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ダニー・ザ・ドッグ

2009-09-05 23:22:56 | 映画雑感
2004年制作、日本での公開は2005年のダニー・ザ・ドッグを、今頃になってようやく観ました(苦笑)。
予告編を観て「観たい!」と思いながら観損ねたままだった映画でした。
あさい嬢から「観て!」と言われる作品にハズレがないので、前々から狙っていましたが、今頃になってようやく観ることができました。
ええ、良かったんですよ、ものすごく良かったんですよダニー・ザ・ドッグ。
というわけで、今頃ですが簡単な印象など。
旧作なので思いっきりネタバレ有りです。
まだ観ていなくてこれから観るという方(が、もしいらっしゃれば)ご注意ください(苦笑)。

あさい嬢は人も知るおじじ好きにして子供好き。
彼女が「良い!」と言い切る作品には、たいていどちらか、または両方が登場します。
観て納得、まずモーガン・フリーマン演じるサムがあさい嬢のモロ好み!
そして、ジェット・リー演じるダニー、何でこんなに無垢なんだ!!
私がこの前に観たジェット・リーの映画は「英雄-HERO-」なのですが、全く印象の違う姿に目からウロコが100枚くらい落ちました。
ジェット・リー、「英雄-HERO-」のときも目からウロコが落ちまくりでしたが、今回はその比ではなかったかも…!!
あさい嬢が勧めてくれた理由を心から納得しました。

ダニー・ザ・ドッグ、ストーリー的にはヒューマンドラマというよりバイオレンスファンタジーです(苦笑)。
ある意味リュック・ベッソン脚本の特色…ええ、これはグラスゴーを舞台としたファンタジーですとも。
ツッコミ所満載、それってアリ!?というネタも満載ですが、それはもうすべて横に置いてしまいましょう。

どうみても大物に見えない借金取り立て人が飼う犬…首輪を解かれ、ボスから「やれ!」と言われれば、命令通りに動く犬…それがダニー。
金網の中に飼われ、首輪をはめられ、食事ではなくエサを与えられる…人間扱いされないことに疑問さえ抱かない。
度肝を抜かれたのはやはり、何と言ってもアクション!
ジェット・リーのアクションは割ときれいと言いますか、正統派のカンフーアクションだと思っていましたが、この映画では本能のおもむくままに戦う野性的なアクションに、身動きできませんでした。
急所攻撃なんて日常茶飯事、きれいも汚いもない、泥臭いまでに相手を叩き伏せるためだけの攻撃的なスタイルに釘付けになりました。
こんなに汚い戦い方なのに、動きが音楽のように美しい!!
このアクションだけで十分満足という素晴らしさですよ!
なのに、この強烈な姿と、金網の中で絵本を眺めて暮らすハの字に下がった眉のダニーとのギャップに、こう来るか!とうなりました。
捨て犬みたいな顔をしたダニーの姿と、野獣のように戦うダニーの姿…相異なるふたつの姿を全く違和感なく同居させたキャラクターを具現しているのがすごい。

そのダニーが、ボスに連れられていった「仕事先」でたまたま出会ったのが盲目の調律師サム。
サムはダニーに音楽という扉を開き、ダニーを初めて「人間扱い」してくれます。
ところが、そのボスが恨みを買った相手に襲われ、辛くも逃げ延びたダニーは、サムと出会った骨董屋へ逃げ込み、サムに助けられます。
サムの家に匿われ、サムと彼の娘(妻の連れ子)ヴィクトリアとの生活を通して、人として生きることを少しずつ学び始めたダニー。
食事、音楽、買い物と、一つ一つの体験を通してゆっくりと表情豊かになるダニーの可愛らしさに転げました。
18歳のヴィクトリアより絶対ダニーの方が年上だと思うのに、どう見ても弟にしか見えないこの姿がたまりません。

ところが、実は死んだと思っていたボスは生きていて、ダニーは街中でボスの手下に発見されてしまいます。
再び連れ戻され、犬扱いされるダニーの姿が何とも悲しい…。
どうしても相手を殺すことができずに、戸惑いつつも本能的に体が動いてしまうというこのアンバランス!
戦うための道具として育てられ、戦うことに特化した肉体を持ちながら、純真無垢な魂を持つ存在というファンタジーが納得できてしまうこの姿…!
バイオレンスなのにファンタジーって!!
ファンタジーを「実在」と感じさせるダニーの存在感にはもう拍手するしかありません!

そして、音楽に導かれて過去を想い出すダニー、母親の死の真相を思いだしたダニーは、ついにボスの下を離れて自分の新しい家族…サムとヴィクトリアのために戦う…。
ええ、期待を全く裏切らないこの展開、ファンタジーはこうでなければ!!
この後のアクションシーンはもう、観てください!としかいえません。
最後の最後まできっちりファンタジーをまっとうする王道展開でした。

リュック・ベッソンの作品はニキータ、レオン、フィフス・エレメント、ジャンヌ・ダルクとけっこう観てきていますが、どれもファンタジックな印象がありますねえ。
一つは、恋愛関係がエロスというよりプラトニックなこと。
ダニー・ザ・ドッグでは、ハリウッド映画なら間違いなくここはヴィクトリアと…というところで、結局恋愛には至らない。
で、日常的なエピソードが中学生の恋愛か!というくらい純愛路線(苦笑)。
なのに、バイオレンスアクションが純粋だからこそエロスを振りまくというこの仕掛け。
シンプルなストーリーにファンタジーとバイオレンスが織り込まれるこのノリが何ともいえません。
好みはあると思いますが、私は大好きです。

ダニー・ザ・ドッグの見せ場は何と言ってもサムとダニー、そしてヴィクトリアとダニーとのやりとりです。
警戒心は強いけどなつっこい捨て犬のようなダニーを、優しく見守るサム。
無理強いはせず、少しずつ心を開くのを待つサムなくして、この物語は成立しません。
ダニーがサムにどぎまぎしながらもだんだん懐いていく姿には、こう来るか!と思いましたよ。
さらにヴィクトリアは、バニラアイスクリームをごちそうし、夜中に2人でこっそりハバネラを弾く!
この2人の肩を寄せ合う連弾シーンにもやられましたねえ。
それをベッドの中で聞きながら幸せそうに眠るサムがまた実に良い!
サムから家族として一緒にいようと言われて抱きつくダニーの表情には泣けました。
ジェット・リーの新境地というか…こういう役者さんだったんだ!と刮目しましたねえ。

ダニー・ザ・ドッグの最大の見せ場はやはりアクション!
ジェット・リーのアクションが美しいことは百も承知でしたが、やっぱりアクションシーンになると瞬き一つできません!
小柄なジェット・リーの体から繰り出されるアクションは、正統派カンフーではないけれど、最高の動きは最高の芸術であることをしみじみ感じさせてくれます。
何というんでしょうか、目に見える音楽のようなアクションなんですよ。
手足が弧を描くように動く軌跡が音楽的。
この人のアクションは、やっぱり唯一無二だと思いますねえ。
ダニーというキャラクターをきっちりアクションという演技で体現してくれる。
純粋さと攻撃性、優しさとそれ故の過激さを併せ持つ二律背反性がありありと見えるのが素晴らしい。
ジェット・リーの真骨頂を観た気がしました。
良かったです、ダニー・ザ・ドッグ。

風水


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