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勝手に書評

私が読んだ本の書評を勝手に行います。

新版 ソニー燃ゆ/ 城島 昭彦 著

2001-10-20 | ビジネス
タイトル : 新版 ソニー燃ゆ
著者 : 城島 昭彦
出版社 : 集英社(集英社文庫)
出版年 : 2001年

---感想---
日本で一番先進的企業ソニーを分解した書である。著者の城島自身もソニー出身である。

ソニーの研究書(?)と言えば、その初期の頃を記したものが多いが、これは比較的最近、それも井深・盛田以降の話が中心であり、現会長兼CEOの出井に関して非常に多くの項が割かれており、いま、ソニーが何を目指しているかが非常に良くわかる。ソニーはバリューチェーン経営を目指していると言われるが、それはネットワークを中心にソフトウェア流通させることを考えて構成されており、ソニーはメーカと言うより、むしろソフトウェア企業と言ったほうが良いのかもしれない。敢えて一つだけ苦言を呈するならば、ソニーは革新的な商品に開発力は非常に高く、世界でもトップと言えるが、その品質はと言えばお世辞にも高いとはいえない。その品質が高められれば、もはやソニーを止められるものはいないのかもしれない。

「大企業病」と闘うトップたち/大塚英樹 著

2001-10-20 | ビジネス
タイトル : 「大企業病」と闘うトップたち
著者 : 大塚英樹
出版社 : 講談社(講談社+α文庫)
出版年 : 2001年

---感想---
「大企業病」と闘うトップたちに共通して言える言葉は変化である。一般に、大企業病と言えば、停滞という言葉が付きまとう訳だが、停滞に対するものとして変化を行うのはちょっと考えてみれば当然なのかもしれない。しかし、その当然のことが出来ないのも大企業病なのであり、そのような環境の中で変化を行っていくのは社内の抵抗勢力もあるであろうから、並大抵の努力ではないはずである。しかし、その変化を手に入れたものだけが成長を遂げられるのかもしれない。

ダイエーに残った男たちの「乾坤一擲」/小学館文庫編集部 編

2001-10-20 | ビジネス
タイトル : ダイエーに残った男たちの「乾坤一擲」
編者 : 小学館文庫編集部
出版社 : 小学館(小学館文庫)
出版年 : 2001年

---感想---
再生への道を必死で探っているダイエー経営陣の生の言葉である。

ダイエー経営陣には、中内ファウンダーの頃からいる者と、(かつてはダイエーにいたものの)外からダイエーに入ってきた者の二つのタイプがある。この書をみると、概して、ずーっとダイエーにいた者の方は、会社をここまで酷い状態にしてしまったことに関して反省とも何ともいえない感情を持っていると感じられ、若干の暗い雰囲気を漂わせているが、高木・平山の両トップを筆頭に一度外を経験してダイエーに舞い戻った者たちは元気いっぱいである。あまりに酷い状況で、時間も無いことから自然とハイになって元気に見えるのかもしれないが、元気なことは元気である。このことが、民事再生法申請をしておきながら、再びの社長交代と混迷を極めているマイカルとの大きな違いなのであろう。また、ダイエーは(特に平山が)現場の声をとにかく聞こう、そして現場の活性に生かそうとしているところが印象的である。その再生の道筋はついたとは言い難いが、着実に再生に向けて前進しているようである。

俺達はこうしてクルマをつくってきた 証言・自動車の世紀/日本経済新聞社 編

2001-10-20 | ビジネス
タイトル : 俺達はこうしてクルマをつくってきた 証言・自動車の世紀
編者 : 日本経済新聞社
出版社 : 日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)
出版年: 2001年

---感想---
今や日本を代表する産業である自動車産業。ここに至るまでさまざまな苦難の道を通ってきた訳であるが、その苦難の道をそれぞれの時代を代表する人物の言葉を通して語らせている。

既に、それらの時代は遠くに過ぎていてるが、当事者の言葉には重みがある。語る者の方も、既に70歳を超える者もいるが、その記憶は確かである。トヨタの工販分離、日産の長期低落にいたる最初のつまずきの労使紛争、ホンダのホンダイズム発現のもっとも最たるものと言われるレースへの情熱・・・、いずれも非常に興味深い物語である。また、この書ではこのような”昔話”のみではなく、まだまだ現役と言えるトヨタの奥田会長や日産の塙会長にトヨタ・日産の今を語らせている。過去から現在にいたるまでを通して読んで見ると、非常に感慨深く感じられた。

カリスマ社長の目のつけどころ/村野 まさよし 著

2001-08-19 | ビジネス
タイトル : カリスマ社長の目のつけどころ
著者 : 村野 まさよし
出版社 : 小学館(小学館文庫)
出版年: 2001年

---感想---
誰でも知っている大企業とはいえないものの、有名企業であるとか、その道の人なら知っているとか言う企業の社長へのインタビューを元に、その視点をまとめている。

私の場合は、1社を除き名前は知っている企業であったが、これらの企業に共通しているのは創業者社長であるか、あるいはそれに準じるということ。ある意味、ワンマンなので、彼らの言うことは実行しやすかったかもしれないが、企業として成熟し安定期に入った場合、どうなるのか興味あるところである。とは言え、一つの企業を興し、成功させているには違いない。その視点には感心させられることが多かった。

ゴーンさんの下で働きたいですか/長谷川 洋三 著

2001-06-30 | ビジネス
タイトル : ゴーンさんの下で働きたいですか
著者 : 長谷川 洋三
出版社 : 日本経済新聞社(日経ビジネス人文庫)
出版年: 2001年

---感想---
日産救世主、いま一番注目されている経営者のひとり、今年の株主総会を経て日産自動車社長兼CEOに就任したカルロス・ゴーン氏の革命の軌跡である。

1999年の日産・ルノーの提携時、弱者連合と揶揄されたが、実際には日産は奇跡の復活を果たした。ゴーン氏は日産に革命を引き起こし、経営を奇跡的に立て直しているが、その日産の革命が、周辺の産業へも大きな影響を与えていたことには驚かされた。NKKと川崎製鉄の経営統合には日産がNKKからの購入量を大幅に減らすと言うようなかなり直接的な影響を与えていたし、ソニーの生産工場の売却もゴーン革命の影響と言われている。世の中、ゴーン、ゴーンと、外国人に弱い日本人にありがちな反応になっているが(三菱自動車に同じようにダイムラー・クライスラーから派遣されてきたエクロート副社長兼COOは、必ず「ゴーンさんのことはどう思いますか?」と聞かれるので、かなり閉口しているらしい)、これだけ劇的に実績を挙げればそれも仕方ないのかもしれない。

さて、2001年3月期、日産は正に劇的に黒字に転換した。しかしこの黒字は、工場閉鎖や、人員の削減による一過性の効果である可能性も否定できず、その真価はこれから試されると言えるだろう。日産の改革が日本人に出来なかったと言うのは情けない話だが、ここはゴーン氏の活躍には素直に期待したい。そして、いまの黒字が一過性なモノではなく、永続的なものであることを願いたい。

勝つ経営/城山 三郎 著

2001-06-23 | ビジネス
タイトル : 勝つ経営
著者 : 城山 三郎
出版社 : 文藝春秋(文春文庫)
出版年: 2001年

---感想---
不況不況と言われて久しい日本。そんな日本にも元気な企業はいるもので、そんな元気な企業のTOPにインタビューしたインタビュー録(?)である。

インタビューされていたのは、ソニー出井、ホンダ吉野、富士フィルム宗雪の3氏。いずれも、それぞれの分野では日本を代表する企業のTOPである。いずれの企業にも共通するのは、クリーンであり、自由闊達と言ったところである。その自由と言った意味も、社内が自由であると言うことと同時に、政府からも自由であると言うことである。特にホンダなどは、ある意味、(政府から)自由と言うよりむしろ、言うことを聞かないと言う方が正確かもしれない。自由と言えば、一見気楽なように感じるが、むしろそれは、自己責任において(政府の力を借りず)市場を開拓していくと言うことであり、ビジネス的には厳しいはずである。しかし世の中が不況と言われる今、これらの企業が元気なのも、他社に頼ることなく自己責任においてビジネスを行ってきた故、ビジネスの基本が出来ており、不況に左右されることが無いことの、ある意味、証明・勲章なのであろう。

「トヨタ経営」ひとり勝ちの法則/週刊ダイヤモンド編集部 編

2001-06-23 | ビジネス
タイトル : 「トヨタ経営」ひとり勝ちの法則
編者 : 週刊ダイヤモンド編集部
出版社 : 新潮社(新潮OH!文庫)
出版年: 2001年

---感想---
株式時価総額がドコモに抜かれようとも、やはりトヨタは日本一の企業である。日本企業で50年にわたって利益を上げ続けている企業は、他にそう無いだろう。

一般のトヨタのイメージは、保守的・守旧的といったような、ちょっと良くないイメージもあると思う。しかし、そのようなマイナス企業が50年間も利益を上げつづけるだろうか? 本当のトヨタは、変革の企業である。よく考えてみれば、有名なカンバン方式にしても、生産方式を変革しようとして編み出されたものであり、イメージと実際は違うことが判る。しかしトヨタは、よく比較されるホンダとは異なり、派手なことが少なく、また、変革といっても外から見えるところよりも、カンバン方式に代表されるように外から見えにくいところであるので、変革にイメージが一般には浸透しないのであろう。

トヨタは今、車以外の分野でのビジネスを展開しており、トヨタ全体としてのバリューチェーンを大きくしようとしている。トヨタの変革の心を持ってすれば、バリューチェーンは強固なものとなるだろう。それはライバルあるいはこれまでは関係が無かったもののバリューチェーンの拡大によってライバルとなった企業には大きな脅威である。

カリスマ-中内功とダイエーの「戦後」-/佐野 眞一 著

2001-05-03 | ビジネス
タイトル : カリスマ-中内功とダイエーの「戦後」-
著者 : 佐野 眞一
出版社 : 新潮社(新潮文庫)
出版年: 2001年

---感想---
戦後の流通業界のカリスマの一人、中内功の評伝である。いまダイエーは未曾有の経営危機に陥っており、創業者経営者の中内はダイエーの経営から身を引き、ダイエーの経営は他者の手にゆだねられている。事ここに至るまでの中内の変遷・背景・思想、同業他社・メーカへの中内の心情などが本書には良く示されている。何も無い戦後の日本から日本最大のスーパーを育て上げた人物に関しての評としてはかなり厳しいものと感じたが、最近のダイエーの迷走を見ていると強ち誤りでもないという感を強くした。

戦後始まり、日本を代表するまでになった企業は他にも、松下、ホンダ、ソニーなどがあるが、これらいまだに発展しつづけている企業とダイエーの根本的な差としては、創業者であるカリスマの身の引き方ではないだろうか。松下、ホンダ、ソニーが創業者の次世代を担うべき世代が育てられてきたのに対し、ダイエーはそれを怠っていた。それは中内の人間不信の代償と言ってはあまりにも大きい代償である。有利子負債2兆円。「大きすぎて潰せない」と銀行に言わしめた企業の再生は果たせるのか。人間不信の果てに次世代を担う人材を育ててこなかったツケが今になって噴出している。いまのダイエーに課せられた宿題はあまりにも大きい。

新版 ソニーを踏み台にした男たち/城島 昭彦 著

2001-04-28 | ビジネス
タイトル : 新版 ソニーを踏み台にした男たち
著者 : 城島 昭彦
出版社 : 集英社(集英社文庫)
出版年: 2001年

---感想---
ソニーを対象にした研究本は数多くあるが、こちらはソニーを退社した人々に関する研究本である。

一般に日本企業では(最近はそうでもないが)、入社したら一生その会社に勤めると言う終身雇用になっている。一方ソニーでは、中途採用も多いが、退社してキャリアを積むという事も多い。そして大変うらやましいことに、退社後もなおソニーとの絆を保っていることも多いようだ。実際には、必ずしもそのようなハッピーなことばかりではないだろうが、ソニーと言う言葉を聞くと不思議とそれが一般的に行われているように感じてしまう。これが最も日本企業らしくないソニーのソニーたる所以だろう。そして、これがソニーの成長の原動力ではないのだろうか。