きらせん

仙台のきらめき










東北大学公共政策大学院准教授
佐分利 応貴

 「世界を救う」

2007-08-15 23:09:40 | Weblog

  終戦記念日。
  各地で平和式典が行われる。
  
  だが、残念なことに、いくら平和式典をやって、反省したり祈ったり誓ったりしても、戦争を防ぐことはできない。ちょうどいくら「明日運動会だから晴れますように」と祈ったりしても天気が変わらないのと同じ。
  祈ってる暇があったら、どうしたら戦争を防げるのかを本気で勉強した方がいい。
  過去の戦争はなぜ起こったのか、どうしたら(結果論でなく)当時の社会情勢の中で防げたのか、事前に防止システムを作っておくとしたらどうすれば良かったのか、など。
  どうしたら太平洋戦争は防げたのか、どうしたらイラク戦争は防げたのか(祈って防げるものならやってほしい)、イラクで2003年に亡くなった多くの子供たちを含む約1万人(Iraq Body Countのページよりhttp://www.iraqbodycount.org/press/archive.php)の犠牲を防げたのか、でも日本では毎年3万人が自殺しているがそれはどうなのか、等いろいろと考える必要がある。

  果たして「世界を救う」ことはできるのか。

  ウルトラマンとか、スーパーマン、スパイダーマンとか、バビル二世とか、世紀末救世主伝説とか、数々のスーパーヒーローが世界を救うけど、なかなか持続的(sustainable)でない。というか、世界が救われたらシリーズが終わってしまう。それに一人ではいかんともしがたい。ある場所で女の子が橋から落ちるのを救っても、地球上の他の国で溺れている女の子を救うことはできない。(スーパーマンはシリーズ第1話で時間を過去に戻して死んだ恋人を蘇らせるけど、ここまでくるとパロディである。)

  「世界を救う」ことは簡単でない。これは探索問題だから。
  でも「世界が滅びることを防ぐ」のはより簡単である。これは逸脱問題だから。

  ※問題は大きく3種類に分類される。
   1)逸脱問題=望ましい状態から逸脱した状態(風邪をひいたとか)
   2)未達問題=望ましい状態にまだ達していない状態(試験に受かる力がないとか)
   3)探索問題=何が問題か分からない状態(どの会社に就職したらいいかとか)
   一般的に1,2の解決策を考えるのは易しく、3は難しい。

  だから、世界の滅びるネタを探し、それを一つずつツブしていく行為、これこそ「世界を救う」行為に他ならない。だから地球の温暖化が滅びるネタなら、それの解決のために何ができるかを考え、行動することだ。

  ※ただし、社会学の根本原理「個の行為の正しさが、集団の正しさになるわけではない=合成の誤謬」がある。一人一人が節約すると、国は不景気になる。農家が豊作だと、価格が暴落して農家は赤字になる、一人一人が省エネすると、エネルギー価格が下がって革新的なエネルギー開発のインセンティブが失われる、など。


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