読書ノート  

主に都市、地域、交通、経済、地理、防災などに関する本を読んでいます。

東京23区×格差と階級 橋本健二 2021

2021年12月31日 | その他・未分類
東京23区の町丁目別の平均世帯年収推定値地図から始まる。
都心は周縁より高く、西側は東(と北)側より高い。|
港区と足立区の間には3.79倍の所得(課税対象所得)格差があり、その格差は拡大しており、また東京都と沖縄県の格差よりも大きい。
職業分布の空間構造(専門職管理職層vsマニュアル(手足を動かす)職)、学歴分布の空間構造(大卒院卒vs小中卒)は世帯年収推定値の分布図とよく似ている。
 
江戸時代、山の手に武士が住み、下町に商人、職人、人夫などが住んでいた。明治維新を機に、山の手では武士は去り、薩長など新しい特権階級や、役人、会社員、学者など新中間階級が住んだ。薩長藩閥は田舎侍集団だったが、二代三代経るうちに宮廷文化と西洋文化をないまぜにした山の手文化が生まれ、江戸っ子は文化的優位性も失った。  
関東大震災で下町は壊滅ししばらく繁華街としての機能を失い、山の手ターミナルが発展を始めた。
 
終章から
・東京は巨大な階級都市であり、いくつかの深刻な問題をはらんでいる。
・東京は、性格の異なる多様な地域の集合体であり、それは大都市の魅力の源泉の一つでもある。
・しかし、多様で個性的な地域の間には、文化ややテイストの違いだけでは済まされない、格差と序列が存在し、しかもその格差は拡大傾向にある。
・階級都市には、第1に教育格差を生み出して階級所属を固定化すること、第2に階級対立と地域間対立を結び付け対立を激化させること、という弊害がある。
 
・都心では旧中間層が姿を消し、代わって高所得の新中間階級が流入してきた。さらに東部の下町では工場跡地や埋立地のマンションに新中間階級が流入した。欧米と違い日本では基本的には平和的にジェントリフィケーションが進行した。
 
要注意と思ったこと
・経済状態を所得でみているが、資産でみると違った景色になるのではないか。新中間層はフローの所得は高いが、受託ローンという負債を抱え資産は小さい。旧中間層はフローの所得は小さいが負債も小さい。所得ほど生活格差は大きくないのではないか。
 
 
 
 
 
(町丁目地図の作成方法)
住宅土地統計調査から市区町村別の所得階層別世帯数を抽出。
国勢調査から町丁目の年齢別学歴別人口、職業別就業者数を抽出。
2つの統計を統合したデータを作成し、重回帰分析を用いて各町丁目の平均世帯収入、低所得世帯比率、高所得世帯比率を推定。

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