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冬のソナタに恋をして

拒絶


次の日から、リノベーションの仕上げは最終段階に入った。山頂にあるレストランで、ミニョン・ユジン・キム次長・チョンアの4人は、照明について打ち合わせをしていた。今日も山は晴天で、天井まである開放的な窓一面からさんさんと日の光が降り注いでいた。そのあと、ミニョンとユジンの二人はふもとのスキー場に併設されたホテルのカフェに移動して、内装の打ち合わせをした。

「ねえチュンサン、いつ照明は来るのかな?」


ユジンはチュンサンの記憶が戻ってから、ミニョンのことを二人きりのときはチュンサンと呼んでいる。しかし、ミニョンは見当たらずに、ユジンはあたりをきょろきょろと見まわした。すると、誰もいないはずのカフェの片隅からピアノの音色がしてきた。それは二人の思い出の曲『初めて』だった。すると突然ミニョンが結婚行進曲を弾きながら叫んだ。

「新婦、入場」


ユジンはミニョンのおふざけに付き合ってにやりと笑った。そして、誰もいない空中に左手を伸ばし、見えない介添え人にエスコートされて、しずしずとピアノの方に歩いて行った。ユジンはピアノの横まで歩いてくると、にっこり笑うミニョンの前で、すました顔で一礼して見せた。すると、突然ピアノの音が止まった。

「何よ。最後までやろうと思ったのに。どうして止めるの?」

しかし、ミニョンの顔は真剣だった。

「ねえ、春川に行こうか?」

「えっ?」

「お母さんに会って、結婚のお許しを得ようよ」

ミニョンの想い付きのお遊びは、思いがけずに真剣な話に変わった。二人はにっこりと微笑んで、春川に旅立つ準備を始めるのだった。


キム次長が、ホテル内のミニョンのオフィスに向かうと、ミニョンはいそいそと支度をしてた。

「何やってるんだ?」

「春川にユジンのお母さんに結婚の挨拶に行きたいんです。先輩、後の処理はよろしくお願いします。」

これにはキム次長もあきれるやら喜ぶやらで、ミニョンを送り出した。

「先輩、僕たちが戻るまでにちょっと頼みたいんですが。」ミニョンは悪びれずにキム次長に頼みごとをした。そして、キム次長はその日半日かけてある準備をする羽目になるのだった。


その日の夕方、ミニョンとユジンはユジンの実家に来ていた。「初めてのことだから緊張するな」というミニョンを、ユジンが「きっと大丈夫」と落ち着かせていた。二人はギョンヒの前で神妙な面持ちで座っていたが、ギョンヒはいつになく怖い顔つきで二人と目も合わせなかった。二人ともびっくりして戸惑ってしまい、顔を見合わせて黙ってギョンヒを見つめた。ついにミニョンが口を開いた。

「お義母さん、私はユジンさんと結婚したいと思っています。どうか許可をください。」

しかしギョンヒはミニョンを見ようともせずに、そっぽを向いてしまっている。たまらずにユジンも言葉をつづけた。

「お母さん、どうか私たちを許してください。」

「お母さん、私はユジンさんを幸せにする自信があります。どうか許してください。」

しかし、ギョンヒは硬い表情のまま、うつむいて言った。

「そんなこと急に言われてもわからないわ。」

「お母さん?」

「今日はとにかく帰ってください。」


ミニョンはなおも食い下がって、真剣な顔で言った。

「私をお気に召さないかもしれません。今までユジンさんを散々苦しめて苦労させました。しかし、これからは幸せにできるように努力します。努力しますからどうか、、、」

しかし、ギョンヒはそれを遮った。

「そうじゃないの。そんなに現実は単純じゃないの。あとはユジンと話すからあなたは帰ってください。」


ギョンヒはミニョンを悲しそうに見ていった。そして席を立つと部屋を出て行ってしまうのだった。後に残された二人は予想外の展開にびっくりするやらショックやらでお互いに顔を見合わせた。仕方なくユジンはミニョンを外まで送っていった。玄関の階段を降りると、ユジンとミニョンは同時にお互いの名前を呼んだ。そして、「大丈夫?」とお互いに声をそろえてきいた。それだけ二人とも、お互いのことを心配していたのだった。

ミニョンは「大丈夫」と気丈にふるまうと、強くユジンを抱きしめた。しかし、ユジンはミニョンのウソを見抜いていた。

「チュンサン、嘘でしょう?こんなに鼓動が早いのに、平気なわけないわ。理由はわからないけど、きっと私が説得して見せるから。たぶんサンヒョクに遠慮して、かたくなになってるだけだと思うの。だから私がちゃんと話してくるから心配しないで。」


ユジンは真剣な顔でミニョンに話した。しかし、ミニョンもまたユジンのウソを見抜いていた。

「ユジンも嘘ついてるだろう?全然平気じゃないだろ。だって体が震えてる。」

二人は悲しそうに微笑んで、もう一度抱きしめあった。お互いの鼓動が、早鐘のように真ん中で鳴っていた。

「ねぇ、わたしたちどうしてこんなに不安なんだろう?」

「大丈夫、きっとうまくいくから」

しかし、ユジンもミニョンも何かが違うとわかっていた。あのギョンヒがあれだけかたくなに結婚を許さないと言っている。これは何か事情があるのだ、二人ともいいようのない不安に包まれたまま別れるのだった。

コメント一覧

kirakira0611
@usagimini さま、ありがとうございます😊
アンドレキムさんのショーですよね。ちゃんとは観てないですが、どなたかがブログとかyoutubeにアップしたものは見た記憶があります。
お写真持ってらっしゃるんですね。見たいですー。でも確かに著作権はありますよね。ちなみにわたしのブログは著作権に引っかかりまくりですが(笑)よくブログサイドも何も言わないといつも感謝してます。でも、みなさん結構著作権侵害してるので、特にアニメやスケーターや芸能人ブログは、広告で釣りで記事を書かなければいいのかなーと勝手に思ってます。もし機会がありましたらよろしくお願いします。
いろいろご存じでスゴイです!
ありがとうございます😊
kirakira0611
@samsamhappy さま、ありがとうございます😊
それは大変ですね。わたしも時々蓄膿になるので、後鼻漏の辛さは分かります。それで喘息になるんですね。どうぞお大事になさってください。ちなみにわたしもコロナの後遺症で2ヶ月咳が止まらなかったです。会社の人で罹患した人はみなそうだったので、気管支の炎症がひどいタイプのウイルスなんですね。
息子さんたちも喘息だったんですねー。小さな頃の喘息って本当に辛いし、怖くて親は絶えず心配ですよね。良くなって良かったです!
うちも吸入器を持ってます。同じく小学生になるころにはほぼ消失してました。ところがコロナ後遺症で再発、夏から2回目の発作です。昨日は小児科で久しぶりにステロイドをいただいてしばらく吸入の日々が続きます。予防薬の飲み薬も始まりました。でも、治療法がある病気だし、多分しばらくしたら後遺症も治ると思うので、ぼちぼちいきたいです。
おかげさまで、昨夜はぐっすり眠りました。
ありがとうございました😊
どうぞお身体をお大事にしてくださいませ。
usagimini
こんばんは。返信ありがとうございます。
そのファッションショーの画像を、私はたくさん持っていますが、ご覧になったことはありますか? 仲良さそうに寄り添ってランウェイを歩いていますね。
冬ソナファンの声に応えるように、韓国では有名なデザイナーが二人のために衣装をデザインして、本人たちにモデルになってもらった、、、とか。
ショーの画像をアップしていいなら、ご覧になりい方に、自分のブログにアップしちゃうのですが… 著作権、どうなんでしょう。
だいたい、画像をコピーできた当時は、著作権なんて厳しくありませんでしたから。
samsamhappy
@kirakira0611 さん、おはようございます。
お子さんの喘息心配ですね。
我が家の息子2人も一歳頃まで
喘息様気管支炎で治療を始め
続いて気管支喘息で6歳まで吸入器を買って
お薬を処方していただいて
自宅や出先で吸入治療しました。
そのおかげで、学校に入ってからは
克服できた様で元気に大人になりました。
その逆、私は妊娠中にアレルギー性鼻炎を発症、現在では後鼻漏による刺激で喘息を発症する様になり、吸入薬で予防していますが
今年は調子が悪いです。コロナにはなっていませんが、アレルギーが強いと感じます。
季節の変わり目、冬場は化繊の服も増え空気の乾燥もあり喘息もちには辛いです。
どうぞ、お大事になさってあげてください。
kirakira0611
@breezemaster さま、おはようございます😃
秋が深まってきましたね。寒くなりました。
冬のソナタは本当にピアノや音楽が上手に使われてますね。場面と音楽を同時に思い出すくらいです。
ここからどんどん悲劇が加速していくので、書いていて辛いです。
今日は息子が喘息になってしまい、朝仕事に遅刻していきます。吸入して祖母に預けていきます。コロナの後遺症で治った喘息が風邪のたびにぶり返すようになりました(^_^;)コロナは恐ろしいですね。
今日も一日素晴らしいものになりますように。
breezemaster
おはようございます^^
ピアノ、色々なシーンで、素敵な展開、思い出す展開など、
冬ソナに欠かせないものですよね。
そして、音楽がこんなに残るドラマは少ないです。
どれも思い出になる曲ですよね
喜びから、悲しみへの展開、もし初めてみたら、
ジョンヒの気落ちが分かるとは言え、なんで???
この返事、普通、サンヒョクと別れ、すぐ結婚、そう思いますよね。
その背景のストーリーが分かっている今は、
余計、可哀想な二人の気持ちが使ってきますね。
知っていても、こうやって読むことで、感じる悲しみのほうが
大きいときがあります(T_T)
kirakira0611
@hinata_bocco さま、だんだんと嫌な感じに、、、。書いていて気分が悪いです。
ボッコさま、プリマドンナ、楽しく読みました。去年オペラ座はみたので、思い出して読みました。
kirakira0611
@samsamhappy さま、ありがとうございます😊
こうやって書いてるとユジンの父って最悪だなぁと思ってしまいますね。婚約していて、数ヶ月後に結婚するって?ですね。
サンヒョク父もおっしゃる通りタチが悪い鈍感なタイプですね。
略奪婚なのに、ずいぶん苦しめられたってどの口が言う?加害者が被害者ぶる、韓国らしいなぁと観てました。
ちなみに子どもが喘息で吸入中です。コロナになってから、なくなってた発作が出るようになりましたね。
コロナは後遺症が怖いです。
ありがとうございました😊
hinata_bocco
これは、胸が痛いです_(._.)_
この展開は、こう来るなあと、
わかっていても効きますよね_(._.)_
samsamhappy
夜分に失礼します。
いよいよ親達の信じられない程身勝手な
行動が子供達を苦しめ出しますね。
略奪婚の成れの果てですね。
結局、ユジンの父がだらしなかったって事かな😂20年以上前の話でこんなにも。
サンヒョクの父も、思慮の浅い教授ですよね😄良い人ぶって1番タチが悪い事してる🤭
kirakira0611
@usagimini さま、ありがとうございます😊やっぱり噂があったんですね。ググった記事に、ペヨンジュンさんについて韓国人記者が書いたシリーズがありました。そこ直後にオーストラリアでファッションショーに出た二人が一緒に出国したり、お揃いの携帯ストラップをつけてたとかかれてました。あと、あまりに噂になってしまい、ヨン様がHPでドラマが終わってもチェジウさんのことはもっと知りたいと思ったこと、でもあまりに噂が先行してしまい、付き合うまで行かなかったこと、を書いたと書かれてました。ちなみにヨン様は今ハワイに住んでるらしいですよー。
息があっていて良いドラマになりましたね!相手役の相性って大事ですね。
ありがとうございました😊
おやすみなさい💤
kirakira0611
@hananoana1005 さま、そうだ、思い出した。この部分だけは冬のソナタの小説(脚本家バージョン)で確認したんです。そしたら、ギョンヒはここに書いてあることしか不安に思ってないことがわかって、書き直したんです。脚本家が言うんだから、そうなんですよー。ちょっと疑問ですが。
ありがとうございました😊
usagimini
こんばんは。ここまで進みましたね。
ユジンとチュンサンのように、チェジウさんもペヨンジュンさんもお互いに惹かれてたんじゃないかって噂があった、っておっしゃってましたよね。
チェジウさんがインタビュー番組の中で、冬ソナは、「順撮り(物語が進む通りに撮影)だったので、感情移入しやすかった。」って答えてましたから、そうだったかも、って思えちゃいますよね。このシーンもそんな一つかなあと。
kirakira0611
@hananoana1005 さま、ありがとうございます😊
わたしもヒョンスを疑ってるのかと思ったんですけど、次の話でユジンに話してるのを見ると、ただミヒに遠慮してて、負い目があるだけっぽいです。わたしこそ経験がなくて分からないですが、本当に自分の旦那に隠し子がいたら、もっと喚いてそうですし、そんなセリフもあるはずだし、もっとミヒに食ってかかるはず。だから、つゆほども疑ってないとみました。多分。でも普通は逆算して誰の子か推測するはず、、、。みんな子どもが同級生なんだから。そしたらもしかしてって思うはず、、、。すごく不思議でたまりません。
ありがとうございました😊
hananoana1005
こんばんは(´▽`*)
お忙しいキラキラさん、更新有難うございます(^^♪

このシーンは、どうだったのか?ハッキリしないんですが、・・・
ギョンヒはチュンサンがヒョンスの子だとは思っていないのですよね~ヒョンスを信じて疑ってないのですよね~
ミヒが許さないから?
ミヒとヒョンスが婚約していたから?
実際、どうなのだろう?
複雑過ぎて、私自身の人生経験不足でギョンヒの心を理解出来ないです( ;∀;)
キラキラさんはどの様に考えますか?
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