砂のアジア by 語霜日月緋
(ネタ帳)
日本のある有名な歌手ムッキーは、 80~90年代に一世を風靡した。人生は何でも思い通りで、男色家に愛され、世界的な秘密結社でも仲間入りが決定し、何も恐れるモノがないなと笑い、「夢の機械装置」の操作部屋にもV.I.P.待遇で入って遊んでいた。
この機会装置を買って開発する組織の王子に生まれた幸運を、本当に活用できている自分の頭の良さもなかなかだよなと、鍛えた体を海嘯の去った広大な大地の片隅で、建てたビルの中央階の一室に忍ばせた。
幼稚園から狙って遊んで来た幼子は小学生で死んだが、男の子が生まれた石垣島ではまだ生きていることになっており、その親も姉も男の子がまさか死んでいるとは思っていなかった。
それがまた愉快で、この海嘯の襲った大地の様な彼らのどうでも良い人生の小さな劇場は、自分の神の手にあるなぁとせせら笑った。
その姉の人生もそろそろ終わらせてよと自分が超有名人となってから指令を出していたのに、13才の少女が既にオバハンになっていた。
何かがおかしいよなとしょっちゅう盗撮画面を観ても、死なない女の理由がわからず、今ではなんと自分以上の知名度を世界に轟かせる女のあり得ないミゼラブル人生のトドメを刺す方法を考えてはいるが、どれもちょっと違った。
やっぱり睡眠中の「自然死」が良いんじゃないかと今日もVRでその人生を夢でも振り回し、ヘトヘトに疲れきった女を好きに殺してくれと、手下どもに金を渡した。
女は目を覚ますと、見せられた夢の中で死にかけたのに死ななかったのを思い出しながら、嫌な夢だと半開きの窓の網戸越しの白い壁を眺めた。
朝だ。ぼんやりしていると白い壁は更に白くなり、いったい誰が自分を殺そうと弄んでいるのか、独自ダウジングで訊ねてみた。