完走報告（船坂圭之介）

ただ今完走しました。今回は体調すこぶる悪く、前回のごとき快走は出来ませんでした。
ようやく辿り着いたという感じです。孤独な今回のマラソンでした。
　五十嵐さま、ありがとうございました。
　おそらく最後の挑戦だったと思うと感無量です。

100:福（船坂圭之介）

林檎酒のラベルのごとき豊かさに在りきかつては福も不幸も

099:イコール（船坂圭之介）

つひに死すべし直立をを成し得ざる詩歌イコール白きわびすけ

098:腕（船坂圭之介）

氷雨とはかく冷かなる腕に背に担ぐべき負荷わが持てばなほ

097:換（船坂圭之介）

杳き日に袖換へしめしひとの影しばし脳裡に浮かせて置かむ

096:交差（船坂圭之介）

交差するままの思想よあざなへる縄のごとしもやがて　狂気か

095:黒（船坂圭之介）

埒外のものとされつつ窓に寄るわが裡に降る夜の黒闇

094:底（船坂圭之介）

休息のゆるゆる消ゆる夜の底の湯槽に自我のまま身を浸す

093::全部（船坂圭之介）

語らずを定めし過ぎ去き惻惻と背に風や鳴る　全部消しつつ

092::烈（船坂圭之介）

厨房にあらし舞ふ日のことごとく烈にして美なり　情痴は

091旅（船坂圭之介）

つづまりを知れ揚げ雲雀汝等がゆく旅はしずかに畳まれている

090:恐怖（船坂圭之介）

落首ある壁へ夜すがら狼藉の痕なまなまし湧き来る　恐怖

089:泡（船坂圭之介）

掬すべき涙はた汗　背後より吹かるる風にこころ泡立つ

088マニキュア（船坂圭之介）

緋のいろに染まるこころや哀別の夜は更けゆくマニキュアの艶

087:麗：（船坂圭之介）

青春の最中（さなか）に観たる「麗人」の原節子さん忘れ得ぬひと