を握ることさえできなくなり握力は0㎏になります。

 

この握力の話で注意しなければならない重要なことがあります。

 

最初50㎏あった握力が疲れて20㎏になったり、痛みのため0㎏になったりと数値が下がることは一般的に考えられている筋力低下ではないということです。

 

筋肉が疲れていれば力が出にくいし、筋肉が病気であれば力が出ません。

筋肉も生きているということです。

 

筋肉が疲れていたり筋肉が病気であったりする時の筋力が出にくい状態は、一般的に考えられている筋力低下とは全く異なります。

 

疲れている筋肉への筋トレは、筋肉をさらに疲れさせ、筋肉を病気の状態に悪化させるかもしれません。

また、筋肉が病気になり痛みを出している筋肉に筋トレを行うと筋肉の病気はさらに悪化し痛みがさらに増えてしまうかもしれません。

つまり、股関節痛を筋トレで改善しようとする考え方は非常に危険なのです。

 

 

この握力の話は筋肉の状態を理解しやすい為の例え話ですが、筋肉は常に正常ではなく、疲労している時もあれば病気の時もあるということをご理解頂きたいと思います。

 

皆さんの身体も疲れている時や病気の時があり常に元気というわけではありませんが、筋肉も常に元気とは限らないのです。筋肉が疲れている時の自覚症状は“重い感じ”であり、筋肉が病気の時の自覚症状は“痛み”です。

 

私が筋筋膜症候群の存在を初めて知ったのは大学病院に勤務していた1994年でした。

 

滋賀医科大学教授(生物学第一講座)横田敏勝先生の著書『臨床医のための痛みのメカニズム』(南江堂 1990)の中に筋筋膜症候群という項目でこの病気の歴史、特徴や治療法などが書かれていました。

 

この著書は、今から30年以上前に病院の現場で働く先生方の為に書かれた本です。30年以上も前にです。この本によると筋筋膜症候群の存在については1939年頃に発見されています。

 

こんなに歴史のある筋筋膜症候群ですが、整形外科医、特に股関節専門医の先生方にはほとんど知られていないと思います。専門になればなるほど骨や軟骨に焦点を当てて考えられているように感じています。

 

筋筋膜症候群ではうずく痛み(疼痛)があって運動が制限(機能障害)されます。

 

炎症の特徴である発赤・腫脹・発熱は伴わないものの、筋筋膜症候群と炎症は共に疼痛と機能障害が起こるので非常に似ている面があります。

 

ところが、炎症と筋筋膜症候群は全く逆の症状のことが多く、炎症は熱いイメージで筋筋膜症候群は炎症の影響は受けていますが冷たいイメージです。

つまり、筋筋膜症候群では筋肉内の血流障害が起こり、その血流障害が股関節周囲の痛みになっているので「脚が冷たい。」と感じる患者さんが多いです。

 

また、筋筋膜症候群の筋肉にはしこりのあるトリガーポイント(発痛点)があり、トリガーポイントを圧迫すると圧迫した場所に強い痛み(圧痛)を感じ、さらに離れた部位にも関連痛が生じます。

 

例えば、お尻の筋肉のトリガーポイントを圧迫すると、お尻の圧痛に加えて脛(すね)やももの後に関連痛を感じることがあります。

 

関連痛という言葉を皆さんの股関節痛に当てはめて説明すると、股関節を守っているお尻の筋肉が股関節の炎症の影響で筋筋膜症候群になると、股関節周囲だけでなく腰や膝や足首といった離れた部位にも痛みが出やすくなるということです。

 

私は深圧というオリジナル手技により、筋筋膜症候群に対して筋肉内の血流を改善し股関節痛を改善させる仕事をしていますが、患者さんが痛みを訴える部位にある筋肉が筋筋膜症候群による股関節痛の原因筋であるとは限りません。

 

原因筋から離れた部位に関連痛が出ていることも多く、真の原因筋を探すのに苦労することも多いです。このように関連痛は皆さんにとっても私にとっても非常に厄介な症状のひとつになります。

 

筋筋膜症候群➡トリガーポイントしこり+圧痛+関連痛

 

このトリガーポイントの話を読むと、皆さんもあることに気づくかもしれません。

 

肩こりがある時は、肩の筋肉にしこりができます。

そしてそのしこりを押すと痛みを感じ、頭や首や腕など離れた場所に痛みが響くことがあります。

 

肩こりも筋筋膜症候群の一種なのです。

同じく、腰痛や膝痛と呼ばれる症状も筋筋膜症候群のことが多く、レントゲン写真やMRI検査だけによる診察では痛みの真の原因を見落とす可能性があるのです。

 

次回、トリガーポイントの3つの症状について簡単に説明を加えておきます。

 

 

💗変形性股関節症は治る病気です!💗