寺本幸司氏著「音楽プロデューサーとは何か」~浅川マキ、桑名正博、りりィ、南正人に弔鐘は鳴る~
を読みました。
バックトゥザフューチャーの車に乗って、あの時代に入り込んだような新鮮さで、昭和40年代~50年代を旅させてもらいました。僕が若かりし頃、京都のアマチュアバンドからプロになって東京で生活、様々な体験をした頃の記憶と、場面と、匂いと、風がシンクロしたドキュメントと言うよりも私小説のような本でした。寺本幸司さんは当時、ちゃんちゃこのデビューを実現させてくれた小澤音楽事務所のグループ会社、モスファミリーの代表取締役でした。モスファミリーの六本木オフィスはオシャレで居心地が良くて、オフの時はよくそのオフィスに入り浸っていたように思います。いつも忙しそうな寺本さんには「何じゃこいつは!何でここにいつも居るんじゃ・・・」と思われていたと思います。でもそのおかげで浅川マキさんや下田逸郎さんともお目にかかれたし、下田さんには賭けポーカーで散々すられてしまいました(笑)。
私小説と言ったのは、このドキュメントが小説のように物語性が有るからです。アンダーグランドの女王浅川マキ、女流ロッカーりりィ、時代の寵児となったロックボーカリスト桑名正博、伝説のブルースロッカー南正人、全てのアーティストが超ユニークで、日本ロックの形を築いた人たちで、それを一人のプロデューサーが全て世に拡げたということでして、そのプロデューサー自身も超ユニークな存在だったことの証であろうと思います。僕はそんなユニークなモスファミリーという会社が好きでした。
栄枯盛衰、全ての人にそれがある様に、アーティストとして全国的に著名になった方々、またそのプロデューサーには、とても困難な(でも幸せ?)人生を背負うことになってしまう・・・。僕はこの本で、それでも音楽の力は凄い、歌は死なないことを教えてもらいました。頭のなかで彼らへの弔鐘が鳴り響いています。寺本さんの切なくて辛くて素敵な人生に敬愛をもって乾杯です!