==承前==
(前文)
十一月二十八日から大分日が経ってしまって、些か前後の脈絡が解かりにくいかもしれないが、此処は此処で完結させるつもりゆえご容赦を。
此処で採りあげるのは、塚本の第九歌集”青き菊の主題”である。
例によって 桃夭楽 空中伽藍 水中斜塔圖 柩 反射祷 雄蘂變 の章分けし
これを更に小分類をしてある章もある。また、各章の初めに、掌中小説とも言うべき小説が置いてある。これらの関連性については全く解からない。
兎に角、全体を一つの歌集として敢えて無視する。
さて、先ず気になる歌々を曳く。
○黒葡萄葉月は昏れて空よりのなみだしたたるそれすらや戀
○レスラーの肉のはざまに風絶ゆる 縊られて愛きざさば雉子
○脂肪しづかにわかものを繃き高音の曇れりし弦楽四重奏
○男郎花白きほむらの一かかへ神のにくしみをかたじけなうす
○モーゼ語りける戒のほか愛されてまづ雄蘂よりけがるる罌粟
○合歓の花見ずてあり經る七月のなんぢ婚姻する勿れとぞ
以上 桃夭楽 より
一見して私は異様な愛の匂いを嗅いだ。以前、春日井 健について書いた時、”未青年”を熟読した夜、感じたあの気配。(keiの歌日記の過去の記述参考のこと、岡井 隆はもうすこし露骨に詠んでいる)独断と偏見ではあるがどうだろう。
推測と想像と強牽付会があることは承知の上だ。
次項からまた暴論を書くが、ここに書いたことを踏まえて読んでいただきたい。
(桃夭楽は、第八歌集 蒼鬱境 の巻末の一首 桃夭の直なる男の子ちかぢかと眠らばみづうみにうしほさすから採出されている。これまた意味深。
○かつて若者睡りの中の鹽光り藍青の衿つばさなせりき
○檸檬割いて唾あふるるを羞しめりこの友わが手もて殺さずば
○あざらけし童貞の冬、車庫の間に両手ガソリンもて洗ひをる
○凍鶴の嘴暗くして血紅の絲ひらめけり さなくば戀
○たまはらば恥 壮年の肉冷えてみぐるみ脱ぎし朴の花あり
○莫逆のかつてこころは青墨の夕空斷てり たちまち襤褸
○純白の花さわがしき六月の他界新郎としてつながる
以上 空中伽藍 より
ここに挙げた一連も深く考察するとやはり表の歌意とは違う心理描写が在ることに気が付く。
(この項未完)
(前文)
十一月二十八日から大分日が経ってしまって、些か前後の脈絡が解かりにくいかもしれないが、此処は此処で完結させるつもりゆえご容赦を。
此処で採りあげるのは、塚本の第九歌集”青き菊の主題”である。
例によって 桃夭楽 空中伽藍 水中斜塔圖 柩 反射祷 雄蘂變 の章分けし
これを更に小分類をしてある章もある。また、各章の初めに、掌中小説とも言うべき小説が置いてある。これらの関連性については全く解からない。
兎に角、全体を一つの歌集として敢えて無視する。
さて、先ず気になる歌々を曳く。
○黒葡萄葉月は昏れて空よりのなみだしたたるそれすらや戀
○レスラーの肉のはざまに風絶ゆる 縊られて愛きざさば雉子
○脂肪しづかにわかものを繃き高音の曇れりし弦楽四重奏
○男郎花白きほむらの一かかへ神のにくしみをかたじけなうす
○モーゼ語りける戒のほか愛されてまづ雄蘂よりけがるる罌粟
○合歓の花見ずてあり經る七月のなんぢ婚姻する勿れとぞ
以上 桃夭楽 より
一見して私は異様な愛の匂いを嗅いだ。以前、春日井 健について書いた時、”未青年”を熟読した夜、感じたあの気配。(keiの歌日記の過去の記述参考のこと、岡井 隆はもうすこし露骨に詠んでいる)独断と偏見ではあるがどうだろう。
推測と想像と強牽付会があることは承知の上だ。
次項からまた暴論を書くが、ここに書いたことを踏まえて読んでいただきたい。
(桃夭楽は、第八歌集 蒼鬱境 の巻末の一首 桃夭の直なる男の子ちかぢかと眠らばみづうみにうしほさすから採出されている。これまた意味深。
○かつて若者睡りの中の鹽光り藍青の衿つばさなせりき
○檸檬割いて唾あふるるを羞しめりこの友わが手もて殺さずば
○あざらけし童貞の冬、車庫の間に両手ガソリンもて洗ひをる
○凍鶴の嘴暗くして血紅の絲ひらめけり さなくば戀
○たまはらば恥 壮年の肉冷えてみぐるみ脱ぎし朴の花あり
○莫逆のかつてこころは青墨の夕空斷てり たちまち襤褸
○純白の花さわがしき六月の他界新郎としてつながる
以上 空中伽藍 より
ここに挙げた一連も深く考察するとやはり表の歌意とは違う心理描写が在ることに気が付く。
(この項未完)