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新印象派 ―光と色のドラマ―展

2015-03-20 00:01:22 | 一期一絵

肌寒く時々雨が降った3月10日にポスターに載っているスーラの絵に惹かれて東京都美術館にて鑑賞しました。

まずは筆触分割技法を使って作品を描いた印象派を代表するモネの絵画から展示されてました。

次に印象派展の創設メンバーで唯一全8回に作品を出展したカミーユ・ピサロ。ピサロは点描画家スーラやシニャックの化学的に色彩を分割して混色をせず(白だけは濃淡をつけるため混ぜている)点描のみで描く絵に新しい絵画の可能性を感じ次第に点描画へと変化します。

その新印象派の夜明け前に展示された作品ですてきだなと思った作品を載せます

べルト・モリゾ「ブージヴァルの庭」1884年
庭に咲いた薔薇を爽やかに描いてます

そして第8回印象派展ではルノワールやモネなど主要な印象派画家は参加せず、これまで通りに参加したのはピサロとベルト・モリゾ。そのかわりジョルジュ・スーラの大作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」が注目を浴びたそうです。

今回はその作品の小さな習作(「クロクトン」とスーラが名付けている)が5点展示されてました。
 
ジョルジュ・スーラ「〈 グランド・ジャット島の日曜日の午後〉 の習作」1884年
もしかしてその場で描いたのか、15.5×25cm の小さな画面の筆致は少し大きく勢いがあって生き生きしていました。

そして見たかった作品

ジョルジュ・スーラ「セーヌ川、クールブヴォアにて」1885年
スーラの絵は一つ一つの物体に点が芯からぎっしり集結して立体的に見えました。
人物は絵の中の木や船と同じように画面を構成する物体に感じられます。その非生命感がむしろ新鮮な面白さを感じます。
点描画法の創始者であり頂点の画家だと思いました。
静謐で詩情があり一つの美しい異世界を作っているように見える。
沢山の習作を描いて綿密に計算し、点描で画面を埋め尽くすのはかなりの集中力と時間も必要。
内向的で秘密主義のスーラにはむしろあっていたのでしょうね。

風景画を描いた作品

ジョルジュ・スーラ「ポール=アン=ベッサンの外港、満潮」1888年
額にまで細かい点描を施しています。完璧主義だなあ。

美術評論家のフェリックス・フェネオンは「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を見て点描技法の絵画を「新印象派」と名づけました。
19世紀に入り、色彩を科学的に検証する書物が現れたそうです。
モネの筆触分割画法は感覚と経験で色のとりあわせの微妙な変化を表現したのに対し
点描画法は、科学的な色彩理論をもとにどの色にも補色を点描で加えてます。緑の葉の点描の間に赤の点描が入り、青の水の点描の間にオレンジ色の点描が入る。正反対の色を添えることによって色と色の間に微妙な白い境界線が見える現象が起き、葉や水の色がより引き立ち鮮やかに見え、そして遠くから見ると色が混ざって新しい色に見えるのだそうです。

この理論は正直言って私には難しい。それに色が混ざって見えずやはり緑の点の中に見える赤の点、青の点の中に見えるオレンジの点という風に見てしまいます。
そんな私でもふと春の日差しの木々を見ると茂る木の葉の間を透かして点描の様に日の光が見えて、まるでスーラの描く木そのものじゃないかと感慨を持ちました。そして葉の中にも変色した葉が混じると緑の点描に確かに違う色の点描が紛れているように見えます。作品を見た後に自然を見ると、まるで絵の通りに見えることがあり私たちに新しい視点を教えてくれたように感じるのです。とても新鮮な感覚でした。
19世紀、これまでの絵の技法に行き詰まりを感じ新しい方向を模索していた当時の美術界に、新鮮な風を送り込んできたのがわかります。

この新印象派の点描画法はベルギーにも影響を及ぼしていったそうです。


ジョルジュ・モレン「日没」1891年
手前の人物をほとんどシルエットにして夕日と染まる水辺の輝きを美しく演出しています。まるで物語の一場面のよう。ベルギーの画家の作品は少しドラマチックな印象を受けました。


点描画のもう一人の代表的人物ポール・シニャックの作品

ポール・シニャック「クリシーのガスタンク」1886年
現代と違いガスタンクのある風景はのどかです。外交的なシニャックの作品は明るく見る私達に打ち解けてくるような親しみやすさを感じます。
好かれる人物だったらしく、気難しいゴッホとも穏やかな関係を築いたそうです。
スーラが1891年に31歳で早世した後、新印象派を牽引していくリーダーとなりフランス南部の港町に本拠地を構え、やがて点描画を新しい視点へと展開していきます


ポール・シニャック「髪を結う女、作品227」1892年
スーラ回顧展を開催し終えて、描いた作品。色の美しさを保つ試みとしてスーラが作品制作で使用していた蜜蝋を顔料に混ぜて描いてます。
絵の中に一つの異空間を作ったスーラの絵に対し、シニャックは模様と人物が同じような存在感で描かれ装飾的です。
それは新しい世界への一歩になったんですねえ

ほかにもいいなあと思う画家がいました。


マクシミリアン・リュス「ルーヴルとカルーゼル橋、夜の効果」1890年
リュスの絵は端正で、まさに点描技法の効果で夜空が揺れて見えてます。この人の人物の点描画も美しい。今回初めて知った画家でした。

もう一人初めて知っていいなあと思ったのが

アンリ=エドモン・クロス「農園、夕暮れ」1893年
柔らかい色合いが美しい。詩的な雰囲気があります。

そして、少しずつ点描画は色彩理論から自由になり、自分で感じる色を自由に画面に乗せるようになり、点描も少しずつ大きくなっていきます


マクシミリアン・リュス「シャルルロワの高炉」1896年
急速に発展する工業を夜の風景の中で表現。炎と煙の勢いが 夜空をバックに迫力を増してます。


アンリ=エドモン・クロス「マントンの眺め」1899~1900年頃
黄色い中景、右に見える叢は紫色のグラデーション。本来の色合いにとらわれず自由に色をのせていて、特に紫から緑への色の変化が美しい。


ポール・シニャック「マルセイユ、釣舟」または「サン=ジャン要塞」1907年
点描はひとつひとつ大きくなり、四角い煉瓦のような形に。本来の色を離れて明るい画面。
後のフォービズムの画家アンリ・マチスはシニャックら点描画家と親しくなり大きく影響を受けます


アンリ=エドモン・クロス「地中海のほとり」1895年
この作品はまだ点描ですが、色はずいぶん自由で美しい作品。そして木のふもとでたたずむ裸婦にアンリ・マチスは大いに関心を持ち影響されたそうです。
クロスの描く裸婦作品は小さな作品がいくつか展示されてましたが、力強く単純な線で女性の体をとても的確にあらわしていました。それはもう点描ではありませんでした。


アンリ・マチス「日傘の女性」1906年
シニャックの影響を感じる作品。
すでに色彩理論から自由になっていますが、まだ点描画法です。


アンドレ・ドラン「コリウール港の小舟」1905年
勢いのある筆致のフォービズム(野獣派)が繊細の極地のような新印象派から現れたというのは意外でした。
色彩も美しい色合いにだんだんとこだわらなくなり、形も自由に変化していきます。

20年あまりの新印象派の流れを一気にみることができた展覧会でした。
会場の入り口は点描の電飾がお洒落で出口にも点描の模様が描かれてました。光と色のドラマを堪能しました。
一方、点描が時に表面に張り付いてるだけに見える作品もありましたし、この絵を点描にして描く必要があるのかしら、と思う作品もありました。
そんな試行錯誤があって20世紀の美術への扉をあけていったのだということもわかりました。


最後に会場を出るとレゴブロックで作られたこの作品が


レゴ®認定プロビルダー、三井淳平氏が小学生といっしょに完成した作品だそうです。
ちいさなレゴブロッグは確かに点描画の一筆のようですね☆




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