読書ノート  

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金融庁戦記 大鹿靖明 2021

2021年12月24日 | 経済・財政・産業(財務省・経済産業省・日本銀行)
大蔵省や金融庁で検査や調査、審査の部署を歩き、「問題企業の監視と不正の摘発、そして再発防止策の立案」を20年もした官僚へのインタビューを基にした本。

読んだ印象をひとことで言えば、「日本の金融ビジネスはこんなズル・ワルとバカ・マヌケだらけだったのか!」

×1991年証券不祥事。証券会社の営業特金と信託銀行のファントラで膨れ上がった株式バブルの崩壊。違法な「飛ばし」。山一証券の破綻。
×クレディ・スイス デリバティブでリスクを隠し、証券会社を通じて山一や長銀、地方の金融機関や学校法人などに含み損をのある記入商品を高値で売る。1998~ 
×クレスベール証券 独自に販売する私募債の正体は不良債権の飛ばし商品。76の日本企業がプリンストン債に1200億円投じ、ふたを開けると50億円しか残っていなかった。1999~ 
×カネボウの巨額粉飾決算 2005
×中央青山監査法人解体 ヤオハン、山一、足利銀行、カネボウなど粉飾決算を誘導、見逃し
×ライブドア 会計ルールを無視した売り上げや利益の付け替え、偽計取引と風説の流布 2006 
×村上ファンド 2006 
×AIJ投資顧問 年金基金の運用コンサルとなり、素人の運用委を支配しファンドを買わせて自分は成功報酬を得、ファンドは暴落し基金は260億円の損失。2011 
×東芝 パソコン部門の赤字を粉飾する「バイセル取引」 2016
 
その一方で、唯我独尊をほしいままにし、後に証拠改竄事件によって権威失墜する検察。
 
金融を検査する行政システムにも大きな問題。p262~
 
日本の官界は毎年の定期異動によってポストが変わる。
海外ではそんな定期人事異動はそもそもやっていなかった。OECDもIMFも各ポストに求められる職務があらかじめ決まっており、それに見合った人材が起用され、求められるプロフェッショナルとしての力を発揮する。
それに比べると日本は、素人に近い役人が、人事のめぐりあわせで配置されるアマチュアリズムを延々とやってきた。
 
向こう(欧米)は新しい課題にどんどん対応し、いち早く取り組んで自分たちでグローバルスタンダードをつくっていこうというアプローチ。
日本は細かいことを一つひとつ覚え、あらかじめ答が得られる問題を一生懸命“正解”にたどり着けるように努力する。
オリジナルな政策立案力は乏しかった。特に大蔵省は自由に発想して新しいことに取り組むことが苦手な組織だった。
 
日本が不良債権処理問題解決のために行った金融庁による検査は、リーマンショック後の海外先進国には採用されなかった。アメリカは金融機関にストレステストを実施させ、体力がない場合はいちいち細かな査定などせず、思い切って資本不足を公的資金で補い、さらに経営陣を一新した方が経済を痛めないで済むというわけだ。
日本はいつもそうだが、思い切ったことができず、対処策が細かすぎ、かえっていつもチマチマしたものとなった。

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