スーパーナチュラル シーズン11 気まぐれ感想12

第20話　チャック、再び

ゴミを漁っているメタトロン。落ちぶれ、パパラッチ記者もやめた模様。でもノラ犬に見つけたサンドイッチをあげた。人間らしくなった。
突然バーに飛ばされる(犬も)　そこにはいたのはカーヴァー・エドランド、つまりはチャック。
予言者のヘボ作家とおしゃべりする罰を与えられたんだなと言うメタ。が、チャックがスイッチオンすると、まぶしい光が。正視できない御光にグラサン(笑)　メタトロン「なんと…神よ！」
ついに正式登場、スパナチュ界の神。「世界最高のパパ」(マグ)　　十字切りまくるメタトロン。
ブログに猫の写真を載せ、スナップチャットもやってるという神様はタメ口推奨。新しい原稿を書いたので編集者としてメタを呼んだ。

バンカーでシャツにアイロンかけてるディーン。霧吹き代わりにビールｖ　突然不自然な自殺をした人の事件を調べに行く兄弟。自殺者の腕にはあの痣が（第1話に戻る）
濃霧が出て、それを吸った副保安官は夫を撃ち殺してしまう。霧が町に迫り、兄弟は人々を集めて警察署に立てこもる。

バーでは二人の会話が続く。姉上のことも書くべきだと言うメタに、アマラのことを持ち出すと不機嫌になるチャック。そんな器に入って何をしてるんですと問うと、彼女も彼氏も作って旅もしたと言う。彼女ってベッキー以外？
真実をありのままに書き、自分をさらけ出せとアドバイスするも、肝心な部分を書かない神にイラつくメタ。しかしチャックが本気を出して書いた原稿は、自らが消える時だというものだった。

霧を吸ってしまい、変化が始まるサム。絶対に見捨てない！と言うディーン。「僕よりもアマラが大事なんだろ」と弱音を吐くサム。自棄になったディーンが霧を吸っても変化はない(姉のご贔屓)　もうやめろ！と叫ぶディーンだが。
サムのポケットから光が。取り出すとそれはあのアミュレットだった。感染は止まり、死んだ人も生き返る。光るアミュレットに導かれた兄弟が見た先には、人々を助け起こすチャックの姿が。
「まず話をしないとな」


エポックとなるストーリーにして、隠れた名作。

そして今までにないイレギュラーな回でした。なにしろ主役の二人がラスト以外は少ししか出てこない。今までにもスピンオフのための回や、Ｊ２を休ませるためのゴーストフェイサーズや狼人間の回などもあったけど、二人の俳優がバー(一部戸外)でさしの対話をするのが大半というのは初の試み。アメドラにしても珍しいでしょう。二人の会話を退屈と思った人と、逆にそれがすごく良かったと思う人に分かれるでしょうね。私は後者。チャック役ロブ・ベネディクトとメタトロン役カーティス・アームストロングのガチンコ対話が素晴らしい。

ディーンを殺したこととケヴィンへの仕打ち以外は、私はわりとメタびいきを公言してきました。ケヴィンを殺させたことは、むしろ指示に従う選択をしたガドリエルの方に思うところあった。彼の苦しさもわかったけど、そこで間違えるなと。カーティスさんみたいな練れたおじさんの演技が好きだというのもあります(笑)
しかし本国ではメタ・ヘイトはかなりもののだったらしく、単純な悪とは思わないで演じていたカーティスさんはかなりショックを受けたらしい。極東のここにいますよファンが！

この回でチャックこと神に批判がいき、メタトロンは多少見直されたとか。二人と脚本家の3人のコメンタリーがあるので、聞くと事情がよくわかる。やはり神を前面に持ってくる話は、アクションドラマといえども造りづらかったようです。
これは捨てられた子供の親への叫びであり、その親は初めて自分の想いをさらけ出す。紙と音楽の力を借りて。ロブも共感するのが難しかったというネグレクトした親である神。全能で愛に満ち、逆に怒りにも満ちているという神ではなく、身勝手で逃げている。少なくともメタトロンはそうぶつけた。こういう神ってどうなのか、と言う前に、これはスーパーナチュラルの神なのだ。
あのルシファーや天使どもの様子から見ても、神様が完璧であるはずないよね。メタの問いに答えたように、彼は『孤独だったから命を作った』神様。ただ一人の身内である姉とは存在が真逆。共感はあり得ない。その寂しさから、大天使に始まり天界や人間を創造した。
けれど人間は愚かな破壊や殺戮をやめず、許しを乞うてはまた繰り返す。天使も命令しなければ何もできないぼんくらども。次男坊はグレて地獄を作り出した。神は干渉をやめ、自由意思に任せることにした。

もっともな言い分でもあるけど、納得できないものもある。そこをメタトロンが代弁して叫ぶ。「なんで私を置き去りにしたんだよ、天使を」と。

家族の物語であるスーパーナチュラルの神は、やはり家族の問題を抱えていた。そしてメタトロンの一世一代の涙ながらの訴え。

「私はいいが、あなたが愛してやまない人間たちを見捨てたのはどういうわけだ。彼らは最高傑作じゃないか。あなたよりはるかに優れている。確かに人間は弱い。彼らは騙し、盗み、破壊を繰り返す。失望の塊だ。しかし分け与える心がある。様々な芸術を生み出す。歌ったり踊ったり、愛することができる。一番の長所は、絶対に諦めないガッツだ。あなたは諦めるのか」

シーズン9では悪行を繰り返したメタトロンのこの変化は、二年の人間としての日々のたまものなんだろう。生きるために働かなくてはならず、食べたり寒さから守る衣服や家も必要で、病気や怪我を心配し、他者と上手くやって生きなくてはならない人間。毎日が天使よりはるかに苦行であり、それがゆえに数々の間違いも起こす。
けれどそんな中でも、人を思いやり自分を差し出すものもいる。メタもこの2年間に辛い目に合っただけではなく、人に親切にされたり労わられたこともあるんだろう。そしてちっぽけで無力な人間の勇気や忍耐、信じられないほどの立ち向かう心を見たんだろう。

その代表が我らがウィンチェスター兄弟であり、だからこそ彼らは神のお気に入りになった。
神もまた、チャックという冴えない作家の男を器にして、人間というものを味わった。喜びも冒険も、実体がなければできない。そして、家族を愛し、家族に傷つき絶望し、それでも共に乗り越えていくサムとディーンに神は特別な思いを寄せ、助け、また試練の続く人生に戻してる。兄弟と共にあると決めたカスティエルを生き返らせている。だが怒れる姉が解き放たれた今、自分は去る時だと決めている。
怒りと嘆きを越えて、神の真意を知ったメタトロンの表情が秀逸。

登場するのか議論され、チャックが本当にそうなのかも論議されてきた神の登場を、この二人の会話で終始させたのは英断でした。もとは舞台出身だというロブとカーティスの丁々発止ぶりも素晴らしく、コンでの歌唱も常連のロブの歌は、胸を打つ神の告白になった。
出番は少なくとも、いつものように人を助け、自らを省みない兄弟。煙を止めようとして吸い、変化して倒れるサム。弟と常に共にあることを選んだディーン。

チャックの歌にかぶせて、サムのポケットから現れる光るアミュレット。霧による変異は止まり、死んだ人々も甦る。自然災害に多くの犠牲者がいる現在、この美しいシーンに希望と願いを感じずにはいられない。

クソ真面目になったけど、今回はなかなかに感動したよ。脚本を読み上げた時カーティスさんは、
「選んだ理由はどうでもいい。あなたが私を選んだ！」というところで2回も泣いてしまったという。
入口の側にいて目についたから書記に選んだ。メタトロンの自負を打ち砕くような神のセリフに、傷つこうが返した言葉。人も天使も悪魔さえ、生きてるものはみな、特別なものとして選んでほしい。親に、尊敬する相手に、愛する者に。「お前は特別じゃなかった」と言われても、それでも「選んでくれた」ことが重要だと言えるメタトロンは、かつての悪役ではなく私達を代弁もしてる。兄弟は選ばれたことで苦難の道を歩まなくてはならないけれど、選ばれぬものは常に彼らを求め、その運命に嘆き、応援しないではいられないんだよね。


バンカーでのアイロンシーンはむろん萌えです(笑)　お家ができたので、FBI用ワイシャツもクリーニングではなく自分たちでアイロン。なんとなく兄が担当している気がする。サムの方が几帳面だが、日常のことはあまりしなさそう。幼いころからの癖で、ディーンが生活の面倒を見る習慣がついてそうだな。ビールを霧吹きに使っても(笑)　ただしバスルームの掃除とかは交代。萌える(特殊嗜好)

2話では一人で感染を浄化したサム。今回は聖なるオイルもなく間に合わなかったのかもしれないが、兄ちゃんがいると「ひとりでできるもん」が途端に消えてしまうサミーちゃん。そうなるともう、兄も“ちょっといいかも///のアマラ姐さんをサノバビッチ呼ばわりするという条件反射となる。ウィンチェスターの法則。赤さんをベビーシートから抱き上げるサムの手慣れ感がジャレを思わせてちょっとニヨニヨしました。

2013年のコンベンション中に脳卒中を起こし、しばらく療養していたロブ。シーズン10の200回記念でSPNに復帰し、シーズン11では神として終盤の出演、ほんと良かった！