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胎の名前

過ぎにし胎はただ名前のみ、虚しきその名が今に残れり。 (ウンベルト・エーコ先生とは関係ありません…)

坩堝と大過

2006-07-16 01:32:20 | うんちく・小ネタ

またしても陰惨な事件である。
今度は人口の坩堝、ムンバイにて。

……このブログ、社会派ネタも扱うんですよ。一応。
ゲーム・漫画専門ブログじゃございませんので悪しからず。
ちうか、通常営業に戻ったんです。はい。……強弁。

ムンバイ=ボンベイは海沿いの街で、イギリス東インド会社の貿易拠点として発展した街でもある。
最近では証券取引所もあるため、金融業界なんかがにぎやか。
海に面した南部は所謂昔ながらの街並みで、町はどんどん北部に向かって伸長している。
10億人を擁し新たな経済圏として成長しているインド、というフレーズはもはや目新しいものではなくなった。
ムンバイ市街地から一山超えた北側は新興住宅街として開け始めており、日本のタワーマンションもびっくりするような超高級住宅街もある。
そのすぐ横に、路上にトタン屋根のテントを張り生活するしかない人々も居る。

このブログでも以前書いたが、昨年機会があってムンバイに行った。
仕事だったもので、市内の移動は全てタクシーを利用。
タクシーといってもインド名物・三輪車タクシー「リクシャー」ではなく、ヒュンダイだかオペルだかの車だった。
何故かサイドミラーがないのが気がかりだったけれども。
タクシーで空港からホテルまでたっぷり30分乗って、かかった料金は140ルピー=400円程度。抵抗感なく使ってしまう。

初め鉄道で行こうかと思っていたのだが、仕事相手のインド人曰く「生活に余裕がある人は鉄道には乗らない」。
理由その1)インド国鉄は時間通り走らない。事故が多い。
その2)非常に混雑する。だからスリや強盗の被害に遭いやすい。
その3)行きたい所に向かって走っていない。

その3はともかく、その1とその2の理由によってタクシーに乗りまくった。
だが実際のところ、自動車交通だってものすごく混んでいて、事故も極めて多い。
鉄道を避けて選ぶ選択肢としてはちょっと貧弱だ。
一方で、鉄道にさえ乗らずに一生を終えてしまう人々というのも一定数居る。

ムンバイの河口沿い、町外れ、山沿い、いたるところにスラム街がある。現地の人の感覚としては、ムンバイ人口の3割はスラムなのだという。
彼らはここで生まれた人々が多数、そして田舎から出てきた人、失業した人。体が不自由な人もよく目にした。
自動車に乗っていれば赤信号のたびに窓を叩かれる。町を歩いているだけで寄ってくる。
ただただ戸惑って、厭わしく振り払うことも、金を落としていくこともできなかったわけだが。
彼らがよく売っていたのは一束10ルピーのすずらんに似た花の飾り。それが1つでも売れれば1日生活できるのだという。一日20円くらいで生活できるちうことだ。
車の中から何度か鉄道が走っているのを見た。 確かに溢れんばかりの人が乗っており、車内も薄暗い。しかも女性がほとんど見当たらない。通勤時間帯だったからだろうか。

爆弾が仕掛けられたのはいずれも一等車両だったらしい。 この、世界の資本主義構造をぎゅっと集めて絞ったような町において、一等客車に乗るのは果たして裕福な人々なのか、それとも富に見放された人々なのか。
一様に断じることができないのが、この国の魅力でもあり難しいところでもある。

政府は宗教的な対立軸のテロ組織が犯人であると目しているようだ。
交通網は破壊されて大量の死者も出た。
だが被害をこうむったのは、彼らが打撃を与えたかったものだったのだろうか。


疾走と闘争

2006-06-07 02:56:25 | うんちく・小ネタ

資産のほとんどを現預金で持っているひさにとっては未知の領域ながら、 六本木ヒルズ周辺にたむろする人々の行動は大変興味がある。
結局一番目立っていた2人が逮捕に至ったわけだ。
1人目は監房ダイエットに成功して保釈され、2人目はバカンスを切り上げて監房に入ることを選んだ。

上記のようなポートフォリオのひさにとって、この2人の言動には1ミリも共感できるところはない。
理論的、経済的な部分での評価は賛否両論あるとは思う。
この社会は資本主義であるので、金を儲けようとする人は一定のルールの下で儲けられるようにすべきであるとも思う。
だが、感情的にこの2人はひさは嫌いなのである。一から十まで嫌い。
理由、もしくは嫌いの根源にある感情は単純。

「あなたはなにさまのおつもりなんですか」。

1人目の口癖「頭が良い人が目立って儲けて何が悪いんですか」。
2人目の口癖「この国の株主は虐げられている、私はそれを改めたいんです」。
(厳密にこの通り発言した、という意味ではなく、彼らの立ち位置です)

1人目の言い分はごもっとも。
ただし、あなたの頭が良いようにはどうしても見えなかったです。
2人目の言い分もごもっとも。
ですが、あなた本当にそうしたいなら通産官僚であり続けていただいて政策を打ち出していただきたかったですなあ。
しょぼい(失礼)株を買って、なんだかイマイチな株式提案を総会動議にかけ続けているのも、ピントが外れているように思えてならなかった。

2人に共通していた命題は、「目立つ、人々の話題に上る」。
海外の資金所有者から日本のしがない会社やファンドに投資してもらうためには、 海外メディアでおもろい、この人らは儲けていると報じてもらって目立たなければいかんのですね。
だからポーズとして上記のような発言を繰り返していた、それはよく分かる。

だから、もしかして本心ではなかったかもしれない。
そこにひさは色々興味を持っているわけです。

お2人に言いたい。 目立ち続けるのは大変だったでしょう?
人気小説家でも人気脚本家でも人気映画監督でも、ヒット作を飛ばし続けるのは難しい。
しかも当たりが続けば皆の期待値があがり、佳作程度じゃ評価されにくくなる。
さらに派手なことを打ち出すためには多少の無理をしなければならなくなる。無理が続けば感覚も麻痺するでしょう。
だから、気づいたら土俵を割っている自分がいたんでしょうね。きっと。ね。

1人目は保釈後、「これまで生き急ぎすぎたのかもしれない」と言っているそうだ。
確かに大学受験から会社設立、目立ち街道の疾走と、30年間たくさんのことをしてきたでしょう。
ですが、あなた1人の生き様のせいで巨額のお金が動いたのかと思うと釈然としないものもあるのですがね。

2人目は逮捕直前会見で、「生まれて初めて自分から戦いを降りたかもしれない」とのたまわっていた。
投資というのは、投資先をどこにするかよりも、どこで手仕舞いするかが儲けを左右するものらしい。
(デイトレーダーをやっている友人が言っていたので真実味はあるが、万人にとってそうなのかは不明)
ファンドを残すためには今日万人の前で罪を認めてから逮捕される、多分それが最適な手仕舞いだったのでしょう。
何だかしてやられた感が否めませんけれども。
(この人の漫談は1時間以上続いたらしい。東証の事務方さん、マスコミの皆さん、お疲れ様でした)

この2人、共通しているのが、「今後は社会貢献したい」という言。
本気でそう思っているなら、今度も派手にパフォーマンスしてアピールなされば良いのに。
派手派手しくどこかに寄付すると発表するとか、慈善団体を立ち上げるとか。
宇宙飛行士を育てる教室を開くとかどうですかH江さん。証券取引法を子供に教える私塾とか、きっとウケますよM上さん。
ええ、意地悪ですから。ひさは。

推測だけれども、この2人、そのうちまた何か別の方法でうまいこと儲ける術を得ている気がしてならない。
それは悪いことだとは全く思わないし、彼らが罪(として認められた場合)を償った後ならどうぞ何でもなされば良いと思う。

ただ、今度はルールを守ってね。