きらせん

仙台のきらめき










東北大学公共政策大学院准教授
佐分利 応貴

 「加美町アフター」

2008-05-30 22:12:57 | Weblog

  凹んだ頭と顔と心を治すヒマもなく、加美町へ。
  4月から新たな発足した政策推進室とのミーティング。
  加美町ワークショップの窓口になってくださった早坂総務課長も同席される。


  昨日の石巻日日新聞の夕刊に、東松島市のプロジェクトが1面トップで紹介された。
  

   こぢんまり始めるはずが、一気にプロジェクトは地元で有名になってしまった。
   ますますがんばらないといけませぬな、若手諸君。


   ひるがえって、加美町はどうか。
   昨年度の半年間のワークショップの活動で、町長以下町役場の方々には、かなり住民活動の重要性は浸透している。そして、実際に住民団体の方も、すこしずつ活動と成果を挙げつつある。だが、肝心の若手の盛り上がりはまだまだ。後からスタートした塩竃、東松島に抜かれてしまった。
      ワークショップの学生には、「自分たちが勝手に熱くなってもダメだ。1人でも地元で燃えてくれる人を見つけ、その人たちに走ってもらわないと持続しない。」と言いつづけていたが、結局町の若手とは十分意見交換できなかった。


   もちろん加美町も成果はあった。2月のワークショップの提言を受け、①佐藤町長以下加美町役場幹部が「バトンをしっかりと受け取った」と言ってくれたこと(当事者意識の発現)、②実際に4月から新組織を作り、組織の任務として東北大学公共政策大学院の提言内容の実現を正式に位置づけたこと(改革のエンジンの設置)、③宮崎地区では、学生の活動に刺激を受けた住民グループが、実際に地区センターの2階で展示会を開催するなど、活動の輪が広がりつつあること、などはワークショップとしては前代未聞の立派な成果である。8人の学生の情熱と行動の賜物であることは間違いない。だが、そうした動き=「情熱」が、どれだけの町民の人たちに伝わっているか。町役場職員に伝わっているか。

   この政策推進室に集まった精鋭5名は、情熱の伝道師、爆発の核・信管となれる人材である。午前中2時間かけてかなり突っ込んだ議論をし、地域活性化の一般法則について理解していただいた。早坂総務課長からは、「こういう話をもっと多くの職員に伝えないと」「先生と学生で講演会をやってもらえないか」という話も。
   5人の抱える仕事は膨大で、行政改革や全体計画、個別の特命案件など、町政全体に関わる。現状では「いっぱいいっぱい」でとてもワークショップの提言の検討を進める余裕がないかもしれないが、できるところから、少しずつ変えていっていただきたい。大事なことは、原課(業務を実際に担当している課)に、明確な目標を作らせ報告させること、その目標を役場が勝手に作るのではなく、子育て支援なら「いま子育てに苦労しているお母さん・お父さん」「これから子どもを作ろうと思っている夫婦」など、ターゲットである人と一緒に目標を作ることである。目標がないと施策は意味がないし評価ができない。そして、押しつけられた目標は支援ではなく迷惑である。一緒に目標を作り、相手にも当事者として動いてもらわないと。


  午後は加美商工会に呼ばれ、商店街活性化の懇談会。
  花楽市商店街は、イベントなどはいろいろやっているが、みな疲れている。で、県の予算もついたので事業をどうするか、というもの。

  商店街の方を中心に、町の商工観光課、加美商工会職員らが集まって議論をした結果、
 ・ 商店街に危機感はある。
 ・ だが、実際に活動するのはせいぜい4~5件。
 ・ 商店主が望んでいること(成果指標)は、「自分の店の売上げが増えること」
   イベントで店の前に人がきても、呉服屋にとっては何も関係がない。
  (イベントの客層は呉服を買う客層と全然違う。)
 ということが分かった。

  ここで重要なのは商店主の行動原理である。
  意欲を起こし、活動につなげ、成果を出さないと持続しない。
  ということは、どんなイベントをやっても、売上増につながらないと、早晩先細りとなるということ。すずめ踊りのように「楽しい!」「またやりたい!」と思えるものでないと、最初の1回2回はがんばっても、そのうち「またイベントの時期か」「面倒だな…」となってしまう。

  売上を上げるためには、論理的には客単価を上げるか、入店客を増やさないと。となると、イベント時に店の前を通り過ぎるのではなく、入店してもらうための工夫が必要だ。「知らない」「入りにくい」を1人でも減らすような工夫。店の前でワゴンセールをやるとか、外から見える特売品の張り紙をしておくとか、中の照明を増やすとか(暗いと入りにくい)。PTAなど今まで商店街に全く関係がなかった人たち(もうある?)と友達になるとか。閉鎖的なイメージがある商店街も、逆に知り合いがいるとぐっと入りやすくなる。客としてつかまえるのではなく、友人を増やす。すると固定客になってくれる。
  量販店に固定客ももっていかれるのが実態ではあるが、やはり地道に客の顔を覚えるのが商売の王道。その役に立つイベントであれば、小さな成果が期待できる。

  加美町、M2の学生達が落ち着いたら、みんなで挨拶にいかねば。
  (でも任期はあと1ヶ月…)


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