040:伝（船坂圭之介）

死は永久（とは）の眠りと伝ふ春風に馬鹿を云ふなと睨む空しさ

039:庭(船坂圭之介）

空しさが庭を覆ひぬやがて来る春の虚ろな夜を恐れつつ

037:ポーズ:船坂圭之介）再投稿

神妙に聴き居り医師のムンテラを　この身のポーズ如何に思ほゆ

038:抱（船坂圭之介）

昭和初期大恐慌も知らずして無心の吾を抱きゐしや母

036:暑(船坂圭之介）

寒暑そのいづれが佳きか意味も無き語彙に思ひぬ春酣の昼

035:罪（船坂圭之介）

罪と罰　純なるソーニヤ諭すゆゑつひに懺悔すラスコリニコフ

034:掃（船坂圭之介）

最新の掃除機と云ふ代物は音は小さくされど良く吸ふ

033:奇跡（船坂圭之介）再投稿

奇跡とも謂ふべかりけり西方に朱く輝く佛像を幻（み）し

032:町（船坂圭之介）

北久米町四五一に住まひして過ぎし歳月しみじみ思ふ

０３１:電（船坂圭之介）

芽吹き初む土筆・鱈の目くさぐさの上に電光朝露の恵み

30:遅（船坂圭之介

遅々として歩み来たれり日の巡りやうやく春は深くなりつつ

029:公式（船坂圭之介）

身の上に心配あるの惨状は窮する人の堆積をぞ知る（3の上に4πｒの三乗は球する人の体積）＝球の体積の公式
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
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028:説（船坂圭之介）

風説のひとつを知りぬ塚本の太き眉毛（まみえ）に香を焚き籠みしと

027:水（船坂圭之介）

清明であるが佳きかな　飲む水に近き無銘の一刀に酔ふ

025:ミステリー（船坂圭之介）

つひに解けざる生くる要諦さればこそ人生すべてミステリーめく