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冬のソナタに恋をして

凌辱



サンヒョクの母親チヨンは、煮え切らないユジンの態度が面白くなくて、自分の誕生日なのに、ついユジンに当たってしまった。チェリンが耳元で吹き込んだ策略により、仕事現場で息子をないがしろにして、他の男性と浮気しているのではないかと疑っていた。楽しいはずのこの日に、そんな女がここにいることが許せなかった。

きっかけはユジンが母親からのプレゼントをが渡したときだった。チヨンはとても嫌そうにお礼を言った。
次にユジンが料理の補助をしようとしたら、「あなたは家族ではないから入らないでちょうだい。」とぴしゃりと言われたことだった。ユジンは傷ついたが、サンヒョクの取りなしで気持ちを堪えた。
そして、チヨンが自分の誕生日にもかかわらず作った料理を前に、夫のジヌが言った言葉だった。
「今年は君に苦労させたけど、来年の誕生日はユジンの手料理を食べられるかもしれないな。楽しみだなぁ。」
すると、チヨンはユジンを睨みつけて、
「どうかしらね。あなた、サンヒョクと結婚する気あるの?」と言い放ったのだ。
サンヒョクとユジンは目を丸くしてチヨンを見つめた。
ジヌは無邪気に
「どうしたんだ、急に。まだ婚約式のことを怒ってるのかい?」
と聞いたがチヨンはケーキを持ってくる、と言って席を立ってしまった。ユジンは慌ててチヨンの後を追って台所にいき、ケーキを皿にのせようとした。
そんなユジンを睨みつけて、チヨンはなおも詰めよった。
「噂で聞いたんだけど、あなた、スキー場で誰と仕事をしているの?」
ユジンは俯いて答えない。チヨンの言わんとすることが分かりすぎて、その敵意を一心に浴びて、何も言えなくなったのだ。
それを見て、チヨンはさらに冷笑を浴びせた。
「呆れた。噂は本当だったのね。あなた、サンヒョクじゃなくて、他の人が好きなんでしょう?」

激しく詰め寄るチヨンの前にサンヒョクが立ち塞がった。
「母さん、誰からそんなこと聞いたんだよ。誰が言ったんだよ?!」
チヨンは怒りに震えるサンヒョクに呆れていた。
「情けないわ」
ジヌが間に入るけれど、2人はヒートアップしてしまい、手がつけられなくなっていた。
「母さんがユジンに酷いことを言うからだよ。ユジンのどこが気に入らないんだ」
するとチヨンが思わずサンヒョクの頬をなぐった。殴ったチヨンもびっくりして、あわてたけれど後の祭りだった。
「じゃあ聞くけど、あなたはなんでこんな子に夢中なの?どこがいいの?わたしははじめからこの子が気に入らなかったわ。」
ユジンがビクッと表情を曇らせたのを見て、見かねたジヌが止めに入ったが、サンヒョクは怒りでコントロール出来ない状態だった。
「行こう」と言うと涙ぐみながら「こんなのダメよ」と叫ぶユジンを無理矢理引っ張って、家を飛び出した。そしてなおも引き留めようとするユジンを車に押し込んで、車は走り出した。ユジンの耳に
「死んでもあの子を嫁とは認めないから‼️」と言うチヨンの声がこだました。ユジンは、全て自分のせいで誕生日がめちゃくちゃになってしまったと涙が止まらなかった。


チヨンは呆然と2人を見送った。今まで母親を誰より大切にしてくれたサンヒョクがユジンを庇って、誕生日に大げんかをしてまで、出て行ってしまった。大切な息子があの女に取られてしまう、その後ろ姿を見て悲しみが膨れあがった。それはいつしかユジンへの憎しみに変わっていた。

ユジンはサンヒョクの車に乗せられ、あてのない夜中のドライブを続けていた。
うちと方角が違う、と言っても怒りに満ちたサンヒョクは、全く取り合ってくれなかった。

ふいに車を川べりに止めて、サンヒョクはタバコを吸った。しきりに帰ってチヨンとジヌに謝ろうと言うユジンの言葉を無視して、おもむろに質問した。
「ユジン、君は嘘がつけないだろう。君とイミニョンはみんなが噂してるだけで、関係者ないのか?答えてくれ。君にとってイミニョンは何なんだ?君はヤツが好きなのか?好きなのか?」
サンヒョクの目にはうっすら涙が浮かんでいた。
しかし、ユジンは何も答えない。サンヒョクは違うと言ってほしかったのに、ひたすら困った顔をして見つめてくるだけだた。ユジンはサンヒョクの辛そうな顔を見ながら思った。嘘はつけない。自分は男性としてサンヒョクを愛してはいないのだと、はっきりと悟った。サンヒョクに罪悪感を感じた。自分の気持ちを隠すことが出来なくなりはじめている。
サンヒョクの目にますます涙が浮かび上がり、絶望の色が浮かび、ユジンを引っ張って、再び車に押し込んだ。

それからの車内はますます空気が冷え込んだ。サンヒョクは怒った顔をして運転している。そして、一軒のホテルの前で車を止めた。ユジンは「こんなの間違ってる。帰らせて。」と懇願した。しかし、サンヒョクは「君はイミニョンと山荘で一夜を過ごしただろ。今夜は帰らせない」と言い切った。ただ吹雪に阻まれただけで、むちゃくちゃな論理だったが、言い返す気力もなかった。サンヒョクは嫉妬で我を忘れている。するとふいにユジンの携帯が鳴った。ユジンはミニョンの顔を思い浮かべて、助けてほしいと思いながら出ようとした。するとサンヒョクはユジンの手から携帯を奪って、自分のポケットに押し込んだ。
「二人の夜を誰にも邪魔させない」

サンヒョクは、つもり積もった想いが今にも爆発しそうだった。イミニョンの告白、そして余裕のある眼差し、ユジンの煮え切らない態度、時折見せるミニョンへの熱い視線、2人の親密な様子、母親の怒り、すべてが許せなかった。自分はユジンの婚約者なのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。彼女は僕のものなのだ。
どうせ結婚するのだ。今夜ユジンを自分のものにしてしまおう。そうすれば、ユジンが誰の女なのか、ミニョンにも母親にもユジンにさえも思い知らせてやれる。

サンヒョクは強引にホテルに入り、部屋の中にユジンを連れ込んだ。ユジンはずっとやめてと懇願したが、その手をぐいぐいと引っ張った。今まで我慢を重ねた欲望を今夜は抑えられそうもなかった。
それでも、サンヒョクはあまりに緊張してしまい、怯えたようにソファーに縮こまるユジンを前に、缶ビールを何缶も開けた。ユジンはそんなサンヒョクに耐え切れず、顔を背けたままバスルームに行くと言って、席を立った。サンヒョクは自分はソファーで寝ると言ったけれども、到底信じられなかった。

一方でミニョンは、キム次長に誘われて、飲みに付き合っていた。ユジンが帰って来ない現実に、焦りと混乱でおかしくなりそうだった。キム次長はビールをひたすら飲んでいたが、ミニョンはなぜか飲む気になれなかった。「頭を冷やしたいから。」と言って、水を飲んでいた。あまりに、ミニョンが辛気臭い顔をしているので、キム次長が絡んできた。
「お前さ、何か悩んでいるなら素直に喋っちまえよ。いつもベラベラおしゃべりなくせに、肝心な事を言わないんだからさー」
そして、勝手にソファーで寝始めた。キム次長も本当はユジンのことについて悩むミニョンを慰めたかったが、上手く言えなかった。
ミニョンは、独り言のように呟いた。
「僕だって言いたい。
あいつと一緒にいるなって。
あいつの手を握るなって。
抱きしめられるなって。
微笑むなって。
あなたを本当に愛していると伝えたいのに。」
しかし、その声は誰にも届かずに、宙に消えていった。


ユジンがバスルームの中でどうしようか途方にくれていた。抵抗する気力も失せ始め、鏡を見ると情けない自分の顔に、涙が出てきた。するとサンヒョクが取り上げたユジンの携帯が鳴り始めたのが聞こえた。ミニョンからだった。サンヒョクは冷たい口調で
「今夜ユジンは僕と一緒です。ユジンを帰しません」それだけ言うと電話を切った。
すると、バスルームに入っていたはずのユジンは、血相を変えて出てきて、自分の携帯を取り返した。そして、汚い物を見るような目で自分を睨みつけた。その目は怒りに燃えていた。

その目をみた瞬間、サンヒョクの中で何かがプツンと切れた。
「ミニョンさんに2人でいるのを知られたくないのか!」
気がつくとユジンの唇に貪るようなキスをしていた。ユジンがやめてやめて、と叫んでいるのもかまわず、ベッドに押し倒した。そしてマフラーを剥ぎ、ブラウスのボタンを引きちぎり、ブラジャーの中の胸に手を入れようとした。
その瞬間ユジンと目があった。ユジンの目は悲しみと恐怖でいっぱいで、まるで知らない人を見るように、呆然と自分を見つめていた。涙でぐしゃぐしゃの澄んだ瞳を見つめると、すさまじい罪悪感が襲ってきた。



ユジンは酒臭い息で無理矢理キスされて、気がついたら押し倒されて、身体を抑えつけられ、パニックになっていた。口の中に無理矢理舌が突っ込まれ、かき回されて、今にも吐きそうだった。首筋に荒い息を感じ、荒々しく舐め回されると、そのヌラヌラとした感覚の恐ろしさで涙が溢れ出し、声も出せなくなった。

サンヒョクを恐怖の眼差しで見つめると、彼が一瞬怯んだすきに、ユジンはサンヒョクを押して、携帯だけを握りしめて、部屋を飛び出した。早く、早く逃げなければ。ミニョンさん、ミニョンさん、ミニョンさん、助けて。ユジンは必死でホテルの廊下を走り抜けた。胸もとははだけて、シャツのボタンは吹っ飛び、マフラーは落としたらしかったが、そんなことは構わなかった。全身が粟立ち、恐怖で涙が止まらなかった。そしてタッチの差でタクシーに乗り込み、サンヒョクをかわした。あとはどこに行くのかアテもないまま、タクシーを走らせてもらい、ポケットのクシャクシャの札で行けるところまで行き、タクシーを降りた。

そこは、昔春川でチュンサンが殴られたときに、2人で座って手当をしたイルミネーションのある噴水によく似ている場所だった。チュンサン、チュンサン、チュンサン、ユジンは猛烈にチュンサンに会いたくなった。そのとき、ユジンの携帯が鳴った。ユジンは静かに通話ボタンを押した。

一方サンヒョクはユジンを追いかけたものの、タッチの差でユジンを捕まえることは出来なかった。取り返しのつかないことをしてしまった、もうユジンとは元には戻れないだろう、サンヒョクは頭を抱え込んで、いつまでも動けずにいた。もっとも追いついたところで、ユジンは許してくれないだろうし、泣き叫んでパニック状態になっただろうが、、、。

ユジンはミニョンと電話で話していた。
「ミニョンさん、わたしどこに居るか分からないんです、、、ソウルホテルにいて、、、タクシーに乗って、、、」涙が溢れて、ショックでガタガタ震えてしまい、言葉が続かなかった。ミニョンは
「すぐに行きます」と言いながらも、丁寧にいる場所をユジンから聞き出して検討をつけた。そのとき、ミニョンは寒いスキー場で頭を冷やしていた。この前ユジンが泣きじゃくっていた場所で、今度は自分が泣きたかった。しかし、ぼんやりと立ち尽くしながら、ユジンへの想いをもう我慢することはできない、たとえ全てを壊しても手に入れたい、と考えていた。ユジンからの電話で全力でスキー場を走り抜けて、身支度を整えると真夜中の道に車を走らせた。

何時間たっただろうか?ユジンはデコレーションされた噴水のところでうなだれて座っていた。顔には涙の跡がいっぱいで、今も後から後から涙が溢れていた。コートの前を開けっぱなしで、少し見えたシャツのボタンは引きちぎられ、首元にはあざがついている。何をされたのかは一目瞭然だった。その姿は今にも消えてしまいそうなほど、震えてか細く見えた。
ユジンはミニョンを見つけると、縋るような目つきでこちらにゆっくりと歩いてきた。ミニョンはたまらずに、ユジンを抱きしめた。ユジンはミニョンの胸の中に崩れ落ちるように抱きとめられて、いつまでも泣いていた。身体から発せられるビールやタバコの臭いに、ミニョンの心は怒りに震えた。ミニョンはもうサンヒョクに遠慮はしない、ユジンは自分が守る、と心に誓った。

ユジンはミニョンの顔を見た瞬間、あまりの安心感で涙が止まらなかった。ミニョンの顔には、全てを悟った表情が浮かび、でも一瞬も躊躇せずに、ぎゅっと抱きしめてくれた。彼に抱きしめられると、その広い胸の温かさに、全てを委ねたくなった。思い切りミニョンの胸で泣くと、傷ついた心が癒されていった。

車に乗ると、ミニョンは意を決したように
「ユジンさん、サンヒョクさんに、、、」と聞いてきた。
「、、、大丈夫です。すぐに逃げてきましたから」
すると、ミニョンの顔にほっとしたような表情が浮かんだ。ユジンが全てを汚されなくて、本当に安心したようだった。ミニョンはユジンの洋服の乱れを直してくれた。ユジンはショック状態でなすがままにされていた。
やがて、泣き疲れたユジンは、いつのまにか眠ってしまった。ミニョンは疲れ切った寝顔を見て、胸が痛んだ。車は真夜中の雪道を静かに走り続けた。

仁川国際空港にNYから一人の女性が降りたった。
緑のコートを着た美しい女性はおもむろに携帯を取り出して、どこかに電話をした。
「もしもし、ミヒだけど今着いたわ。ところでチュンサンは元気かしら?」

コメント一覧

kirakira0611
@hikarinoumide さま、ありがとうございます😊
返事が遅くてすみません。
台湾での生活はいかがですか?
台湾として🇹🇼オリンピックに出て、NHKアナウンサーが台湾!と入場で言ったと喜んでいたみたいですね。チャイニーズタイペイではなく。
なかなかの活躍に応援してます。
福原愛さんの卓球解説はチャンネルを変えましたが。
予防接種は終わりましたか。
台湾はウイルスを完封出来てるのかしら?
また遊びに行かせていただきます。
kirakira0611
みーちゃんさま、遅くなってすみません。
つ、ついにJALも!さすがコロナ不況。
写真を見ましたが、ANAより美味しそう。
買いたいです!
へそくり?ためてトライします。
何よりかの情報をありがとうです❤️
kirakira0611
@hananoana1005 さま、ありがとうございます😊
そうなんです。わたしもサンヒョクが可哀想で、あと、ユジンがはっきりしなくて、書きにくくて悩んでます。
これからサンヒョクはユジン沼でもがきますよね、、、。どうやって書こう?
ササユリさんと、花のあなさんがとても似たユリの写真で、いつもちょっと混乱してます(笑)
すみません。
温かい言葉に励まされます。
サンヒョクは幸せになって欲しい人ナンバーワンですね(笑)
hananoana1005
こんばんは(´▽`*)
いつも更新されていると真っ先に拝見しています。

とうとうサンヒョクをこんなふうにさせてしまって・・・
とても悲しいですよね~
サンヒョクを憎むことはできません❣
どうか、これ以上サンヒョクを苦しめないで!
みーちゃん
kirakiraちゃん、こんばんは😇

JALの機内食が売り出されましたよ。
ANAのより高い。!(◎_◎;)

kirakiraちゃんはもう買ったのかな?(o^^o)
hikarinoumide
拙ブログへのご来訪ありがとうございます。
これを機によろしく。
ウィルス禍の時期、お気をつけて、日常生活をお守りください。
台湾在住のですが、当地もあと数日で解除されるかもしれないらしいという話も出てきております。

生きてナンボの人生と考えております。
kirakira0611
@81sasayuri1018 さま、いつもありがとうございます😊
忙しいのに、すみません(笑)
確かに、わたしも夫にミニョンさんの10分の1いや100分の1でいいから、優しくなってほしい(笑)
終活アドバイザー、凄くいいと思います。
頑張ってください‼️
なぜならうちに相談に来る人の大半が終活してなくて、問題だらけで来るからです。
こちらが頭を抱えて奔走してます。
だから、ぜひわたしのためにも(笑)頑張ってください。
金なし
葬式の準備なし
何かあったらなんとかしてくれる人もなし
認知症があり判断能力なし
誰かこの人の終活をしてくれるの?
わたしかい、と思いつつ頑張ってまーす。
81sasayuri1018
おはようございます。

チョット忙しくて他の方にコメント入れられないのに・・・ここにはね♡

>ミニョンさん、ミニョンさん、ミニョンさん、助けて。

そこなのです。 ミニョンさんには甘えられる♡

爺様(年上夫)は居てくれるだけでいいので、ミニョンさんになって欲しいとは思いませんが(笑)
心が疲れた時、広い胸に受け止めてほしいって、若いころの私は思いました。

>チュンサンは元気かしら?

ミヒの、あの光景がありありと思い出されます。

今日もありがとう♡ 
そして今日もお元気で♡ 勉強頑張って!
私も資格勉強あるのです。終活アドバイザー(笑)
(それを生かすとかではないけれど)。
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