kei's anex room

日々の歌日記(硲 比呂介)http://blog.goo.ne.jp/hiro5713 の別館です。

「短歌」に関しての偶感 3  塚本邦雄の『青き菊の主題』に就いて思うこと

2006-12-13 14:24:00 | Weblog
==承前==

    (前文)

 十一月二十八日から大分日が経ってしまって、些か前後の脈絡が解かりにくいかもしれないが、此処は此処で完結させるつもりゆえご容赦を。
 此処で採りあげるのは、塚本の第九歌集”青き菊の主題”である。
例によって 桃夭楽 空中伽藍 水中斜塔圖 柩 反射祷 雄蘂變 の章分けし
 これを更に小分類をしてある章もある。また、各章の初めに、掌中小説とも言うべき小説が置いてある。これらの関連性については全く解からない。
 兎に角、全体を一つの歌集として敢えて無視する。
 さて、先ず気になる歌々を曳く。

 ○黒葡萄葉月は昏れて空よりのなみだしたたるそれすらや戀
 ○レスラーの肉のはざまに風絶ゆる 縊られて愛きざさば雉子
 ○脂肪しづかにわかものを繃き高音の曇れりし弦楽四重奏
 ○男郎花白きほむらの一かかへ神のにくしみをかたじけなうす
 ○モーゼ語りける戒のほか愛されてまづ雄蘂よりけがるる罌粟
 ○合歓の花見ずてあり經る七月のなんぢ婚姻する勿れとぞ
                以上 桃夭楽 より
 
 一見して私は異様な愛の匂いを嗅いだ。以前、春日井 健について書いた時、”未青年”を熟読した夜、感じたあの気配。(keiの歌日記の過去の記述参考のこと、岡井 隆はもうすこし露骨に詠んでいる)独断と偏見ではあるがどうだろう。
 推測と想像と強牽付会があることは承知の上だ。
次項からまた暴論を書くが、ここに書いたことを踏まえて読んでいただきたい。
(桃夭楽は、第八歌集 蒼鬱境 の巻末の一首 桃夭の直なる男の子ちかぢかと眠らばみづうみにうしほさすから採出されている。これまた意味深。
                         
 ○かつて若者睡りの中の鹽光り藍青の衿つばさなせりき
 ○檸檬割いて唾あふるるを羞しめりこの友わが手もて殺さずば
 ○あざらけし童貞の冬、車庫の間に両手ガソリンもて洗ひをる
 ○凍鶴の嘴暗くして血紅の絲ひらめけり さなくば戀
 ○たまはらば恥 壮年の肉冷えてみぐるみ脱ぎし朴の花あり
 ○莫逆のかつてこころは青墨の夕空斷てり たちまち襤褸
 ○純白の花さわがしき六月の他界新郎としてつながる
               以上 空中伽藍 より

 ここに挙げた一連も深く考察するとやはり表の歌意とは違う心理描写が在ることに気が付く。                         
       (この項未完)    



「氷原」十二月号掲載歌

2006-12-06 08:15:13 | Weblog
        「氷原」十二月号掲載歌

          日々の夢
 
*いたつきに伏す耳に鳴る秋の夜の風はささやく亡き母の声に
 
*目覚むれど重き頭の冴えゆかず夢にうつろふこれもしあはせ
 
*わたくしの心の揺れかはた地震か微か地の面の定かならぬは
           (地震=なゐ)(微か=かそか)(面=も)
 
*そのひとの秋の香りのなつかしき独り伏す夜に仄か顕つ香が
 
*わが生活日々細る中かねて酔ひし人の香のする夢さへも見ず
   (生活=たつき)

*この生命果てなむ日々も近からむ昨日今日明日疾く走りゆく
 
*真闇なる中天にいま燦とあり かのひとも見むおほき月かげ
 
*かのときのかの月いづこ二人して茫と眺めし鵜飼夜の かの

「ナイル」十二月号掲載歌

2006-12-06 08:10:19 | Weblog
    「ナイル」十二月号掲載歌

「ナイル」12月号着便。過去の今日の歌で既に掲載済みであるが再掲する。

                焦熱地獄

*塩と水断つ身に辛し酷熱の風をひたすら避けつ夜を伏す

*青天の拡ごるもとに身を焼きぬ生くるとはかく焦熱地獄
 
*見渡せば晴好雨奇のおほぞらに思ひ至らぬ無風流 われ
  註:晴好雨奇=晴れた日が長く続き雨が極めて少ないさま)

*夏の陽を一身に浴び微動だにせざる回向の僧のすずしさ
                (回向=ゑかう)

*般若経昂らかに散る参詣の衆生のうへを揺らぎゆらぎつ

*納骨の御堂に秋のかぜ立ちて舞ひ舞ふ砂塵さへも涼やか
 
*水桃の柔毛キラキラひかり居て若き日のかの頬思はする
    (柔毛=にこげ)

*一瞬の夢と過ぎ越しふるさとに汝れはゐますや同じ心に
 
*夕映を近きに措きておのづから思ひは省る杳きふるさと
                 (省る=かへる)

*何ゆゑにかく厭はるる身となると問へど答へず星は流るる 

題詠100首blog 自選十首

2006-12-03 09:27:30 | Weblog
1:風  風説のやたら飛び交ふ春の夜の鼓膜しきりに啜り泣き居り

2:手紙 読まぬまま破り捨てたし遠い日の未来の僕に宛たる手紙

3:椅子 われの身とわが負荷を載せ耐へきれず壊れたり朱のまぼろしの椅子

4:からっぽ 保育園帰りの幼児二、三してランチボックス振りつつ「からっぽ!」

5:医  謀られて此処に居るかやさむき午後の医院の窓にひとつ飛ぶ蠅

6:とんぼ この冬を如何に過ごせし赤とんぼ葉かげに一羽痩せ細り居り

7:道  陽だまりをその肩に受け犬ひとつ屑のごとくに眠る道端

8:報  報はれしひと世なりしかめりはりの無き生き様を省みる 春

9:あくび 噛みころすべきもの多くふたたびの春の陽差しのなかおほあくび

10:題 百題を詠み切りたれば春日なたゆるり夢路へ行かむこれより


 以上自選十首を送ります。よろしくお願いします。  船坂圭之介


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