大徳寺の托鉢
朝、目を覚ますと仏壇からお線香の香りがした。
程なく、遠くから「オー、オー、オー」という低い声が段々近づいてくる。
格子のかかった窓から外を眺める。
半円の編み笠を被ったお坊さんが五人ばかり傘地蔵のように一列に並んで
お腹のところに木の鉢を両手で持って歩いてくる。
目の前を通り過ぎた。
声がだんだん遠くなる。
家の前の砂利道には、家々で打ち水をしている。
向かいの山田のおじいちゃんが床几椅子に座って団扇で扇いでる。
格子戸のはまったお隣さんからカシャッ、カシャッと機織の音がリズミカル
に聞こえる。
しばらくすると、急に雲がかかって、あたり一面暗くなって、大粒の雨。
格子の埃や、外の埃が雨に濡れてすっぱい匂いが立ち込める。
雨の音で機織の音が消える。雷が鳴る、程なく雨が上がる。
透きとおった光の線が差し込んで、
庭の笹の葉に雨の粒が光る。