第196回通常国会が7月22日に閉会した。法案では働き方改革法やカジノ法が焦点となったが、森友学園、加計学園の“モリカケ問題”が印象に残った国会だった。野党が対決法案と位置付けた働き方改革法もカジノ法も、自民党など与党によって結局は成立させられた。
■ 枝野氏の長時間演説が緊急出版
全体としては盛り上がりに欠けた国会だったが、会期末に話題になったのは立憲民主党枝野幸男代表が7月20日に行った安倍内閣に対する不信任決議案の趣旨説明だろう。なにしろ2時間43分という長さで、記録に残る限りでは1972年以降、衆院では最長だったそうである。
この趣旨説明が
『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』
として緊急出版されるということだ。
まず出版社がフジサンケイグループの扶桑社というのに驚いた。産経新聞といえば、実に分りやすい安倍応援団であり、立憲民主党やその代表の枝野幸男氏らに対して、厳しい報道を繰り返してきたからだ。さらに驚いたのは、緊急出版の事実が7月26日にアマゾンの予約ページで公開されると、一夜にして総合ランキング1位に躍り出たというのだ。
政治家の演説集のようなものは、これまでも出版されてきたが、そんなに売れるものではない。日本共産党の不破哲三前議長らも演説や講演をまとめて本を何冊も出版してきたが、党内でもそれほど読まれるわけではない。ましてやアマゾンで予約1位など、普通、政治家本ではあり得ない。
安倍内閣の支持率もそう高いわけではない。
カジノ法などへの国民の批判も大きい。モリカケ問題でも、誰もが真相など分かりきっている。安倍夫人や安倍首相が無関係などとは、誰も思ってはいない。証拠を残さなければ、何をやってもかまわないなどとも、国民は思ってはいない。やはり安倍内閣への批判も少なくないのだ。そして、その対抗勢力として国民が期待する一番手が立憲民主党であり、枝野幸男代表ということだろう。Amazon1位はそのことを示していると思う。
■ カジノなど日本に必要ない
日本に本当にカジノが必要なのか。賛成派は、訪日観光客が増えて、経済効果が大きいとか、雇用の場が増えるなどと主張している。
しかし、今でも外国人観光客は多すぎるぐらいだ。昨年(2017年)1年間だけでも、2800万人以上が日本を訪れた。十分ではないか。これ以上、増やす必要があるのか。また訪日する外国人観光客がカジノに魅力を感じるかどうかも、何も証明はされていない。経済効果についても、まったく分析はなされていない。
なぜこれほど多くの外国人観光客が訪日することになったのか。多くは日本の自然環境や食文化、日本庭園など伝統的な工作物や工芸品、治安の良さ等々があるのだろう。近隣のアジア諸国の経済発展も大きな影響があることは間違いない。カジノなどという“博打場”を作ることが日本の魅力を上げるとは到底思えない。
そもそも日本は、ギャンブル大国である。公営競技として、中央競馬、地方競馬、競輪、競艇、オートレースがある。宝くじ、スポーツ振興くじ(toto)もある。さらにパチンコ、パチスロである。パチンコ、パチスロは、遊技とされているが、深刻な依存症が問題になっているようにギャンブルそのものである。
「オーストラリアのカジノ業界団体の国際調査では、据え置き型ギャンブル機の設置台数は日本のパチンコ・パチスロが457万台で、2位の米国に約5倍の差をつけ圧倒的にトップだった」(7月29日付産経新聞)という。産経の同記事によれば、今でもギャンブル依存症の疑いをもたれている人は、320万人にも及ぶという。この上にさらに依存症を増やすことが必至のカジノを作ろうというのだ。
カジノ法と共に、ギャンブル依存症対策基本法も成立させられた。
今後、官房長官を本部長とする対策推進本部が内閣に設置され、依存症対策に取り組むという。
ギャンブルの機会をさらに増やして、他方で政府を挙げて依存症対策に取り組む。
何という滑稽さか。
ギャンブルそのものをなくせば依存症もなくなるではないか。
今でも実はカジノはある。暴力団による違法カジノだ。警察によって摘発はされているが、存在する違法のカジノのごく一部に過ぎないと言われている。暴力団は、違法カジノによってカジノのノウハウを蓄積している。カジノの周辺に暴力団が関わってくる危険性もある。
どの世論調査でも、カジノ反対が圧倒的に多い。
なぜこの声を簡単に無視するのか。
まともな政治のありようではない。
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