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胎の名前

過ぎにし胎はただ名前のみ、虚しきその名が今に残れり。 (ウンベルト・エーコ先生とは関係ありません…)

東京マグニチュード8.0(フジテレビ)放送終了によせて

2009-09-18 12:05:46 | アニメ・コミック・ゲーム

通常同じ項で2つエントリなど書きはしないのだが、
最終話まで11話すべて目撃した以上、思いを記録しておかなければならないのだと思った。



ああもうだからお台場にとどまって1週間くらいビバーグしておけば!!!(号泣)



前回のエントリにも書いたように、このアニメは中1少女の視線から見た災害の記録である。
そして、喪失と鎮魂、再生の物語であったことをここに付け加えたい。

当初は子供の視線らしく、物珍しさからか目に留まるものを断片的に流す映像が多かった。
だが、物語が中盤で急変してからは災害の根幹に目が向かうようになってくる。
避難所、病院、火事、倒壊した家屋、その他もろもろ。
現実世界との齟齬も。
もっとも彼女の視線が現実から乖離して再び現実に戻ってくるのに3話も必要だったのかは
議論が分かれるところだろうが。
(そしてどうやら一定数の視聴者がその齟齬に気付かずすっかり騙されていたようでもあったが)

序盤見捨てられていた悲劇の数々は、やがて主人公の自覚として視界に映し出されてくる。
救急現場のトリアージや死体安置所に置かれた死体の数々も、目を背けることなく俯瞰される。
若いボランティアが駆け巡っている様も、序盤ではあまり見かけられなかった光景だろう。
視線が選択する情報は、災害の大きさ、彼女の身に降りかかった現実を暗に示している。

そして、鮮明な幻影が輪郭を失っていくさまも。

ひさは身体に宿らない精神体の存在は否定する立場を取っており、
一連の描写には今ひとつハマりきれなかったのだが。
制作者側が明らかにそういう存在を認める立場でモノづくりをしていると思われる以上、
肯定だの否定だのはあまり意味をなさないが、
それでもこの物語を許容したいので、以下のように思うようにした。
主人公の成長を促す自我の片鱗だったのだ。

災害直後、廃墟から弟を探すのに声一つあげることができずにおろおろしていた少女は、
終盤で、知人の娘さんを探すために見知らぬ土地で大声を張り上げながら走り回れるようになる。
倒壊した我が家に戻っていく少年をどうして呼び戻そうか逡巡する彼女は、
「探しに行こうよ」と幻影に背中を押されて結果少年の生命を助ける。
こんな世界壊れれば、無くなれば良いのに、と毒づいていた少女が、再び家に帰ろうと、世界に復帰する勇気を得る。

だから、弟を象った自我は、母親と再会して自分達に何が起きたかを伝えたことで
所与の目的を達成して主人公自身と融合したのだ。

それが幽霊だったにせよ自我だったにせよ、手法としては多分に古典的ではあるけれど。

そして、1ヶ月遅れてやってくるメールも。
過去からの手紙なんて超古典的じゃねえか。
マンネリズムだからこそ悲劇でも安心して見ていられるような、やっぱりがっかりしたような。
それでも、この最終話のこのタイミングで尺を割いて家族の歴史を振り返ってみせるのは
なかなか勇気ある画面づくりだと感心した。

そうだ、あの母娘の再会シーン、
母親は多分再会に先立って真理さんの171ダイヤル伝言を聞いていたんだろうな。

あなたが無事でよかった。
最後まで一緒にいてくれてありがとう。
失ったものを忘れることはない、でも、みんな歩き続けなければいけないんだ。


最終話のED、写真フレームに入った画像が「その後」になっていた。
普段の生活を取り戻していく様が写っていたことにほっとする。
誕生日のケーキが丸いこととか、色々小ネタの回収もあってニンマリ。
そして、恐らくタワー倒壊跡地と思われる場所に、巨大な慰霊碑ができていて、
その周囲に大勢人が集っている様子に、これまた号泣。

とはいえ、実は見ていて一番胸が苦しくなったのは、地震から1ヵ月後の朝、食卓にパンとサラダが並んでいたシーン。
ヨーグルトもコーヒーもあるっぽいよ!
電気も水も食品物流も1ヶ月で普通に回復したんだ!

恐らく主人公一家の家周辺は被害がまだ少ない地域だったのだろう。
(建て替えのためか、引越しは余儀なくされていたようだが*追記…違いますね、あの荷物整理は引越しではなくって遺品整理ですね涙)
もしあの日、主人公がお台場に行っていなかったら。
お母さんが一緒だったら。
兄弟ゲンカしなかったら。
たらたらたら。


現実にはたくさんのたらがある。
でも、起きてしまった現実には、助けてくれる人々が大勢いる。
壊れてしまえばよいと思っていた世界に、主人公は助けられた。
もちろんそれは災害時だけの話ではないのだが。

そして自分は、その時、誰かを助けてあげられる側に回れるだろうか。


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