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胎の名前

過ぎにし胎はただ名前のみ、虚しきその名が今に残れり。 (ウンベルト・エーコ先生とは関係ありません…)

ワークワーク(もしくは封神演義その2)

2005-01-05 23:51:20 | アニメ・コミック・ゲーム
フジリューの新作「ワークワーク」買ったよ!
ちゃんと正規ルートで本屋さんで買ったよママン!

マンガの発刊日を全然チェックしていなかったのにも関わらず、昨日から話題の奇才・藤崎竜氏の新刊を本屋さんで偶然発見するはめに。
ありがとう神様!ありがとうフジリュー!
でも古本屋でマンガ10冊1500円で購入した身としては1冊410円はちと高いさ……

昨日社会人は余裕だとか言っていたのはどうした己。

ともかく、だ。

ワークワークとは。
世界のことなり。
我々からみれば未来の世界のことてすと。
黒い血が流れる人間が意思を持つ機械と敵対し戦う未来。赤い血の人間はそれすなわち神であって、なのに黒人間の気を惑わせ機械を従わせるらしい。
機械と戦い人を守ることを宿命付けられた機械寄生人間の防人が神を手に入れれば望みが叶うのだと。
神を手に入れるのは黒人間か機械かそれとも防人か。

……いかにもフジリュー世界。正義がどこにあるのか全く分からないところとか、またしても色々パロっているらしいところとか。
すんません私全く知識がないもので。
護神像に付けられた名前とかキャラの名前とか洋服とか絶対見覚えも聞き覚えもあるのに何のことやらわかりませーん。
あえて言えば賢者ヨキは賢人(ワイズ・ヒュー)ヨーキに極めて似てるなあ、とか……
はいそれは藤崎竜氏の短編「TightRope」の話に出てくるキャラですね。そりゃ似るだろう同じ作者だもん。
タイトロープも続編が是非読みたい。あの話は今の藤崎竜氏のマンガには欠かせないギャグキャラが弱いけれども。
それはそうとワイズ・ヒュー・ヨーキは楊貴妃からとったのでしょう。ということできっと賢者ヨキも楊貴妃だ。
それじゃ預言者キクは誰?

なんて読み方ができるのが藤崎竜マンガの楽しみの一つなのだが。

無論、人物の表情とか機械の描き方とか立体物の書き方とかデジタルなものの書き方とか見開きの使い方とか古典文学と量子力学を並行して描けるところとか、
驚嘆することを次から次へ展開してくれるところはもとより大いに楽しんでおるぞ。
えらそうだな己。

驚嘆したといえば太公望ですよ。封神演義ですよ。
丁度フジリューの連載が始まったころから刊行された宮城谷昌光氏の「太公望」(文春文庫、全3巻)でも
望が殷王の人狩りから命からがら逃れるシーンから始まる。
封神演義も人狩りのシーンを回想して望が戦う動機付けを見せ付ける。
やっぱセンスあるよ。買いかぶりすぎなのかもしれないが。というか私のこじつけかもしれないが。
さらに、西岐の姫昌が釣りをする太公望のところにやってきて「釣れますか?」と聞く、あのシーン。
超有名な逸話を知らない人は全くほったらかしにしたまま良くぞ見開きで描いてくれたと。意味もなく号泣いたしました。
脇を固めるキャラも極めて個性が立っていたし、それぞれ史実をさりげなく踏襲した描かれ方が好感をもてました。

いやだなあ×記号とか使う話はいたしません。
分からない方はそのまま素通りしてくさだい。

だって宮城谷先生の本を超初期に読んでしまったわけですよ。
先生によると、望出身のキョウ族は風習として髪型は辮髪らしいですよ。

辮髪。

色んな夢を打ち砕くのには良い言葉だと思いませんか?

<追記>
ワークワーク、名前の由来はゾロアスター教だという説を入手しました!
松田→マヅダ。もっと早く気付くべきだった…。


封神演義(藤崎竜)

2005-01-04 23:41:44 | アニメ・コミック・ゲーム
正月とは過ぎ去った一年を振り返り、新たに来る一年を迎え入れるもの。
仏教では百八の鐘を撞き旧年中の煩悩を洗い清めるという。
現代人はふるさとに帰省する格好の長期休暇として利用しているけれども。
私も現代人のはしくれとして実家に帰ったのだが。

どうしたことだろうか。
学生時代に買ったままになっていたマンガを一式読破してしまった。
その数およそ50冊。
しかもあらかたのシリーズが未完なのに購入を中断していたため
読んでも結末が分からずフラストレーションたまりまくり。
結局仕事場をすえている東京に戻ってくるなり
ブックオフに駆け込んで買いあさる始末。

全然煩悩打ち払ってないじゃん。だめじゃんおれ。
むしろ煩悩勃発しておるよ。

それでもって購入したのが何かというと、

「封神演義」(藤崎竜/安能務訳「封神演義」講談社文庫より)

タイトルそのものなのだが。
手元にあったのが全23巻中13巻までで、
話は丁度12人対10人の大バトルの真っ最中。
残り10冊を一気買いしても、古本屋価格なので1500円なり。
全く痛くも痒くもないぞ。社会人とは何と優雅なのだろうか。

…だから煩悩はどうしたよ己。

で一晩かけて10巻を読破した。

元々藤崎竜氏のマンガは全て大好きで、
「WORLDS」
「PSYCHO+」
「DRAMATIK IRONY」
初版で買って擦り切れるくらい読んでいるのだが、
「封神」はどうしても週刊誌で連載が長期化した場合にみられる雑さやいっぱいいっぱいなところが、昔は気になってしょうがなかった。だから購入を中断してしまったのだが。
当時は原作とされる文庫本も読んでおらず、「仙界大戦」も週刊ジャンプにありがちな対戦ものとしか読めていなかった。

だが今一気に読み返して結末まで知ってしまうと、多少のアラは目をつぶってしまえる。
原作をある程度忠実に踏まえ、さらにそれを料理したうえで、彼独特のギャグを飛ばし、彼独特の世界観を散らして、
その上で既存のマンガ・アニメをあえて(だと信じている)借用までして新たな意味づけを加えている。
曲がりなりにも原作は中国神話時代の壮大な大河ロマン(?)。
これだけギャグったりパロったりしている超訳本は過去にも未来にも現れないだろう。
これはどえらいマンガかもしれない。
10年後読み返しても面白いと思えるだろう。多分。

しかもちゃんと完結するまでテンポ良く連載が続いていたことが窺える。
過去ドラゴンボールを代表として、人気連載を無理やり長期化しようという目論見の結果、素人読者の目にも明らかに低質化するマンガがぞくぞくあった。
少なくとも「封神」は素人目には分かりません。良かった。よくぞ頑張った藤崎竜氏。

あ、私藤崎竜氏の大ファンだといった割には「サクラテツ対話篇」購入していませんでした。切腹。
またブックオフに行こう。

…正規ルートで買えよ己。

……だから煩悩はどこから持って帰ってきちゃったんだよってば。