kazzdokkのひとりごと

酒呑みの翁の日常の出来事

金剛杖

2011年08月30日 | Weblog

金剛杖とは巡礼者が持つ白木の杖のことだが、登山では、足場の悪い岩場や急斜面でのバランスを保ち、足への負担も軽減してくれる。
登山の必須アイテムとして、昨年の富士登山で購入した金剛杖を相棒として連れ出した。

今年の富士登山は過去2回と大きく違う点が2つある。
1つ、目標は吉田口山頂ではなく、富士山の最高峰の剣ヶ峰を目指す。
2つ、山小屋に泊まらず、ノンストップで登山、下山する。
更に厳しい条件になった富士登山、メンバーのおかあさんからの差入れのおむすびで腹を満タンにし、スタートは23時。昨年金剛杖を購入した雲上閣はすでに店じまいしている。



8月下旬の日曜日の夜ということもあるのだろうか、ツアーの昼登山と違い登山客はかなり少ない、と言うよりほとんどいない。ワイワイガヤガヤ行列で歩く騒々しさはなく、他のメンバーの呼吸や足音がしっかり聞こえる静寂の闇の中で一歩ずつ上を目指していく。

砂利と岩の登山道をひたすら登り続けること約6時間、以前泊まったことのある本8合目のトモエ館まで来た時に、東の空が明るくなり、雲海の中に日の光が見え隠れする。
ここで御来光を観ながら、しばし休息を取り、疲れた身体に杖?を打ち、剣ヶ峰へと突き進んでいく。





太陽に照らされた富士山を歩き続け、7時に吉田口山頂到着。
吹く風も穏やかで、雲ひとつない快晴である。

しかし、今回の目標はここではなく更に上の剣ヶ峰である。
山小屋での仮眠なしだったからか、加齢によるものなのか、過去2回に比べかなり肉体疲労が激しい。
誰かが「ここで下山しようか?」と言ったならば、間違いなく「そうしよう」と応えただろうが、一人として「下山」という言葉を発っする者はいなかった。



剣ヶ峰は吉田口の対面にあるため、そこへ行くと必然的に火口を一周することになる。
火口を一周することをお鉢巡りと言い、距離約3km.歩行時間1時間半。
山頂到達の「やったー感」の後のこの行程が肉体的にも精神的にもかなりきつい。
更に、最後の難所「馬の背」は急勾配であり、滑りやすい砂礫なので非常に登りづらいのである。

ここを登りきり2011年8月29日8時30分、富士登山3回目にして、ついに剣ヶ峰到達!!
剣ヶ峰の碑で記念撮影するためには、何と30分近くも並ぶ。ひぇ~。



登山は下山の方がきつい。
達成感の後の目的無き義務感のみが心に覆いかぶさるので、両の足が更に重たくなる。
下山時は、いつも右膝の激しい痛みに悩まされるので、金剛杖を持つ手に全身全霊の力を込めて足の負担を軽くする。

12:30五合目着。
ビールで喉を潤し、焼きソバで腹を満たす。美味い!と言う言葉を発する力も残っていない。
もう、何もしたくない、ほど疲労困憊。

新宿行きのバスに乗り込むと、走り出す前に眠り込んでしまった。
バスでの睡眠が疲れを癒す。新宿に着いた時は疲れもかなり取れていた。
新宿の居酒屋で、ビールで乾杯!疲れは完全にふっとぶ!!大量のハイボールで頭が中がぶっとぶ!!!
帰宅した時に、相棒の金剛杖が無いことに気が付いた。居酒屋のソファーに置きざりにしたか、電車の手摺に立てかけたまま下車してまったのだろう。

富士の思い出を焼印で刻んだ金剛杖とはお別れとなったが、富士登山の事実として四肢には激しい筋肉痛は残り、剣ヶ峰到達の達成感はおやじの胸に深く刻み込まれた。


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