大文字屋の憲ちゃん (当面は 石巻 地震) 

RIP 親父 けんちゃん 石巻 地震

第二版 20201026-28 Go to 還暦温泉旅行―湯の原ホテルー

2020-12-12 10:26:40 | 日記

失われた文章は失われた思いそのもので、それを思い出すにしろ旅そのものを思い出すにしろ、書くたびにそれは異なったものにならざるを得ない。今の時点の思いが文章には現れざるを得ない。それでもあえて旅しているときの気分に戻って思い出し出し書いてみよう。(写真はほぼ同じです。)

出発日が生まれ日に重なったのは偶然で今年もう一度ぐらい温泉に入りたいという思いからだ。

今(11月10日)は感染症が再び広まり始めているがこの旅の出発時は病禍が一段落したかに見えた時だった。世の中は折りしもGo To トラベルの最中。帰省が憚られる状況は相変わらず。新規に宿を開拓する時間的余裕もなく近年訪れた中でもっとも条件の合ったところを再訪することに。条件とは、露天風呂、料理、日本酒、アクセス。要は比較的手軽に温泉と食を楽しめることだ。手頃と思われたのが湯の原ホテルであった。

以前(2018年)利用した際には比較的近場で露天風呂のある宿としてピックアップしたが料理が素晴らしかったし美味しい日本酒を置いていたので強く印象に残っていた。


    *    *    *    *

10月26日。晴天。8時11分生田発小田急線各駅停車新宿行に乗り、8時16分登戸にて同快速急行新宿行に乗り換え(完全ラッシュ状態)、8時36分新宿着。

8時44分JR中央線快速東京行に乗り8時58分東京着。9時24分東京発東北新幹線やまびこ131号に乗り11時14分仙台着。新幹線の乗車率は見た目10%程度、一両に10人も乗っていなかったと思う。(※以下、小さな写真はクリックして拡大できます。)

仙台駅で昼食をとり13時01分仙山線山形行に乗り13時37分作並駅着。駅には宿から送迎バスが来ておりそれに乗って宿についたの13時55分頃だった。今回の予約プランは14:00アーリーチェックイン、11:00レイトチェックアウトのゆっくり滞在である。

宿につくと早速手指の消毒。履物は袋に入れて自分の部屋に持ち込み保管。もちろん感染症対策だが前回とちがったのはこれだけではなかった。チェックインの際に地域共通クーポンなるものが渡される。これは Go To トラベルの一環で宿泊料の15%のクーポン(商品券みたいなもの)が渡され宿や近隣県のお店で使えるのだ。食事の際の追加注文やお土産を買うのにも使える。これはなかなかいい。

部屋に行くと広々とし窓からは淡いが紅葉も楽しめる。

一息ついて貸切風呂に。2020年に新たにオープンしたもので湯舟が大きく広縁と格子戸がついて情緒あるなかなかの雰囲気。お湯は柔らかくいつでも入っていられる。いや落ち着くなあ。以前の貸切風呂も隣にありこちらは予約不要で空いているときにいつでも利用可能であった。

楽しみな夕食。私は連泊なので他の客と異なる特別メニュー。
   ◆   ◆   ◆
先付け…ホタテとキャビアのラビオリ
前菜…カラスガレイのカルタファタ
お造里…鮪・勘八・牡丹海老・ヒラメ・帆立
スープ…松茸の土瓶蒸し
鍋料理…海鮮鍋
お魚料理…鮎の蓼(たで)味噌焼き
お口直し…赤葡萄ソルベ
お肉料理…牛タンのラグー
お食事…栗原産ひとめぼれ・みそ汁・お新香
デザート…フルーツのサバイヨン焼き
   ◆   ◆   ◆

ラビオリは小麦粉で作った生地に具材を挟んだパスタ料理(味の記憶なし)。カルタファタは耐熱性ラップで具材を包みオーブンで焼いたもの。ラグーはフランス語で煮込み料理。牛タンのラグーだから牛タン煮込み。サバイヨンは卵黄を使用して作るムース状のクリームでイタリア起源。

鮎の蓼味噌焼きは色も味もよかった。鮎の塩焼きには蓼酢がつきものらしいがこの時季食べるならこういう少しコクのある味わいもいい。

日本酒は4種類。
十四代(超特選・純米大吟醸・兵庫特A地区山田錦・35%精米・生詰)は口開けでなかったようで香味が抜けていた。水鳥記(蔵ノ華、撮影忘れました)は穏やかで優しい味わい。「ほでなす」は発泡濁りでガス感とマスカットの味わいが美味しい。「坤與(こんよ)」は「ほでなす」と同じ蔵の別銘柄で栗原市一迫産の特別栽培米ひとめぼれを使った特別純米。これがなかなか軽妙複雑な味わいで楽しかった。

 

 

これらのお酒を並べて料理と合わせながらの食事は楽しみが広がった。

そもそもフレンチとイタリアンと和のコース料理なんてのはこういう宿だから楽しめる。そう思うと得した気分だ。まして美味しい日本酒があるのだから言うことはない。

この夜は大理石風呂にも入り料理と銘酒の余韻を楽しみながら床に就いた。

    *    *    *    *

一夜明け今日も好天。青空に紅葉が映える。

朝食は夕食ほど凝ってはいないがオムレツなどはできたてを出してくれる。サラダは食事全体の量を考えるとちょっと量が多過ぎ。残せない私は朝から腹がはちきれそうだ。

食後は館内散策。

今回もっとも違っていたのはラウンジ。無料ドリンクサービス(コーヒー、自家製酒、ビネガードリンク)を楽しめ'70sや'80sのポップスが流れリラックスできるスペースに。宿泊客も寛いでいた。前回来た時には音楽もなく暗く閑散としていて折角の工芸品や美術品が死んでいて勿体ないないなと思っていた。それだけに今回ホテルが全体に明るく開放的になり飾られた調度品なども生き生きした感じに見えたのはうれしかった。来た甲斐があるといもうのだ。

昼間は部屋でゴロゴロと本を読んだり紅葉を眺めたりして過ごし夕方近くになってようやく露天風呂へ。最上階の展望風呂の奥に露天風呂がある。ここからも紅葉が楽しめナイスビューである。

夕食は今夜が最後なので通常メニュー。フォアグラを使った洋風(フレンチ?)茶碗蒸しとフォアグラと山形牛のステーキが非常に美味しかった。また意外なことにお造り(お刺身)も美味い。一つ一つは小さいが味がつんでいて満足感がある。特に鮪(たぶん中トロ)はしっとりした舌触わりに凝縮した旨味で美味である。熟成具合とか切り方とか工夫しているのであろう。刺身も料理だと思わせる一皿だった。(献立の撮影を忘れました。)

 

お酒は「川口納豆」と「伯楽星」(ともにひやおろし)と、「ほでなす」と「門傳」(もんでん、純米)である。川口納豆はフレッシュで微細なガス感と酸味と苦味の粒がぎっしり詰まった感じの凝縮感のある味わいで面白かった。伯楽星は口の中に入れた時の味わいの広がりが優雅でいわゆる上品なテクスチュアのお酒だった。「ほでなす」は前日同様の美味しさ。「門傳」はお米の旨味が生きた落ち着いた深みのある味わい。フォアグラと山形牛のステーキにはこれが最も合っていた。

 

「川口納豆」というお酒は前日の夕食の際に若女将から名前を教えられていて、私は「ああ、萩の鶴のですか」と答えたのだが実際には金の井酒造(「綿屋」で知られる蔵元)のものであった。なぜ川口納豆というのかというと川口納豆という納豆屋さん(会社)が自社の田んぼを持っていて会社で米作りをしているので金の井酒造さんとのコラボで川口納豆が作ったお米でお酒を造った。だから名前も川口納豆にしようということらしい。聞くところでは川口納豆というのは栗原・一迫あたりでは知らない人はいないほど有名な昔から食べられてきた納豆とのこと。さらに日本酒に詳しい人はご存知かと思うが日本酒造りに納豆菌は大敵であり(納豆菌は繁殖力が強く酒造りで活躍する菌に悪影響を及ぼすといわれる)そのため蔵人は酒造りの時季には絶対食べられない。そんな納豆の名前がついた日本酒というちょっと遊び心のあるネーミングというわけだ。しかし中身はいうとお米は美山錦という酒造好適米であり「特別栽培米」とあることから低農薬等の特別な栽培法で作ったと思われる。またそれを丁寧に仕込んだもの。酒税法で「特別純米酒」とは特別の造り方をした「純米酒」を意味するので何らかの工夫もほどこされているはずである。実際飲んだ感じとしては前述のとおりの鮮烈な味わいだがネーミングやラベルの面白さや造りの経緯などバックステージとともに楽しめるお酒である。

因みに私がまちがえた「萩の鶴」も栗原市にある。考えてみれば栗原市には「綿屋」も「栗駒山」もあり一ノ蔵の「金龍」蔵もある。全国的に有名な日本酒の集う地なのだなと気づく。「ほでなす」を醸す門傳酒造は生産量が少なくはほぼ地元消費だが県内でも日本酒通の間ではけっこう知られている。

その後若女将と話してわかったがどうも宿の経営者の方が栗原市と縁が深いようでその関係で栗原市のお酒をたくさん置いているという経緯があるようだ。

それにしても美味しいお酒ばかりでこの夜も美味を堪能したのだった。

食後はラウンジで寛ぎ夜の露天風呂で秋の夜空を楽しみ床に就いた。

 

    *    *    *    *

三日目の朝食。鮭とシメジの土鍋焼き、納豆、温泉卵、自家製豆腐、明太子、ちりめんじゃこ佃煮、昆布佃煮、梅干し、舞茸味噌漬け、ヨーグルト、野菜サラダ、御飯、みそ汁。ご飯の進むものが多いのでまたまた朝から食べ過ぎてしまう。とりわけ舞茸の味噌漬けは少しピリカラで堪(こた)えられない旨さである。よって後程お土産に買った。

この日も好天に恵まれた。名残りの露天風呂とラウンジからの紅葉を楽しんだ後11時に宿をチェックアウト。送迎バスで作並駅へ。木造りが味のある駅舎である。

    

作並駅を出発して約40分で仙台に到着。仙台駅からタクシーで向かったのは宮城県美術館。唐招提寺御影堂障壁画(とうしょうだいじみかげどうしょうへきが)を見るためである。

奈良の唐招提寺(とうしょうだいじ)は1964年鑑真和上千二百年忌を記念し鑑真和上像を安置する御影堂を建立する。その際襖絵(ふすまえ)を東山魁夷(ひがしやまかい)に依頼。五度の渡航失敗と失明を乗り越え渡日した鑑真の思いに報いるには鑑真の故郷と日本の海の両方を描かねばならないと感じた東山は日本と中国でスケッチを重ね十年の歳月をかけ全長83メートルの大作を完成させる。時に東山七十三歳。生涯をかけた作品と言える。

会場に入ってまず目に飛び込んでくるのは鮮烈な碧(あお=ふかいあおみどり色)。砕ける白い波しぶき。岩礁と海中から突き出る松の木。巨大な海の真っただ中に置かれた思いがする。寺の中に繰り広げられるとは思えない日本の海の巨大な風景が展開する。

そればかりではない。中国の広大な景観を描いた襖絵。六十七歳にして初めて挑む水墨画で描いた中国の景観。鑑真の故郷「揚州薫風」、渡航に失敗した鑑真が訪れた景勝地「桂林月宵」…。雄大で幽玄な空間。

実物でなければこの迫力はわからないだろう。こういうものを見ることができたということは生涯の財産になる。こういう機会を得させてくれた方に感謝である。

名残り惜しく襖絵と別れ再びタクシーで仙台駅へ。
15時24分仙台発東北新幹線やまびこ60号に乗り15時24分東京着。JR中央線快速に乗り新宿から小田急線へと乗り継ぎ18時30分頃生田着。18時50分自宅着。

こうして還暦最初の旅は終わった。温泉と紅葉と料理と美術を堪能した二泊三日であった。

 

20201026 還暦温泉旅―湯の原ホテルー

 


付記1

「東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展」関連サイト

東日本大震災復興祈念
東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展
宮城県美術館 
2020.09.19 - 11.01

美の巨人たち  東山魁夷「唐招提寺御影堂第二期障壁画」 2018.11.08 (NHKの番組を紹介したブログ)

 

付記2

宮城県美術館について 

今回訪れた宮城県美術館は移転計画が持ち上がっていたそうだがそれがこの度中止になったそうだ。広瀬川にぐるりを囲まれ周囲は仙台ニ高、東北大学川内キャンパスといったキャンパス群、仙台国際展示場などの国際的施設もあり、緑豊かで落ち着いた街並みを形成している。建物もル・ゴルビュジェの弟子前川國男による設計でモダンクラシカルな風格ある佇まい。訪れた時このエリア・街並みは仙台の顔だなと思った。正直初めて仙台という街を良いと思った。実際そうだったようで県知事が文化的価値の観点から判断。現在地での改修存続が決まった。詳しい経緯はわからないがこの地の美しい眺めが保たれることは喜ばしい。

宮城県美術館の移転断念 村井知事が表明、建築的価値に配慮

※記事本文引用

 宮城県美術館の移転断念 村井知事が表明、建築的価値に配慮


 宮城県美術館(仙台市青葉区)を仙台医療センター跡地(宮城野区)に移転する構想を巡り、村井嘉浩知事は16日、移転を断念し、現地存続させる方針を明らかにした。現施設を増築せず、長寿命化に向けた改築を行う。

 近代建築の巨匠ル・コルビュジエに学んだ「モダニズム建築の旗手」、故前川国男氏が設計した建築的な価値に配慮。近隣に仙台市博物館や東北大、仙台城跡などが点在する文教地区に残すことで、調和が取れた文化的価値の高い街並みを維持できると判断した。増築しない場合、財政負担が軽減するメリットも勘案した。
 村井知事は16日の定例記者会見で「美術館は現地改修する。ただ増築はしない」と表明。東京エレクトロンホール宮城(県民会館)、みやぎNPOプラザは当初の計画通り、仙台医療センター跡地に移転集約する考えを示した。
 県教委は2018年3月、現地での増改築方針を策定。県有施設の再編構想を議論する県の有識者懇話会は19年11月、県民会館とともに移転、集約する案を公表した。
 芸術関係者や市民団体から、県美術館の移転に反対する声が続出。県は比較検討の選択肢として(1)現地での増改築(2)宮城野区への移転新築(3)現施設を増築せずに改修のみ実施-の3案を検討していた。
 宮城県美術館は1981年11月にオープン。90年には、同県大和町出身の彫刻家を冠した佐藤忠良記念館が棟続きとして開館した。

河北新報 ONLINE NEWS 2020年11月16日月曜日

 

付記3

Watermelon Sugar(直訳すると「西瓜・砂糖」)を以前に紹介したHarry Styles ハリー・スタイルズ。アルバムも全体に開放感のある伸びやかな曲調でなかなかよかったので載せてみた。バンド「ワン・ダイレクション」(直訳すると「一方向」) のメンバーでもあり前回紹介したTaylor Swift テイラー・スイフトとは「2012年の10月から2013年の1月ごろまで交際していたことがあり、テイラー・スウィフトのアルバム『1989』に収録されている「Style」という曲は、ハリー・スタイルズとの私的な関係を公にしたものとして話題になった」(wiki)。

Harry Styles - Fine Line (直訳すると「細線」「紙一重」)(約50分)

※ 「Watermelon Sugar」の sugar は米語で男性から女性への呼びかけに用いる「おまえ」「あなた」。西瓜の甘さと恋人への呼びかけの甘い気分をかけている。「西瓜甘いよ君」という感じか?(笑


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 20201204 秋を探して | トップ | 2020年大晦日の青空 今年行... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事