プロローグ
12年前の春・・・菜の花が咲きはじめる頃、朝晩はまだ寒くても昼間はポカポカと
暖かくなり桜の花がポツポツと春を告げるのと同時に、
私と夫の涼介の間に難産を乗り越え一人の娘さくらが誕生した。
あれから12年。多くの出来事が幸せだった私達家族をめちゃくちゃにした。
私は体調を崩し、今となっては家族そろって買い物すら行かれない状況になってしまった。
私は東京に住む40代前半の専業主婦。結婚するまでずっと実家でぬくぬくと育っていたこともあり、
実家を離れ夫と二人だけの生活をすることについて夢見たけど、その反面は不安で一杯だった。
私の結婚前の家族構成は花屋の仕事をしていた父、ちょっと体の弱い専業主婦の母、それから2歳離れた兄がいる。
父は7人きょうだいの5番目。戦中に生まれ、明治生まれの両親に育てられたせいか古い考えの持ち主。
男尊女卑がモットーで、しかも黒いものを父が「白」と言えば逆らってはいけない。
今ではいつの時代の考えだよ・・・と思うくらい古風な考えを持っている。
母は5人きょうだいの末っ子。しかも、一番上の姉とは14歳も離れているのでいつまでも子供扱いされていたらしい。
母はとても明るく、私が幼いころ学校で嫌なことがあって愚痴っていると、いつも話を聞いてくれアドバイスをしてくれた私のよき理解者でもあった。
ただ、母は若いときに腎臓を悪くし一度入院をした経験がある。
そのせいか、母は父と結婚後も働きには行かず、専業主婦として兄と私の面倒を見てくれた。
そして・・・兄は未だに独身。結婚する意志が全くなく、病弱な母を助けるという気持ちも毛頭なく
仕事が休みの日には一人でフラッとどこかへ行く始末。
何を考えているのだか・・・
そんな家族で育った私。やっぱり結婚後は母のように専業主婦になり、子供を育てたいという思いが当たり前と思っていた。
電気メーカーに勤務する2歳年下の夫の涼介は真面目で子育てにもよく参加してくれるし、私が専業主婦になりたいと申し出た時も
特に反対することもなく申し分ない夫だった。
義父母も私を本当の娘のようにかわいがってくれている。
傍から見るととても幸せそうに見えたことだろう。
でもそんな順風満帆に見える私達にも、普通では考えられないような出来事が色々あった。
どうしてなのか?と疑問に思った。
続く