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~なべて世はこともなし~
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夕凪の街 桜の国

2007-09-16 20:59:32 | 映画雑感
実は関西ではほとんど上映が終わっていて、もうここでしかやってない!という状態でした。
しかも、初めて降りる駅、初めて行く映画館で、道に迷って1日1回しかない上映に間に合わないかと思いました(苦笑)。
一念発起して観て参りましたが、観て良かった!!
パチンコ屋の2階が映画館!?というロケーション、上映は1日1回のみだったのですが、けっこう人が入っていてびっくりしました。
皆さんここしかない!と思って来られていたようです。

舞台は昭和33年の広島、平野皆実(みなみ)は小さな建築事務所で働く26歳。
事務所の同僚、打越とは恋愛未満の関係だが、お互いに相手が気になる間柄。
母と二人暮らしの皆実は、裕福ではないが平凡で平和な毎日を過ごしているが、父と妹を原爆で失っていた。
戦中に疎開して無事だった末の弟・旭は、疎開先の水戸で叔父夫婦の養子に入ったため、今は別れて暮らしている。
靴の減るのがもったいなくて、事務所からの帰り道には河原を裸足で歩き、竹の皮を集めては洗って乾かし、竹の皮で草鞋を編むのだという皆実。
打越との距離が一歩近づいたとき、皆実の耳に聞こえてくる声が…。

前半は昭和33年の皆実の物語。
そして、後半は平成19年、皆実の弟である旭の娘、七波(ななみ)の目から見た父と家族の物語。

東京で父・旭と弟・凪夫の3人で暮らす七波は28歳。
父は定年退職後、散歩と称してふらりと出掛けては3日も帰ってこないことがある。
医師として研修中の弟に、電話代の請求書を見せて父のボケがはじまったのではないかと心配する七波。
その父が、夜に自転車で一人で賭けていくのを発見した七波は、父の後を追いかけます。
途中、小学校時代の友人で今は凪斧病院の看護師になっている東子と出会い、二人は父を追って電車に飛び乗り、さらに東京から夜行バスに乗って広島へと向かいます。
広島で父の後をつける七波の目には、やがて父の家族の姿が見えてきます。

前半の皆実を演じた麻生久美子さんの昭和の女性らしい健気さ、そして後半の七波を演じた田中麗奈さんの自然体の演技が実に良いのですよ。
原爆後の広島を描いた映画というと、ついつい悲惨な映画では…と思ってしまうのですが、日常のささやかな幸せや小さな事件が丁寧に淡々と描かれています。
二人の女性、皆実と七波を通して、3世代の家族の姿が浮かび上がる構成は見事です。
前半も後半も、実はタオルを握りしめて涙をぬぐいながら観ました。
切ないけれど、絶望はしない。
悲しいけれど、希望のある映画です。
ご覧になっていない方は、ぜひ、DVD化されたときにでもご覧ください。

風水


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