きらせん

仙台のきらめき










東北大学公共政策大学院准教授
佐分利 応貴

 「So What?」

2008-01-15 21:50:02 | Weblog

  日本SHOCK!(食)フェア、開催。
  朝8時半から、TBCラジオでオンエアされた。

  
  真ん中がTBCラジオの高橋さん。
  左隣が取材を受ける保理君。正面ではスタッフの方がストップウォッチを示している。オンエアは秒刻みのスケジュールなので、こういうことになる。

  さて、日本で自給できる食メニューだが、
  朝:ごはん1杯(精米75g分)、じゃがいも2個、ぬか漬け1皿(野菜90g)。
  
  味噌汁は大豆が97%輸入なので×。さみしい。

  昼はこちら。さつまいも2本、じゃがいも1個、リンゴ1/4切れ。
  
  いもづくし。

  夜はやっとタンパク質登場。
  ごはん1杯、さつまいも1本、魚一匹(84g)。
  
  これは、農水省の想定する「海外から食料輸入が途絶した場合」を想定した毎日の食事。全部で1日2020kcal。成人男子にはやや少なめだが、栄養失調で倒れることはないそうだ。(by 生協栄養士の穴田さん:写真中央)

  
  
  東北放送(TBC)の気象予報士である斎藤さんも取材に来てくださった。
  TBCでは、夕方のニュースでも報道。

  明日も多くの取材が予定されており、波及効果はなかなかのもの。
  だが、「So what?」(それがどうした)。

  広報だけでは最終目標の実現はできない。
  最終目標につながる次のアクションを示さなくては。
  (これをシェイピングという。)
  ちょうど「インフルエンザがはやっているから手を洗うべきです」と宣伝して、聞いた人が「そうだねぇ」と思うだけでは、何の対策にもならないのと同じ。ちゃんと手を洗わせなければ。今回「そうだねぇ」と思った学生やお客さんに、次にどういうアクションを求めるのか。それ(心理学でいう「態度変容」)がなかったらただの一過性のお祭り。記念イベントにすぎない。


  ちなみに、上記メニューを毎日食べる(ちなみにタマゴは1週間に1個、みそ汁は2日に1杯、牛乳は6日にコップ1杯、肉は1日12gなど)ことを国民が我慢しさえすれば、今でも食糧自給率は100%なのである。とすると、これでいいじゃないか、という声も出てくるだろう。メタボにならないし。それに、この農水省の試算では、カロリーを確保するため田んぼを潰して畑にして、いもを生産している。だったら、田んぼは守る必要はなくて、いざというときにいもが作れる耕作放棄地にしておけばいいじゃないか、とも言える。少なくとも、「米を守れ」という主張は論理的には出てこない。さぁどうする??

  いずれにせよ、前への浸透(一人一人の問題意識向上)、横への波及(多くの人への周知)、上への展開(実際の農政や日々の我々の食生活にどう反映させるか)を立体的に考える必要がある。
  例えば、浸透率を上げるには、クイズを一緒にやる(相手に考えさせる)、それぞれの食物の自給率がわかるビラを作るなど。
  波及を増やすには、福田総理に食べてもらい、全国ニュースで放送してもらう(これは農水省で仕掛けられる:農家の票を獲得するためには有効なパフォーマンスだろう。宮崎の東国春知事はこれが得意。)、全国の生協で提供してもらう、小中学校の給食で強制的に食べさせる、など(この記憶はたぶん一生残るだろうし)。
  上への展開のためには、例えば外食産業のメニューに自給率を計算して表記してもらうなど。心ある人は安全面からも自給率の高い国産品をふんだんに使ったメニューを選択するはず。

  ただ、こうした取組も、市場自由化論者に言わせれば「市場をゆがめ、経済の相互依存関係を破壊するもの」とバッサリかも。「マクドナルドのある国同士は歴史上一度も戦争をしていない」とも言われるように、ある程度の文明水準の国が、相互依存関係にあれば、むやみに戦争はできないだろうから。

  
  午後は公共政策大学院ワークショップ。
  提言まで残り1ヶ月。就活も忙しくなっており、十分な時間がとれないなかで、どう仕上げるか。
  大学院は「自ら機会を作り、機会をもって自らを変える」場である。与えられる作業をこなすのは大学まで。大学院は、自分たちで動かない限り、何も得られない世界である。がんばってほしい。
 

    


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3 コメント

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賛成 (気象予報士・斎藤恭紀)
2008-01-20 11:56:59
先日は取材をさせていただき、ありがとうございました。日本の農業が直面する問題を一般の方に周知させるのにとても効果的なイベントだったと思います。

自給率低下の問題って、農政が戦後の消費者の嗜好の多様化や経済のグローバル化などの大きな流れに全く舵をとっていなかったツケが回ってきたのでしょうね。

これから、日本の農業は高齢化による疲弊・少子化、一方で世界は人口の急増による食糧不足で日本の農業は危機的なステージに向かう可能性大です。これから10年の間に「多様・多品目生産へのシフトチェンジ」、「安全・おいしいという日本の農作物のバリューを世界に広める」、「農業が国土の保全や地球環境を考えるうえで重要な役割をになっているということを農家や消費者に認知させること」など農政のハンドリングを劇的に変えなければ、農業だけでなく外交、健康、経済、防災などあらゆる面で危機的状況を迎える可能性もありますよね。
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参考にさせて頂きます。 (食糧安保WS・保理利光)
2008-01-20 22:38:01
佐分利先生、斎藤様、先日は本当にありがとうございました。日本SHOCK!フェアに留まらず、今後も各地でこのような取り組みが行われるようになってほしいです。熊本市議の落水さんという方もいらっしゃって、熊本市内の小中学校でこうした取り組みを広げれるように働きかけていくとのことでした。千葉・長野などからも、資料問合せの連絡を頂いております。


佐分利先生への答えは、21日の最終報告会にて。斎藤様のご意見は、この後、私が代表を務める公共政策研究会農政WSでの最終報告(提言先:農水省・宮城県)を現在作成中ですので、是非参考にさせて頂きます。今後もよろしくお願いします。
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Unknown (k)
2008-01-21 23:43:30
21日の報告会も拝見しました。
16日には昼食をいただきました。
すばらしい取組で、食事もさせていただきましてありがとうございました。

遅ればせながら感想を述べると、16日に昼食をいただきましたが、何か解説がもう少しほしいというのが正直なところでした。
今日のきらせん先生の解説ではカロリー確保のために米作を減らして芋が増えるというところの説明がありましたし、農林水産省の資料やきらせん先生のここでの解説などを見れば卵や牛乳や味噌汁などがどの程度食べられるかもわかるのですが、16日にせっかく生協にいって食事をしても、「なんか厳しいなあ」とは思いますが、「これはなんでこうなるの」というところの糸口が見えなくて・・・。それを食事の機会だけに求めるのは無理かもしれませんが・・・。ですが、せめて、このページを見なさいといった程度の小さいチラシでも配るとか方法はなかったろうか・・・。
現状で自給できているとされる食物がなぜそこでは提供されないか、といったあたりが説明してもらったほうが納得しやすかったと思うのですが。
よりカロリー的に効率がよいものに転作するということはわかりましたが、それ以外の点、たとえば飼料については輸入を考慮するのか、それ以外の農業生産活動や食料品の輸送に必要な輸入品までは考慮しないというのか、などやっている人には常識かもしれませんが、普通はわからないんじゃないかなという風に思いました。
 また、メニューに出た食材を毎日になるのか、それ以外もあるのか、なども食べてみるだけではショックの度合いもよくわからないところもあると思いました。
その日がそれでも別の日に別のものを食べられるなら何の問題もないという気もしますし。日本産のその他の食物との関係はどうなんだろうとか。
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