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日々のメモ

事業や企業、経済の動きについて分析していくブログ

特損処理のルール

2020-11-13 13:45:00 | 投資・会計・ガバナンス
企業の投資家向けニュースを読んでいるとシステム刷新に伴う特別損失の計上という発表がたまに出てくる。特別損失の理由はシステム刷新に限ったものではないが、デジタル技術が急成長を遂げている時代背景もあり、多くはシステム刷新を理由としている印象である。
しかも金額をみると企業によっては100億円を超えるような規模の損失計上であり、投資家にとっては無視できない数字である。発表によって時価総額が下がることは必至なので、無視できないネガティブサプライズなのだ。

このような慣行が続けば投資に消極的な世論を作り出す結果になると思うのだが、これはどうにかならないものか。
企業内部では明らかになっているはずなのだ…システムが何十年も前に記されたコード(COBOLで書かれているなど)で動いている、複数の部署に乱立していていずれ調整が必要だと思われている、等であれば誰が聞いても数年後の特損計上は目に見えている。
これは企業側にとっても悲しい事態を招く状態である。
「今後数年以内に発表しなければいけないけれど、株価下落の責任者になって株主から叩かれたくないから放置」という経営者が後の世代に押しつけようとすれば、社内の空気も悪くなるだろう。
ウォーレン・バフェットはかつて株主への手紙の中で特別損失の計上を「会計の操作だ」と批判していた。特損公表で損したことのある投資家であれば、皆同様の気持ちのはずだ。

したがって、ここで新しい開示制度を提言したい。無形固定資産の中で、システムについては更新年を記すのだ(合計600億円あるうち、300億円は2010年、もう300億円は2017年に更新)。
こうすれば、投資家は同業他社比較すれば今後数年以内に公表されるだろうシステム刷新の費用も大体わかるから、予め織り込んで投資を判断できるし、
経営者は既に織り込まれた時価総額ならシステム刷新にふみこんでも批判されないということで前向きに経営判断することができる。単なる投資家の利便性に留まらず、やや大げさに言えば日本企業の近代化を後押しするような施策になるのではないかと思う。

様々な業界について分析したレポートの一覧



人工知能の資産価値

2020-11-03 13:24:00 | 分析・観察
企業のデジタル化に関して、議論の最先端にいるリーダーの1人は、本を読んだりニュースを見る限り安宅和人さんだろう。デジタルトランスフォーメーション(DX)を成し遂げ、人工知能を使いこなして未来を変革する企業が活躍する社会を追求していて、その発言を追っているのは視点が増える楽しいことだ。
DXを行い人工知能を使うに至るまでのレベル感についてはそのブログの中で図解していて、初めの一歩にきているのは情報のデジタル化である。

これを読むと未来の競争のためには人工知能を活用しなければいけない気持ちになるが、それでは人工知能にはどれくらいの価値があるのだろうか。
これを市場で見てみるには、人工知能の有無の分かる類似の事業の企業をみるのが一つの指標になるだろう。

旅行サポート事業をみると、
米国で2000年に創業されたtripadvisor社は、旅行情報の閲覧者に対する広告表示で人工知能を適用することにより(Forbesの記事)、旅行を後押しして収益化に成功する企業だ。
Googleが旅行事業を伸ばして競合するというリスクはあるものの、今も時価総額は2000億円を超えている。
一方で旅行代理店を営む企業は、コロナ禍の影響もあるが日本では1980年創業のエイチ・アイ・エス社で時価総額1000億円を下回っているなどデジタル勢に遅れをとっている。

この差は、デジタルを用いてリーチした顧客数、リーチした顧客に提供したデジタルサービスの品質によると思える。アメリカの人口が日本の倍なのでtripadvisorは有利であるが、創業からの時間も考えればtripadvisorはより投資家に応える経営を出来ていると言える。
人工知能の活用を進める経営陣に、投資家の注目は今後集まるのではないかと思う。

レポートバンクでこれまで作成してきたレポートの一覧

AI活用までいかないまでも、その準備段階となるレベルの簡易で低コストな情報デジタル化の考えをまとめたレポート